『カナレットとヴェネツィアの輝き展(SOMPO美術館)〜18世紀の“映え”体験?カナレット展でたどる貴族の風景画ブーム
【内容】
18世紀の景観画の流行画家カナレットをテーマとした作品展。
【感想】
『山田五郎 オトナの教養講座(YouTube番組)』で紹介されていたのを観て、行ってみることにしました。
18世紀の貴族が旅行ブームがあり、その記念に風景画を買って帰ることがブームになったのだそうです。カナレットはその時期に風景画を描いて有名になった画家とのことでした。
その時期がちょうど写真の登場によって印象派が登場するアカデミックな美術の前段階にあたる時期のもので、そういった意味でも興味深い時期の作品だと思いながら鑑賞しました。
より具体的に語るとすると、リアルな事物を映せる写真というメディアの存在する世界で、いかに人の手で描く絵画というものの価値をアピールしていくのかという問題にどう答えていくのかといった命題に対する回答として、どう対応していったのかということです。
展示の最後に、カナレット以降の印象派の作品を並べることで、そうしたことがより鮮明に理解、というか腹落ちした感じでした。
作品のレベルでいうと、今までほとんど日本に紹介されてこなかったというのも、ある意味頷ける面もあり、あくまでも部屋に彩りを添えるための絵画といった意味合いが強い作品群でした。
また、美術史的にも評価されたいタイプの作品だとも感じました。
工房を構えて制作しているということで、明らかに力を入れて描いているものと、工房で量産しているもので、絵のレベルがかなり違うとも感じました。
そうしたことも込みで、良い絵画とそうでない絵画といったことも、改めて感じたりしました。どんなに正確に丁寧に描かれた絵画も、固く正気の無いものは、魅力を感じないなあと…
今回の展示で、歴史的な絵画史の一旦を垣間見ることで、また良いも悪いも含んだものを観ることで、絵画や美術についての色々と感じたり考えたりも出来る良い機会となりました。
地味な画家の展示なのに、結構な人が観に来ていましたが、ここのところビックネームの展示が減ってきていることも影響しているのかも知れないと感じました。
また、円安と美術品の保険料の高騰で、数年前までのビッグネームのアーティストの展示が難しくなっていることも、こうした今まで脚光を浴びてこなかったアーティストの展示が増えている一因なのだとも感じました。
https://www.sompo-museum.org/exhibitions/2023/canaletto/