『上映トーク平野啓一郎「ベニスに死す」(世田谷文学館)』〜平野啓一郎が語る『ベニスに死す』と文学のつながり
この施設の元館長である菅野昭正氏を追悼する展示「小説と映画の世紀」が開催されており、その関連イベントとして行われたトークイベントを観覧してきました。小説家の平野啓一郎さんが、映画『ベニスに死す』について語るという内容でした。
イベントが始まる前、美術館のスタッフが平野啓一郎さんのデビュー作が芥川賞を受賞したことに触れ、元館長の菅野氏が平野さんの作品を芥川賞受賞前から高く評価していたこと、またその後も度々対談を重ねていたということでした。冒頭の美術スタッフは、館長の話をしながら感極まって声を詰まらせる場面もありました。菅野氏は、若い頃に学習院高等科で教師をされていたそうで、教育者としてだけでなく、人間的にも非常に魅力的な方だったであろうことが伝わって来ました。
登壇した平野啓一郎さんは、ジーンズに黒い襟付きシャツ、カジュアルな上底入りの革靴というスタイルでした。平野さんはトーマス・マンや三島由紀夫が好きで、そうした知見が豊富であることから、今回のテーマが選ばれたとのことでした。三島由紀夫自身がトーマス・マンに影響を受けており、小説『金閣寺』はトーマス・マンと森鴎外を融合させて書いたと三島自身が書き残しているという話もありました。
平野さんは、たまにメモや朗読用の本に目を落とす以外は、風邪の影響で一時的に喘息の症状が出ている中でも時折咳をしながら1人で1時間話し続けており、その知的な印象が非常に強く残りました。途中、何度かトーマス・マンの本の朗読も行い、朗読にも慣れた様子でした。
平野さんの印象は、映画『ある男』に登場する人物たちから受けた印象に近いものがありました。映画を監督した石川慶氏が、平野さんの雰囲気を映画に反映させたような気がして、不思議な感覚になりました。
https://www.setabun.or.jp/event/20241012/