飯嶋和一『星夜航行』を読む 【転石庵茫々緑】
だれかのブルースの歌詞に、
♫オレたちは、ただの魚、川の流れを変えることはできない
というのがあったが、飯島和一の小説の登場人物たちの根底には、川の流れを変えることはできないかもしれないが、おとなしい魚として権力という川の恣意的な流れに拉がれ従うのではなく、自分たちの信念に従った生き方の可能性を川の中で誠実に考え、それを時によっては、権力に抗してでも実行してゆくという姿勢があり、読者としては、そこにある正義ともいえる潔さに心を強くうたれ深い感動を呼び覚まされることとなる。