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アメリカ駐在員のリアル戦略 第六回 成果のアピール

自分の成果は死守する。
日本人らしく謙虚にしているとアッと言う間になくなってしまう。

なぜか。2つの理由がある。
ひとつは、アメリカにも「チームワーク」という文化はあるが、プレゼンなどを「チーム単位」で行う機会が少なく、報告した人がリーダーと捉えられる傾向が強いことだ。これは報告者の意図に関わらず、上司が部下に尋ねた時に返答をする、などの報告者も含まれる。
もう一つは、反応が早いから、良い結果を報告するとすぐに「次はこうしよう!」と話が進んでしまうことだ。
これらの理由により、良い成果を出した数日後には経営陣に話が伝わり、良い報告をするチャンスがなくなってしまうことを何度も目にした。

悪意の有無にかかわらず、せっかくの努力の結晶を誰かに操縦されるのは幸せとは言えない。
したがって、成果らしきものが出たら大きな場を設定して言ってしまうことが肝要だ。
日本人は「間違った報告をすること」を過剰に気にするため、二重三重にケアした後に「いざ報告」とするが、これでは遅い印象。
既にトップの側近たちが情報を得ていて、主導権を取られているという場合がほとんどである。
しかし、そうは言っても露骨に我を出してはいけない。日本でのアピールが難しい様にアメリカでも絶妙のバランスが要る。
 

立ち回り

私が良い方法だと思っているのは、
「積極的にアピールする役だが、自分の功績は話さない」
という立ち回りだ。

具体的に言えば、プロジェクトで良い結果が出た直後に、以下の様に立ち回るというものだ。

  • 経営陣向けにプレゼンを企画(誰に言われなくても自分で)

  • プレゼンでは「チームが如何に頑張ったか」を熱弁

  • このプロジェクトが「実際にどんな利益をもたらすのか」「この後の広がり」をややオーバー気味に語る

  • 信頼してくれた経営陣に心からの感謝

日本でもこのような振る舞いはあると思うが、全て2倍のテンションで良い。
さらに自分が下っ端でも気にせず挑んだ方がよい(だからプロジェクトリーダーになっておく必要がある。第四回参照。)。
 
 

マイノリティの心持ち

上述の主導権の取り合いの部分で、アメリカ文化が成果の強奪をするかのような印象を受けたかもしれないが、そのような意図ではない。
また、仮に主導権を取られたとしても、不遇な目に合うとは限らない。

ここで主導権を取ることの重要性を強調した意図は、
むしろ「マイノリティであること」で無駄に傷つかないで欲しいということだ。
海外で働けば、基本的にはマイノリティに属する。それは仕方ない。
重要なことは「自分はマイノリティである」という事実を認識することだ。

マイノリティ=差別と早合点しないで欲しい。
本当の難しさは「マイノリティだから不遇な目に合っているのでは?」という疑心だ。

例えば、店員に酷い対応をされたとしよう。
それは、その店員が誰に対しても酷い対応なのかもしれないし、こちら側が何か失礼なことをしたのかもしれない。
分からないことに関して疑心暗鬼になり、精神をすり減らすのが一番無駄だ。

これが単純に店員とのやり取り程度であれば無視できるが、仕事となるとそうもいかない。
「自分がマイノリティだから成果を奪われた」と思い込んでしまうと、
次のプロジェクトのモチベーションを維持するのが難しくなる。

程度の差はあるが、駐在員でやる気をなくしている人の根底にはこのような心持ちがあるように見える。
このような状況に陥らないためにも、常に主導権を握る意識が大事だ。
主導権を持っていれば、経営からフィードバックを直接貰うことも出来るし、交渉にも臨める。
 

アピールするということ

私は、アピールするということは
決して「必要以上に評価を得ようとする行為」ではないと思う。

むしろ、客観性を持って自分の成果を評価し、それを公正に表現することであり、ビジネス上で必須のスキルだと思っている。
アピールを怠って、自分が期待する評価を貰おうとする態度こそ、甘えではないだろうか。
国際社会で活躍するためにも、アピールのスキルを養っていきたい。

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