『日本のアートディレクション展 2024(銀座グラフィックギャラリー)』〜時代を映す広告デザイン展
【内容】
アートディレクターによる年次公募展が日本のアートディレクション展。
【感想】
タイミングが合えば足を運ぶこともある展示ですが、例年は、大御所デザイナーがいつもの感じでデザインしているという印象が強かったです。しかし、今年は個人的にいくつか面白いと感じるデザインが目に留まりました。
2階ではCMを中心とした映像が流れていましたが、最近はテレビをほとんどネット配信動画の視聴にしか使っていないため、観たことのないCMばかりでした。不景気が続いているとはいえ、テレビCMにはそれなりにお金がかかっていて、しっかり作られているなと感じました。しかし一方で、全体的に非常に保守的になっている印象も受けました。
こうした広告を見る中で、改めて思ったのは、広告のあり方が大きく二極化しているということです。一つは、莫大な費用をかけて丁寧に作られ、直接的な売り上げとの関連性が曖昧な広告。もう一つは、Webマーケティングを中心に、LP(ランディングページ)や販売データを綿密に分析して、売り上げに直結させる広告です。この展示を観ていると、後者がますます主流になっている時代を強く実感しました。
Twitter社を買収したイーロン・マスク、FacebookやInstagramを運営するマーク・ザッカーバーグ、Amazonの創業者ジェフ・ベゾスなど、巨大なネットプラットフォームを握る企業が、現代の広告において絶対的な影響力を持っている現状は、私たちが日常的に使うスマホを通じてひしひしと感じました。
商業デザインという領域は、社会の状況を色濃く反映するものです。業界内では様々な事情があるだろうと思いますが、広告やデザインの表現が、時代の変化やメディアの進化、人々の意識の変化を映し出しているのだと改めて感じました。
また、ある程度世代交代が進んでいることも影響しているのかもしれません。広告表現における新しい試みが見られる一方で、既存のメディア広告が効かなくなっていると言われ続けて久しい現状の中、従来のアプローチにとどまらない試行錯誤が進んでいるのだと思いました。
https://www.dnpfcp.jp/CGI/gallery/schedule/detail.cgi?l=1&t=1&seq=00000837