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『イタリア・ボローニャ国際絵本原画展』& 『講演会 ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアと国際絵本原画展』(板橋区立美術館)

毎年行われている絵本原画展の公募展の展示に行ってきました。
近年、わりと毎年訪れているのですが、近年、全体的なレベルが上昇しているなあと…
この展示を初めて観たのは40年近く前の小学生の頃でしたが、その時は地域ごとの特色が濃厚に反映されていて、洗練された技術で描かれているのは、先進国の作家が中心だったなあと…
中国や韓国なら水墨画ぽかったりとか、中東だとイスラム文化を反映した絵画ぽかったり…

それが近年どんどん平坦化してきていて、一定の程度以上、理解可能なイラストになっているなあと感じます。
普通に可愛いかったり、洗練されていたり…
インターネットによって情報が開かれたことの影響とか、アニメとか漫画とかのポップカルチャーの影響とかもあるのかなあとも思いました。
多様性という名の地域性に閉じ込められた作品世界が、それぞれの作家個人の個性をより反映した作品に変わってきているのかなあとか…

あと今回の展示の特長としでは、わりと手描きのハンドメイド感のある作品が選ばれている感じでした。


この展覧会では、近年(?)毎回トークイベントをやっているので、展示を観た後、トークイベントも観覧してきました。
「講演会 ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェアと国際絵本原画展」というトークイベントでした。
今回のボローニャの審査員として参加した韓国の絵本制作者、編集者の人が、今回の審査についてを話していました。

応募作としては、もろに手描きで描かれた作品が3000作ちょっとの作品のうちの、全体の1割くらいといった形でした。
選ばれ方としても、より手描きを感じされるものが選ばれたとのことでした。
ただ絵が上手いだけではなく、どれだけ物語が含まれているか、感じるかを意識して審査したとのこと。
AIについても、子供のイラストではまだそれほど使われていないが、これから使われていくのではないかとのこと。
また、中国からの応募作で、ファインアート的な分野からの人が参入しているのではないかなどといった指摘もありました。
日本と韓国からは、漫画などの影響がかなりあるのではないかとのこと。
また、漫画からの影響力は、世界的な傾向があるのではないかとのことでした。
絵本の制作だけでなく、他の作家の絵本を、編集者として賞も取っている人というだけあって、話し方がとても理知的で、引いた目線で話をしているのも印象に残りました。
現役の制作者であり、編集者ならではの語り口で、とても説得力のある話でした。
その中でも、『人間的』ということが、審査のキーワードになっているように感じました。
AI技術が発展していく中で、これから創作ということに『人間的』ということが、キーワードになっていくのではないかなあと思いました。
その『人間的』をどう捉えるかは、これから問われることになるのだと思いますが…
あと、今年は審査員4名のうち2人が、中国人と韓国人で、コンクール初めてアジアから2人の審査員が選ばれたとのことでした。
会場には前回審査員をした人が観客席にいたりして、結構インサイダーな会といった一面もあったみたいでした。


しかし、この展覧会が行われている板橋区立美術館は、駅から歩いて25〜30分ほどあり、毎年夏に開催されているので、いつも全身汗びっちょりになります。
今日も35度超えのピーカンの中を、歩いて行ったのですが、個人的にはそれも恒例の行事感があったりしました。
トークイベントの最中、外から蝉の鳴き声が聞こえてきたりもして、もう夏だなあと感じたりもしました。
この展覧会は、自分にとって、そうした暑さの記憶と凄く結びつけ付いたもので、こうした記憶も凄く『人間的』なものなのだろうなあと思ったりしました。
肉体的な体験と結びついた記憶…


https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001836/4001848.html

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