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タイのスイスを目指す旅 3
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旅の目的地カオコーから、バスでピッサヌロークのバスターミナルまで戻り、そのままバイタクに乗って鉄道駅へ。
ピッサヌロークに泊ってもよかったんだけど、
行きに一泊して、だいたい雰囲気がわかったのでせっかくなら知らない所へってことで、
たどり着いたのがピッサヌローク県のお隣、ピチット県だ。
ピチット市内、国鉄のピチット駅あたりの宿は中心地から離れた高級ホテル以外すべて完売。
考えた末に、駅前の安宿が取れた、タパーンヒンというもう少し先の町に降り立った。
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奥に大仏が見える
タパーンヒンは今まで旅したタイの町の中でもトップクラスにこれといって何があるわけでもない町。
人は少ないし店も少ない。
ホテルは真っ暗で廃墟みたい。
夕方、屋台通りを少し散歩して、
駅前の食堂でビールを飲んだくらいでホテルに帰った。
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食堂では言葉が通じないので、現物を見て指差しでつまみを注文。
入った時はお店の人たちから
「なんだこの外国人」みたいな怪訝な表情で様子を伺われる感じで完全に放置プレイ。
ただ、こっちからカタコトのタイ語で話しかけてみるとみんな優しく笑顔で対応してくれた。
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夜8時を過ぎると町は深夜みたいに真っ暗で静まり返っている。
街っ子のおれは"田舎の夜の暗さ"に弱い。
おまけに部屋の明かりまで薄暗い。
やることもないしなんとなく憂鬱になる。
お腹が空いたし気晴らしに、駅の向こうのコンビニまでなにか食べるものを買いに行こう。
表に出るとホテルの前の暗闇にポツンとひとつ明かりが見える。
近づくと音楽がガンガン聴こえてきて、外のテーブルで派手なお姉さんたちがラムを飲んでいる。
バービア(女の子と飲む店)的な店かと思ったけど、表に出されたメニューを見てみるとどうやらレストランみたい。
おれがメニューを見ていると、横にいたお姉さんが話しかけてくる。
アムラーの生き残りみたいな格好をした、お姉さんとおばさんの中間くらいの明るくて親切な人だ。
「何が食べたい?」
タイ語のメニューは読めないので、
「ママーパット(やきそば)できる?」と聞くと、
「もちろん!タレー(シーフード)とかどう?美味しいわよ!」
「じゃあそれ持って帰る!あんまり辛くしないでね。」
話が早い。
シーフード焼きそばとペプシで120バーツ(450円くらい)だったと思う。
ちょいと高いけど、臨機応変に対応してくれた明るいお姉さんになんか癒されたのでマイペンライ。
ビニール袋にペプシ用の氷までパンパンに入れてくれた。
ホテルに帰るとレセプションの真面目そうなおっさんがハイテンションで話しかけてきた。
ほとんどなにを言ってるかわからなかった。
さっき通った時はあんま感じ良くなかったのになんか急に元気だな。
静まり返った町でも人は明るいし、よくわからない外国人にも自然に接してくれる。
タイのこういうところに信用と不思議な安心感がある。
隠れお洒落タウン ウタイターニー
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ピチット県タパーンヒンからウタイターニーという町まで来た。
タパーンヒンでは駅前のバイタクに行き先も聞かれないまま、バンコク行きのバス停に連れていかれる。
乗り換えのためにサコンナコーンで途中下車。
そこからウタイターニー行きのバスをバス停の人たちに教えてもらいなんとかたどり着いた。
タイ語が読めない外国人にはバスの行き先表示は見えないし、大きな国道をけっこうなスピードで走るバスの行き先を見極めて、手で合図を出して止めるのはかなり難易度が高い。
「ほらあなた、バンコク行きのバスきたよ。」
ってバス停で会ったおばさん。
やっぱり外国人はバンコクに行くんだろうっていうのがあるみたい。
おれがウタイターニーに行くと言ったら、
その場の人たちみんなに、驚かれ面白がられた。
たしかにおれも東京で外国人観光客に
「鳥取県に行くにはどうすればいい?」とか聞かれたらちょっと楽しい。
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ウタイターニーでは古民家をリノベーションしたようなゲストハウスに泊まった。
オーナーのおばさんは英語が堪能。
廊下に、どこかの国の大学の門の前でポーズを取っている若い頃のおばさんの写真が飾ってあったので、どこか欧米に留学してたんだと思う。
この宿はそんなおばさんと何匹かの猫で営んでいる。
こじんまりとしていておしゃれな部屋だ。
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おばさんはすごくフレンドリー。
「どう?この部屋。なかなかいいでしょ?
