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ガザの悲惨な戦争被害は現在進行形

映画におけるリアリズムとは何か。『オッペンハイマー』を観てから、ずっと考えている。原爆を開発した物理学者の半生をたどった作品で、主人公のエゴや苦悩は完璧に演じられた。しかし、被爆地の惨状を伝える場面はない。この「現実」が描かれなかったのは残念だ。それでも、これは反戦映画だと思う。

映画で戦争の悲惨さを描くとき、オッペンハイマーのように物語性を重視した作品もある。一方で、記録映像で迫るドキュメンタリーは力強い。最近、注目を集めているのは「アニメーション・ドキュメンタリー」という分野だという。

最も成功したのは、イスラエル映画の『戦場でワルツを』だろう。主人公はアリ・フォルマン監督自身で、1982年のレバノン侵攻時に兵士だった。観る前は、アニメによる戦争描写は悲惨な現実を弱めないかと案じた。だが、兵士の心と戦場を行き来する構成には迫真性があった。

アニメの手法は、敵に顔が知られると危険な人や匿名の告発などで有効だという。その将来性について、ドイツでドキュメンタリー映画祭を手がけるクリストフ・テルヘヒテさんにオンラインで尋ねた。

アニメは観る者の想像力へ訴える。だから「内面を描くときは特に心を揺さぶる」と話す。偽動画があふれる時代に、実写より客観的に観られる傾向もあるそうだ。

戦争には直視がつらい、生々しい現実がある。記憶が薄れても、あらゆる手法を試みながら、伝えていかなければいけない。平和のために。

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