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米国駐在員のリアル戦略 第四回 組織構造が最難関

皆さん、こんにちは。

第四回は組織構造についてです。

米国での権限

アメリカだけの特徴ではないが、アメリカメンバーは自分の上司しか見ない。
上司に絶対の権限があり、昇進から解雇まで、全て直属の上司の権限で決まってしまう。

従って、日本人は自分たちのことを上司にペコペコしていると揶揄するが、私の感覚からすればアメリカ人の方がよっぽど上司服従。
Yes sir!の精神で、疑問を口にすることすらない(できない)。

上司の命令は絶対で、ゴマすりもたくさん。ツワモノになると保険のために隣の部署の責任者に媚びを売っておき、うまくやっていく者もいる。

そんな環境であるため、日本人駐在者を現地スタッフの上司にすることには現場からの強い反発がある。何故かというと、駐在者は期間限定だから。

つまり、いくら気に入られても帰国してしまえば、その関係がリセットされてしまうのである。それは、確かに酷である。

私の経験上、アジアの国ではその抵抗は少ない(若しくは、本当は激しい抵抗はあるが、力関係で黙らせている)。
ただし、近年はタイでも同様の動きがあり、駐在員は斜め上のポジション(役職のグレードとしては高いが、直接の権限がないポジション)に座ることも増えているという。

こんな前置きをするのは、ツラい目に合う根本的理由の一つが、その権限のなさから来るためである。斜め上だろうが、横だろうが、組織図では点線(ドットライン)で繋がれていようが関係ない。

そんな配慮は一切ないのである。周囲にとって重要なことは一点。
自分の人事的権限があるかないか」である。

本当は、日本人もその損得勘定で動いているのだが、日本人には「世間体」「ムラ文化」という「嫌われたらやっていけない」文化があるので、八方美人になる(部署間の異動と終身雇用も大きく寄与)。

とにかく、そのような環境においては、どのように戦略を練ったとしても9割は聞いてもらえない。物理的には聞いてくれるが、行動はしてくれない。

解消するアプローチは3つ。
·         トップに掛け合って権限を持たせてもらう(役職の変更)
·         組織横断型のプロジェクトの権限者になる(権限の作成)
·         個人的な説得(根回し)により結果を出す(個人の努力)
 
この3つは並列でありながら、現実的には同時に進める選択肢であり得る。また、成果を出し続けることで、時系列的に、個人の努力→役職の変更と推移していく可能性もある。
 
3点目が最も行動に移しやすいが、地道。1点目が最も公式だが、抵抗が想定され、話がまとまるのに時間がかかるかもしれない。冷静に状況を見極める必要がある。
 

役職の変更

トップに掛け合うのは伝統的な日本企業(JTC)では遠慮を伴うが、米国では声を上げない限り、基本的に優遇されることはないと思った方がよい(実際には適切に評価される人もいるのだが生き抜く術として)。

従って、遅かれ早かれトップ、或いは自分の上司には「権限を持たせてほしい」と懇願する必要はあると筆者は思う。しかし、伝えるタイミングは冷静に考えた方がよい。赴任数日後では早すぎるし、赴任2年後では遅すぎるかもしれない。
重要なことは、「いつでもチャンスがあれば提案する」というマインドセット、「どこでどのような権限を持ちたいのか?」という具体的な計画を常に懐に入れておくことだ。
 

権限の作成

正直なところ、一番のおススメはこの選択肢だ。
どんな候補にも「バランスが良い」選択肢があるものだ。

私は全てを試したが、これが「それなりに簡単、かつメリットがある」選択肢だった。
アメリカでも激動の経済状況なので、ベンチャーとの協業、デジタル化など様々なプロジェクト機会がある。
情報を集めていると、どこかにプロジェクトリーダーを探している人がいるものだ。雑談交じりに「プロジェクトリーダーをやりたい!」と熱弁しておくのもおススメする。アメリカは情ではなく熱意に厚い。
プロジェクトリーダーになれば、直属の上司ほどではないが、公式な権限が得られる。もちろん目指すべきはプロジェクトの成功、華々しい成果だ。

しかしながら、アメリカで始まるプロジェクト(しかもリーダーが決まっていないプロジェクト)の計画はかなり杜撰だったりする。任されたのは良いが、台所事情が厳しいなんてこともザラだ。

その場合でも気落ちしている暇はなく、個人としての目標を明確にする。
最高の結果は成果だが、必須の目標は何か?

それは「プロジェクト管理の手腕を認められること」である。

個人主義か!と批判されても甘んじて受けよう。

これが難関の組織構造を超えるために必要なのだ。
会社への利益は後で返せばよい。

他のプロジェクト管理を観察して、自分の正直なセンスから見て劣っているところを探そう。そして、自分はそこを改善して全力でアピールしよう。

このセンスは日本で培ったもので十分だ。
やたらに付け焼刃のことをやってもうまく行かない。日本のマネジメントは十分に優れている。
こうやって「わらしべ長者」的に進めていくしかないという現実がある。
 

個人の努力

これは、最もやり易いが結果は芳しくないことが多い。
しかし、無駄というわけではない。

権限を得る手法としては、かなり遠回りだが、前述のプロジェクトマネジメントの際に頼れるキーパーソンを探しておく、という観点で役に立つ。

また、プロジェクトの機会がない場合には、実質この選択肢しかない期間というのも存在する。
この場合、「熱意が重要」な文化ではあるものの、熱意だけではなく、「Giveの精神」で相手の成果にひたすら貢献しよう。その相手が成果を報告するときに、私の名前が全く示されないことは、もはや通常レベルに起きうるが、それでもめげずにやり続けよう。見ている人はいるし、少なくとも駐在の日本人同士にはアピールできる要素だったりする。
 

具体的戦術

以上のことから、赴任してからの実際の行動は以下の様になる。

こうやって「わらしべ長者」として成功しよう。

  1. まず、個人を知る。困りごとを探しながら、Giveの精神でサポートする。

  2. 同時にプロジェクトマネジメントでアピールできそうなものを見つけておく。

  3. プロジェクトリーダーの機会を常に探し、積極的に手を挙げる。

  4. プロジェクトマネジメントでは、マネジメント手腕が認められるようにアピールする。

  5. 成果が出ればなお良い。

  6. 手腕をアピールしつつ、公式権限が欲しいことをトップに伝え続ける。

  7.   公式な権限を得る。


以上、かなりリアルなところに触れてみた。

米国、海外とひとことに言っても、勤務先によって様々な事情や文化があるだろう。

この視点が何かのお役に立てば幸いである。

では、Have a good day!!

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