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【日本の冠婚葬祭~通過儀礼 ⑨厄年と厄祓い~】

 このブログでは、日本の儀式を見直し、少しでも後世に継承していきたいという想いで様々な行事や儀式をご紹介しています。前回は『十三参り』についての回でしたので、今回は『厄年と厄祓い』について書いてみようと思います。

 前回のブログはこちら

 日本には『厄年』という言葉があります。

 これは、いわゆる「不運や大病などの厄(災い)を受けやすい年齢」のことであり、一生の内に何度か特定の年齢が定められています。男性と女性では年齢が異なっており次のようになっています

 男性:25歳、42歳、61歳   
 女性:19歳、33歳、37歳
(すべて「数え年年齢」)

 数え年については、『初誕生』の回で触れておりますので、よろしければご覧ください。

 上記の厄年は「本厄(ほんやく)」と呼ばれ、その前年は「前厄(まえやく)」、後年は「後厄(あとやく)」と呼ばれます。本厄だけでなく、その前後も厄の影響を受けやすいことから、この3年間は特に気をつけるようにとされています。特に、男性の42歳は「死に」を、女性の33歳は「散々(さんざん)」を連想させる年齢であることから、厄年の中でも「大厄(たいやく)」であると言われています。

 このような厄年にあたる期間は、厄祓いを行うことは勿論ですが、結婚、開業、新築などの祝いごとは極力控える方がよいとされています。

 厄年はどのように定められたのかについては複数の説がありますが、中でも陰陽道における陰陽五行説から生まれたという説が非常に有力とされているようです。

 日本で「厄年」という言葉が登場するもっとも古い文献は、仏説灌頂菩薩経という奈良時代に記された経典ですが、仏教の世界ではその頃から「厄年」という捉え方があったようです。続いて、今年の大河ドラマの舞台となっている平安時代では「源氏物語」の「若菜」と「薄雲」の章で「厄年」という言葉が出てきます。当時は、陰安倍晴明で有名な陰陽師という立場の者がおりました。陰陽師はれっきとした官職であり、この時代には天文観測や吉凶占い、厄祓いなどをおこなっていたことは、よく知られていることと思います。

 ところで、「厄年は一生のうちに3回しか来ないので、その時だけ注意して過ごしていれば大丈夫」・・・とは思わなかったのが、私たちのご先祖様です。厄とは体の中の老廃物のように日々蓄積されていくものなので、常に排出して(祓って)健康な体を保つ(清められた状態)にしておくことが大事と捉え、「厄祓い」は頻繁に行われていました。

 あまり気づいていない人も多いでしょうが、神社や寺社でお祓いを受けるだけが「厄祓い」ではありません。

 昔から「ケ」(日常のこと)で厄が溜まると、ケが枯れてきて「ケガレ(穢れ)」になると考えられていました。それを「ハレ」という非日常的な行事を行い、神仏に供えたものをともに飲食することで厄落としをしていました。お正月の行事や節分、節句のような年中行事から、結婚、葬儀、法要、人生の通過儀礼まで、全てが厄落としに繋がっていました。

 このように、日本の行事は厄落し(または厄祓い)そのものであると言っても過言ではありません。日々の暮らしが無事に生活していけることを願うことが、何より大切なことだったのでしょう。


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