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『戦争が生み出したアメリカ巨大企業(ドキュメンタリーシリーズ 1〜2話)』〜ディカプリオ製作×超一流の演技、演出ーー知られざるアメリカ企業の興亡—フォード、GM、JPモルガン…世界を変えた男たち
【内容】
第一次世界大戦後、好況に沸く1920年代のアメリカの巨大企業を率いた起業家たちを当時の映像を交えた再現ドラマで迫るドキュメンタリー。
【感想】
映像のクオリティがかなり高く、演技も「再現ドラマ」の域を遥かに超えていました。役者たちは起業家それぞれの個性を巧みに演じ分け、それを活かした演出もかなり良く出来ていました。
内容自体は、日本のテレビでもよく見られる「専門家のインタビュー+再現ドラマ」という構成ですが、本気で作るとここまでの作品になるのかと衝撃を受けました。日本の番組とは製作費の規模が桁違いであることも一因でしょう。しかし、この作品は単なる教養番組を超え、極めて質の高いエンターテインメントに仕上がっています。
役者陣も素晴らしく、主役級の俳優はもちろん、ちょい役に至るまでしっかりと演技が作り込まれていました。
考えてみると、スーパーマンやバットマンといったアメコミ作品が、お金と手間、才能あるクリエイターを投入することで世界的なコンテンツへと昇華されたように、ドキュメンタリーもまた、これまで未開拓だったジャンルなのかもしれません。
ちなみに、あまりにも完成度が高かったので調べてみたところ、製作にレオナルド・ディカプリオが関わっていました。なるほど、役者の演技や演出がハリウッド映画並みのクオリティだった理由に納得しました。
私はアメリカの企業についてあまり詳しくなかったため、本作を通じて多くのことを知ることが出来ました。
デュポンが家内工場で火薬を製造し、南北戦争を機に財を成したこと。フォード、クライスラー、GM、JPモルガン、USスチールといった企業が、隠さない野心と行動力で世界を変えていったこと。発明を事業化し、産業を発展させた彼らの軌跡には強いインパクトがありました。
また、1920年代にはフォードが航空機産業に参入し、後にボーイングが新参者としてその分野に加わったこと。ローンによる自動車購入というビジネスモデルを最初に導入したのが1920年代のGMだったことも、本作を観るまで知りませんでした。
さらに、ルーズベルト大統領の誕生の経緯や、一部の資本家による富と原料の独占を打破したことも、このドキュメンタリーで初めて学びました。この時期のルーズベルトは、銀行家や資本家による富の集中を嫌い、社会主義的な政策を推し進めていたとのこと。当時の富裕層にかけられた75%の富裕税などが課されたそうです。
この歴史を知ると、現代の起業家――イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベゾスといった人物たちの行動が理にかなっていることがよく分かります。彼らは、かつての資本家が直面した非難や規制を回避するために、どのように立ち回るべきかを必死で考え、行動していることを感じました。
日本の学校では、この時代のアメリカ史はあまり詳しく教えられないため、本作を通じて学ぶことができたのは非常に貴重でした。こうした作品が、もっと学生たちにも届くようになるといいなと感じます。
また、日本の歴史についても、こうしたドラマを交えたドキュメンタリーで観てみたいと思いました。
https://jp.history.com/pgm/49258/