米国駐在員のリアル戦略 第一回 駐在員の競争戦略
はじめに
この文章は「マイノリティとしての駐在員が米国で生き抜く術」を述べる。他の地域では文化的背景はもちろんのこと、駐在員の数的、地位的立場も異なるため、異なる戦略を取る必要があるかもしれない。
しかしながら、米国に限らず多くの駐在員の方に参考にして頂けると思う。
マインドセット
勤め先がベンチャーでも大手(JTC)でも、駐在員は複雑な環境を的確に把握し、自分なりに戦略を立てなければ幸せな生活は得られない。
また、これまで日本で培った実績やスキルがどうであれ、自分で身を立てて活躍しなければならない。
筆者の駐在先でも、現在または過去の駐在者の失敗事例には事欠かない。
その要因は、以下のように多岐にわたる。
コミュニケーションの問題
仕事観のギャップ
健康上のトラブル
家族のコントロール
これらは、実は日本でも生じ得ることなのだが、異文化、マイノリティ、本社がキャリアの面倒を見てくれない、などの事情により、日本で働くよりも非常に深刻な事態に陥る。
筆者も赴任当時、決して恵まれた環境とは言えなかった。
そこから生き延びる術をしっかりと考える必要性に気づき、明確な戦略を心に決めた。
そしてそれを実行に移すことで、たった一人の部署から始まった生活が、今では現地No.2のポジションにまで登ことが出来た(従業員300人程度)。
このような戦略が皆さんの役に立つことを願って。
戦略
競争戦略の本家、マイケル・ポーターは、企業が取り得る戦略を
「競争ターゲットの幅×競争優位のタイプ」
で表現した。
このフレームワークは駐在員の戦略にも適用できる。
競争ターゲット
まずは、縦軸の競争ターゲットから始めてみよう。
駐在員のターゲット層はかなり広い。
ザっと挙げるだけでも以下の層が存在する。
駐在員の顧客層の例
現地トップ層(現地スタッフ)
駐在トップ層(上司)
現地スタッフ(マネージャー層)
現地スタッフ(全員)
本社(日本)のトップ層
現地顧客
これらのターゲット候補から、マーケティング戦略と同様に「誰を顧客と定義するか」から始めるべきである。
競争優位のタイプ
次に、競争優位のタイプを考える。
横軸を見て欲しい。
「低コスト」と「差別化」がある。
低コストは、駐在員に置き換えれば「業務量」である。
駐在員が圧倒的な仕事量によって現地で重宝されるという例は数多ある。
特異性とは「業務の質」と言っても良い。
もう少し言うと、「駐在員にしかできない仕事」である。
例えば、本社(日本)との懸け橋になる、日本から技術を持ち込む、などがそもそものミッションであることも多々ある。
これらをかけ合わせて、例えば以下の様に戦略を考えることが出来る。
戦略の例
コストリーダーシップ戦略
=圧倒的な仕事量によって、駐在地に全体の成果を改善する
(全体×仕事量)差別化戦略
=本社への政治力を武器に、トップ層になくてはならない存在になる
(現地トップ層×駐在員しかできない仕事)コスト集中戦略
=現地の経営課題に対して、圧倒的な仕事量で解決する(現地・日本トップ層×仕事量)差別化集中戦略
=特定のキーパーソンに対して、日本から持ってきたノウハウで重宝される
(現地トップ層or駐在トップ層×自己ノウハウ)
このような四象限の戦略論には幅があるので、まずはざっくりで良いが、凡その方向性を決めることが鍵になる。
これらを決定するためには、顧客と自分自身の分析が欠かせない。第二回で解説する。