ラオス・タイ イサーンを歩く旅 6
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コーンケンで束の間の休息。
ここからまた旅が始まる。
相変わらずこの先になにがあるのかわかってない。
ウォートタワーの町ローイエット
コーンケンからローイエットまでは、大型バスで2時間の移動だった。
バックパックと別に、コーンケンで買ったエレクトリックピン(弦楽器)が増えたので、荷物の置き場のないロットゥー(乗り合いバン)じゃなくてちょうどよかった。
それにバスターミナルからのバイタクも、ピンも上手いこと背負ってなんとか乗れたので、一安心。
ここからの移動がバイクになるか車になるかってだけでも出費が倍から変わってくる。
例によってローイエットも長閑な田舎町。
市街はお堀に囲まれていて、調べてみるとやっぱり昔、この町に城があったらしい。
今は町の中心は池に囲まれた公園になっている。
歴史的なことからか、お堀の内側にはホテルは皆無で、お堀の沿い外側のホテルを取った。
泊まったホテル。
観光客がそこまで多くない町なので小さな安宿とかはなさそうで、
中心から少し外れたあたりに大きいホテルがいくつかあるくらい。
町中で唯一空室があったこのホテルに泊まるしかなかった。
ただ1泊510バーツ(2000円弱)なのでちょい高いってくらい。
ローイエットタワー
そんなイサーンらしい普通の田舎町ローイエットに2020年12月にできたこの町のランドマークがローイエットタワーだ。
35階建て、高さ101m。
ローイエットはタイ語で 101 という意味がある。
形はイサーンの伝統楽器、ウォートという笛の形をしている。
入り口で50バーツ(180円)を払うと、直通エレベーターで31階の室内展望台まで。
地元の学生カップルや子供連れファミリーでそこそこに賑わっている。
50バーツで楽しめるのは田舎の良心的プライス。
ちなみにバンコク、マハナコーンタワーの展望台の入場料は880バーツ(3300円)だって。
階段でさらに上に屋外展望台もあり、近々オープンするジップラインの建設が進められていた。
最上階35階には仏像、プラ・プッタ・ミンムアンモンコンが安置されている。
こんな所でも仏像なのがやっぱりタイ。
30階にあるカフェでは窓際に座って洒落たソーダを飲んだ。
展望台への入場料を含めても500円以下でこんなことができるのが田舎らしい。
とはいえタワーを出てしまうと変哲のない田舎町、ローイエット。
目の前の公園では中高生たちが溜まっていて、市場はやっぱりおばさんたちで賑わっていた。
カフェアマゾンでコーヒーを飲みながらぼけーっと夕暮れ時を過ごす。
田舎の町にもだいたいあるカフェチェーン店。
道端で焼き鳥を買って歩きながらホテルに帰る。
1本たった10バーツ(37円)で買えるぼんじりの焼き鳥がなんだかとにかく美味しかった。
過去一何もない町 ヤソートーン
いつも通りバスターミナルへ。
ローイエットから隣町ヤソートーンを目指す。
ヤソートーン方面のチケットオフィスに声をかけると、
ヤソートーン方面のバスは15時過ぎまで来ないという。
時間はまだ12時前。イサーンの旅で初めての展開だ。
あと3時間以上。
なにもないバスターミナルの周りで時間を潰すか、大荷物を背負ってもう一度町に戻って15時にまたここにくるか。
どっちも気が進まない。
幸いなことにローイエットからヤソートーンは車で1時間弱の距離。
バスを待って夕方ヤソートーンに着いても1泊なので、あまり町をぶらぶらする時間もなくなるし(結果なにもなかったけど)、
快適さと時間をお金で買おうということでタクシーで目指すことに。
バスターミナルで声をかけてきたタクシーはヤソートーンまで1000バーツ(3700円)が言い値。
Grabのアプリでは619バーツ表示だったので迷わずこっちを一択。
Grabタクシーが到着すると運転手のおっちゃんが
「ヤソートーンは遠いから700バーツくれ」
と言う。まあいいだろう。
バスなら町外れのバスターミナルに着いて、そこからまたバイタクかなにかでホテルまでって流れだけど、タクシーなら直接ホテルまで行ける。
たまにはしょうがない贅沢だろうと、快適なタクシーで1時間。
あっという間にヤソートーンについた。
ヤソートーンも田舎すぎてホテルの選択肢がなかった。
町からかなり離れたホテルに720バーツ(2700円)払って泊まった。
町までのアクセスの悪さも、値段の高さもこれまでダントツだ。
ホテルは大きいけど古くて薄暗く、廃れた温泉街のホテルみたいな雰囲気。
ホテルからなにもない道を歩くこと20分ちょっと。
ヤソートーンの中心地は、なんの変哲のもない郊外の町って雰囲気。
人も店も少なく、ここまでで一番なにもない町だとおもう。
この町は年に一度、たくさんのロケットを打ち上げる祭りが有名。
ロケット祭りはたくさんの観光客が来るっていうけど、みんなホテルもぜんぜんないこの町のどこに泊まるんだろう。
夕方にはやることもなくなりホテルの周りを散歩して、宿の前のベンチで缶ビールを飲んでた。
唯一、ホテルからすぐの所にコンビニがあったのがありがたかった。
また往復40分以上歩いて町に出る気にもなれず、(バスとかも通ってないみたいだし、Grabも非対応エリア)
セブンイレブンでビールやご飯を買って夜はホテルで過ごした。
いよいよヤソートーンから秘境の都市、ウボンラチャターニーへ。
