『特別展佐伯祐三』(東京ステーションギャラリー)
東京ステーションギャラリーで開催されている洋画家の佐伯祐三の展覧会を観に行ってきました。
つい先日、今は公共の施設となっている佐伯祐三のアトリエに行ったこともあって、久しぶりに佐伯祐三観てみようかなと…
チケット予約などせずにいったのですが、JR東京駅を出てすぐのところにある美術館はちょっと待っただけで入場出来ました。
今回の展示は、行くきっかけともなった東京の下落合周辺の絵画も多く並んでいました。
それほど展示されることのないそれらの絵画は、まだ佐伯祐三が100%佐伯祐三の画風になる前の作品ばかりでしたが…
その時期のものも、個人的に良いと思える作品が幾つかあったりしたのも良かったなあと…
土地勘があるので、どこから描いたのかわかったりして、そうした意味でも楽しめました。
あの下落合のアトリエのすぐ側に、雑木林があったのだとか…
絵が描かれた中には、細田守監督の『時をかける少女』の舞台となった中井駅の周辺なども絵にしていて、何かあの坂の沢山ある地域は絵や物語にしたくなるものがあるのかもなあと感じたりもしました。
展示の多くは、佐伯祐三のコレクションを多数している大阪中之島美術館ものでしたが…
その中の2点は、小学校所有しているのとこと。そのうちの1点はアトリエ近所にある公立の小学校の落合第一小学校が所有のものだとか…
公立の小学校が、このクラスの画家の絵画を所有しているのも面白いですね(^^)
あと何より、今回の展覧会では、画業を時代ごとの流れでみれて、画家の成長や変遷を見ることができて良かったです。
当時の西洋絵画の影響、ブラマンクとかセザンヌとかの影響がもろにあるなあとか…
2回目の渡欧くらいから、ガツンと絵のクオリティが上がっているように感じました。
解説によるとブラマンクのアドバイスを反映させてとのことでしたが…
静物画など絵としての魅力的なものもあったりとか…
下町に移り住んでからの佐伯祐三独特のマチエールの感じとか観れたのも良かったです。
あと、荒々しいヒッチと文字の組み合わせは、なんかその後のポップアートぽい造形感覚も感じられて、やたらに新しく感じられたりしたのも発見だったりしました。
今の雑誌とかに載ってても、今風のお洒落なイラストとして観れるのではないかと思えたりする作品も結構あったり…
それから、濁った色調の中にある、鮮やかな緑や黄色、赤や白といった色が気持ち良い…
油画ならではの魅力がビンビンに伝わってくる…
同じ題材を扱った同じ構図の絵画も並んでおり、それもそれぞれ絵の狙いの違いなどもわかりとても良かったです。
やはり、油絵はマチエールだなあと…
晩年の作品のうちの何点かは、身体ボロボロだったらしいのですが、すごく密度もあり構成もしっかりしていて、生き生きとしていました。
画家がその時々で気付いたことを追体験しているような…
最晩年に描いた『郵便配達夫』は、とても迫力があり魅力的だったり…
最晩年といっても30歳とのことでしたが…
ここから下はあくまでも私見なので、史実と違うなど多々あるとは思うので、気分害されたら申し訳ないのですが…
経歴を見ていたら、佐伯祐三はお寺の子なんだと
もしかしたら、そこら辺の造形感覚の影響もあったのかなあ…
晩年の作品のこの余白の取り方とか、もしかしたらそうした日本絵画的な記憶も関係してるのかもと感じたりしました。
ここから先は、更にちょっと突っ込んだ話になるのですが…
そういえば奥さんの米子さんが、佐伯祐三の絵の拙いものに手を入れていたとの手紙が出てきたとのことがニュースになったりしていましたが…
絵を見ていて、この画家は絵によって波があり、半ば途中で描きかけで放棄したようなものも沢山あったのでないかと…
半日に1枚、1日2枚以上のペースで描いていた時期もあったりとかするようなので…
そうしたものに、画家としての腕前もあった奥さんが手を入れ、それなりのクオリティにしたということはあり得るのかもしれないと感じました。
晩年の作品など、かなり雑に描かれたものもあり、そうしたものにもしかしたら…などと感じたり…
2階展示室には、建設当時からのレンガの壁に絵が吊るされており、それがまた佐伯祐三の絵とあいまって、とてもいい感じでした。
レンガから突き出た剥き出しの鉄骨などなんともいえない良い感じらたまらんものがあるなあと…
この点では、この展示を、この美術館でやって本当に良かったなあと…
個人的に、佐伯祐三の絵を観た後だったので、目が佐伯祐三の目になっていて、壁の煉瓦がより魅力的に見えて来たりもして、無意味に何枚も壁の写真撮ったりしてしまいました。
なんとなく行った感じでしたが、行って良かったなあと感じられた展示でした。
なんとなく観に行ったわりに、色々と感じることも多くやたら長文になってしまいました…
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