私は一階で適当にやってるから、あなたも適当にやって、なにかあったら声かけてね。」って気持ちいいスタンス。
外の壁に掛けられたお洒落な自転車がフリーで使えて、洗濯機も20バーツ払えば好きなだけ洗濯できる。
自分でそこら辺に適当に干して、乾いたら勝手に取り込むスタイル。
無駄な気を使わなくていい感じ。
こんな宿がバンコクなんかにあったらしばらく住みつきたくなるくらいには居心地がいい。
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あくまでも長閑な田舎町だけど、
のんびりとした大きな市場があって、町並みはどこかお洒落。
ガイドブックから省かれるようなタイの田舎町は、似たようなつくりでパッとしないところが多いけど、
ウタイターニーみたいに聞いたことのない町でもカラーがあって面白い町もある。旅の面白さよ。
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ウタイターニーからチャイナートへ。
バスの客集まり待ちで1時間以上車内待機。
走り出したらたった40分で着いた。
チャイナートはかなり小さな町だった。
最近はコツコツとタイ料理ばっかり食べてたのに、うっかり昨日カツカレーを食べてからタガが外れちゃって、
すっかりタイ料理飽きモード。
町の中心地の小さなハンバーガー屋へ。
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町の銀行に両替しにいく。
田舎の銀行は外貨の両替に慣れてないのか、いつも時間がかかる。
差し出した一万円札を受付のお姉さんたち全員で見本のコピー用紙と見比べ、細かくチェックする。
田舎の銀行のお姉さんたちは、
パシッとした制服を着て、髪もネイルもメイクもバッチリ気合いが入ってるのに、
みんな足元が安っぽいサンダルなのがとてもタイらしくて好き。
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チャイナートのホテルは町からだいぶ離れている上に、700バーツ(2700円)以上もした。
この旅の最高値だ。
ホテルが少ないから相場が高くなるのは田舎あるある。
部屋は古いし薄暗い。おまけに建物の入り口を工事してて通るのも大変だしうるさかった。
町中にはトゥクトゥクがいるからホテルに帰ることはできても、町外れのホテルからの移動手段はない。
歩いて町まで行って、散歩しながら犬や猫と触れ合ってコーヒーを1杯飲むくらいのことしかやることはなかった。
まあこれもローカルって感じで悪くないんだけど。
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タイの田舎は完全に車優先社会なので大きな交差点にだって横断歩道はない。
タイミングを見計らって渡らせてもらう。
歩いてる人なんてどこを見渡してもおれくらい。
モンキータウン
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チャイナートからロッブリーへ行くバスは、ナコンチャイエアのバスだった。
ナコンチャイエアはタイ大手の快適なバス会社だ。
座席も快適でドリンキングウォーターももらえる。
車内のモニターではよくわからない戦争映画が流れていた。
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たどり着いたロッブリーは雨だった。
町の中心地にあるゲストハウスが今夜の宿だ。
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1階はオープンエアになっていて、
タイ料理や、洋食。
コーヒーから洒落たフローズンカクテルまで飲めるレストランになっている。
おまけにギターも弾ける。
おれにはこれが一番ありがたい。
シャワーとトイレは共用で、歩くたびに床がギシギシと動くログハウス。
古き良きバックパッカーのためのゲストハウスって雰囲気だ。
チェックインを済ませて、パスタを食べているとさっき止んだはずの雨がぶり返し、激しいスコールに。
あっという間に、道路一面が川のようになった。
雨を眺めながらギターを弾いて雨が止むのを待った。
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ロッブリーは遺跡と猿の町だった。
町の至る所に遺跡がある。
町中には人間より多いんじゃないかと思うくらいに野生の猿がいて、
踏切で停まっている車の屋根から屋根へ飛び移りながら移動する。
遺跡や建物にも、うじゃうじゃと猿。
猿に占拠された町だ。
最近はその数があまりにも増えすぎて問題になっているらしい。
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町のどこを見あげても、たくさんの猿と目が合う。
歩いていると急に後ろからシャツを掴まれる。
ヤンキーの集団が溜まってるよりも怖いけど、
異世界すぎて面白い。
他のアジアの国にも猿がいたりするけど、
だいたいは緑のある観光地なんか。
こんな町のど真ん中で、こんなにたくさんの数見たのは初めて。
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駅の反対側にある高校の敷地にナイトマーケットが出ていた。