ヤソートーンはgrab非対応エリア。
ホテルをチェックアウトする時にバスターミナルまでのタクシーをお願いすると、ホテルのお姉さんは困ったような感じで奥にベテランのおばさんを呼びに行く。
ホテルでタクシー頼むってめちゃくちゃ普通の行為なはずなのに、なんだかすごい特殊な注文をしたみたいになってる。
そういえば昨日町を歩いていても、タクシーなんて見なかったような気がする。
このあたりは路線バスもソンテウ(乗り合いトラック)も見かけなかったし、
その上タクシーがいない町なんてあるのか。
おばさんがしばらくどこかに電話して、タクシーは10分くらいしたら来るよとのこと。
ところがいざ来たのはバイタク。
さすが、やっぱりタクシーはいないのか。
まあバイタクの方が安いからありがたいけど。
秘境都市ウボンラーチャターニー
今回は、たまたま20分後に来るというバスに乗れた。
これを逃したら2時間以上バスはないというのでぎりぎりだった。
1時間半でウボンラーチャターニーに着いた。
ウボンラーチャターニーは東にラオス、南にカンボジアがあるタイ最東の県。
長いのでタイ人はウボンと略して呼ぶ。
ウボンの町の中心にはムン川という川が流れていて、陽が落ちてきて涼しくなると人々が集まってくる。
ちょこちょこ屋台があるくらいなんだけど、水があるというだけで人が集まり、退屈しないのが不思議。
川のほとりでひとりムーガタ
ムン川沿いを歩いていると川のほとりの段々にゴザを敷いて鍋を囲んでいる人たちを見つけた。
どうやらムーガタ屋みたい。
ムーガタはバンコクとかでもよく見るけど、イサーン料理。
ドーム型に膨らんだ鉄板部分で焼き肉、
その周りの溝で鍋を楽しめる効率的な料理。
実はムーガタは食べたことがない。初挑戦。
それどころかまず一人で鍋を食べるのも、屋外で鍋を食べるのもはじめて。
ビールを注文して飲みながら待っていると、
具材が運ばれてきた。
葉物野菜に白滝。
ムー(豚)ガタ(鍋)なので豚肉だけかと思っていたけど、海老、イカ、貝なんかもきた。豪華。
焼いたり湯掻いたりしながら、ナムチム(辛いタレ)をつけて食べる。
火加減もできない上にすぐ焦げ付くので、一人では忙しくて、のんびり食事とロケーションを楽しる余裕はなかった。
おまけに野良犬が隙を見ておこぼれをもらおうと近づいてくる。
やり方もあってるのかわからないし、忙しないのでこれはタイ人か誰かとやるのがいいと思う。
ただ、川沿いの店の雰囲気は最高。
いいタイミュージックが流れていてビールが美味かった。
暗くて焼き加減がわからない豚肉もなかなかいけた。
泊まっていたホテルの目の前の広場にはナイトマーケットがあって、隣が公園。
その向かいにセブンイレブンと小さいロータス(スーパーマーケット)、カフェアマゾンが並んでいる。
おまけに3分も歩けばムン川に出る。
生活するにはとてもいい立地。
金色の菩提寺
町の中心の大通りを、しばらく北に行った所にちょっと変わった寺院があった。
ワット・プラタート・ノンブア。
今までのタイ様式のお寺とは明らかに違う雰囲気。造り。
この独特な四角錐形の仏塔を見た瞬間、
インド、ブッダガヤにある仏教の大聖地、マハーボーディテンプルを思い出した。
色や装飾こそ全く違うけど、形がまるっきり一緒。
調べてみるとやっぱりインドの大菩提寺をモデルに造られた比較的新しい寺院らしい。
空気感は今までのタイらしいお寺よりも荘厳。
真っ白い袈裟を着た、イサーン人とはちょっとルーツの違う感じの尼さんたちを目にした。
仏塔の近くで靴を脱いで入ると、四方に同じ造りのお祈りする場所があって、中に祀られた仏様の姿が見えるようになっている。
ウボンまで来て今までのイサーンとはほんの少し町並みや雰囲気が変わったように感じるのは、ラオスからカンボジアに近づいてきたからなのか。
理由はわからないけど、おれが知っているような有名なモーラム(イサーンの伝統ダンスミュージック)の歌手はウボンやその周辺の県出身の人が多い。
確かに町を歩いていると楽器屋が多く、レストランや住宅からモーラムが聴こえてくることが多かった。
聖地とまではいかないまでも、ウボンは歴史的背景から音楽が盛んな町なのかもしれない。
イサーンに入って2週間。
東京を出てから一カ月近く、バンコクやラオスを含めて、共通する匂いのする東南アジアを旅している中で、
めきめきと旅の風景が日常になってきていることに気づいた。
もちろん最初はスリリングなノーヘル4人乗りのバイクも、ゲテモノ屋台も、
「帰ってきたな〜これぞ東南アジア!」とテンションが上がったり、
タイ人の適当さも、文化の違いも、それ自体が新鮮で嬉しかった。
それがいつの間にか日常の光景になっているのでもう何も感じなくなっている。
独特な文化や、日本とは全然違うタイ人のマインドも、毎日それを全身に浴びて過ごしているとそれが普通になる。
一聴するとそれはネガティヴでつまらなくなったという風に聞こえるかもしれないけど、
あくまでもおれの旅の目的は、現地人になりすますこと。
もちろん新鮮なカルチャーショックも楽しいけど、旅での全てのことが当たり前になることがとにかく心地いい。
イサーンの旅もいよいよ終わりが見えてきた。
ここからは鉄道が通っているエリア。
ここからはカンボジアとの国境沿いをずっと西へ。
最終目的地、ナコーンラーチャシーマーまでは鉄道の旅になる。
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