定番料理の屋台から、駄菓子に射的。
ゴーカートからメリーゴーランドまである楽しげなマーケット。
高校がこんなに楽しげなんて最高だなあ。
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キャラクターの人形に色を塗っていた女子高生たち。
熱心にドラえもんに色を塗っている子がいたので、
「ドラえもんはイープン(日本)のアニメ、おれはコンイープン(日本人)だよ!」
とアホな自慢をしてみると、
「え〜!!あなた日本人なの〜!?」とみんな目をキラキラさせていた。
急に話しかけてきた訳のわかんない外国人にもごく自然に接して、ノリノリで写真も撮らせてくれる女子高生たち。
こんなタイ人の好奇心旺盛で優しいところが尊すぎる。
そして、やっぱりアジア全域でドラえもんが強い。
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ゲストハウスの夜。
レストランでは酔っぱらいの欧米人たちが大はしゃぎ。
音楽爆音のパーティーは夜中まで続いた。
まあ、たまにはこんな賑やかな夜があってもいいか。
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ロッブリーからお隣、サラブリーまで来た。
じわじわとバンコクが近づいている。
それでも町は長閑な感じ。
国鉄駅の周りには商店街に市場に小さなショッピングモールと、少し栄えている。
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鉄道駅から少し離れた宿の周りはちょっとした屋台街。
コンビニでビール、屋台でソーセージの入ったワッフル、ピザ屋台でおばさんのおすすめピザを買って部屋で食べる。
それぞれ好きなものだけを色んな種類食べられるのは屋台文化の素晴らしいところ。
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もやしがセルフで入れ放題
次はいよいよバンコクへ、
と思ったけど最後の寄り道。
バンコクの一歩手前、パトゥムターニー県のランシットまで。
ランシットは、どんどん拡大する都市バンコクに半分飲み込まれているエリア。
バンコク都心から延びる鉄道の終点がランシット駅で、要はほぼバンコク。
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ロットゥー(乗り合いバン)を下ろされたのはランシットの中心部、フューチャーパークというモールの前のバス停。
久しぶりの都会の大型モールとくれば美味いラーメンなんかが食べられるんじゃん。
大荷物を背負ったままフューチャーパークへ。
入るとすぐに安物服エリア。
あとはバンコクに帰るだけだし、とTシャツをたくさん買った。
タイのTシャツはシュールでかわいいのが多い上に、
そのほとんどが1枚1000円もしないので、いつも目に留まるととりあえず買ってしまう。
レストランエリアには、スシローに大戸屋。やよい軒、かつ家にモスバーガー、CoCo壱などなどとよく見る日本食チェーン店のオンパレード。
肝心のラーメンは、8番ラーメン、おいしいラーメンというタイチェーンの微妙なラインナップだったので、彷徨った末にすき家でチーズ牛丼を食べた。
腹ごしらえが済んで楽器屋でギターを弾かせてもらってギター欲も満たしたところで、やっと今夜の宿へ。
町の中心はパホンヨーティン通りという大きな通り。
そこから静かな路地を一歩入った安宿に部屋を取った。
近くにはモスクがあって、辺りにはムスリムが多い。
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大通りを走るソンテウ(乗り合いトラック)がこの町の便利な移動手段になっていて、
どこまで行っても9バーツ(35円)。
たくさん走っていて、5分も待っていれば来るんだけどいつでも超満員。
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大通り沿いを歩いていると、道端にすごい数のシマウマの置物が。
そういえばタイでは交通事故が起こると、
その場所に残った霊がまた事故を起こすと考えられていて、
その場所に交通安全の象徴として、横断歩道と同じ柄のシマウマの置物を置く、という話を思い出した。
その場所はちょうど幹線道路同士の合流地点で、
信号もない左折専用レーンをたくさんの車が減速もなしにすごいスピードで合流してくるポイント。
そしてそこが歩行者が横断するのにちょうど良さそうな場所になっているので、明らかに事故が多く起こっていそうな場所だ。
意味がわかってしまうと、このシマウマの数はゾッとする。
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ランシットは都会の匂いがする田舎だ。
バンコクが東京だとしたらランシットは戸田あたりってとこか。
宿の近くのコンビニの前の屋台ではムスリムのおばさんたちのロティ(クレープ的やつ)やフルーツ屋台が賑わっている。
部屋から表に出て缶ビールを飲んでいると、風に乗っかってモスクからのアザーンが聞こえてくる。
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