【日本の冠婚葬祭~通過儀礼③~】
このブログでは、日本の儀式を見直し、少しでも後世に継承していきたいという想いで様々な行事や儀式をご紹介しています。前回は生まれてから初めて迎える儀式としての『お七夜』と『命名式』についての回でしたので、今回はそれに続く『お宮参り』について書いてみようと思います。
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赤ちゃんは生後約1ヶ月を迎えると、『お宮参り』を行います。お宮参りは、男の子が生後32日目、女の子は生後33日目に行うことが一般的でした。しかし、男女で1日の違いがある意味は明確に伝えられておらず、地域によっても風習が異なっていたようです。現代では、ご両親のお休みの日や大安吉日などを選んでいる方が多いようですので、『生後約1ヶ月前後の吉日』というタイミングが一般的になっています。
お宮参りは地元の氏神様に参拝し、神様に氏子として認めていただき、加護を祈るために行います。つまり、有名な神社だからといって、自宅から遠く離れた神社でお宮参りをしても、本来の意味は果たせないことになります。
現代では家族全員でお宮参りに行くことが多いようですが、昔は、母親は同行しないものでした。出血を伴うお産を行った後の75日間は産婦にとって『忌み期間』となり、神社に参拝はできないものとされていました。お宮参りでは、赤ちゃんを父方の祖母が抱いていることが一般的になっていますが、それは、昔の風習の名残と言われています。
お宮参りで氏神様に初めてご挨拶するわけですから、赤ちゃんには晴れ着を着せて(正式には羽織らせて)参拝します。男の子には群青や黒の地色に鷹や鎧兜など、強い子に育つような願いが込められた柄が多く、女の子は赤や桃色の地色に御所車や花などが描かれた華やかで縁起のいい柄が多く選ばれています。
お宮参りのような儀式は海外でも多く行われています。宗旨によって大きく異なりますが、キリスト教における幼児洗礼などはよく知られています。キリスト教の中でも宗派によって儀式の考え方は違いがあるようですが、正式に神の子となり、神のご加護を願うため儀式として行われることは共通しています。生まれてから初めて迎える宗教的儀式ですので、赤ちゃんにとってもご両親にとっても、とても大きな意義があるものと考えられています。
日本も本来は、氏神様の氏子となるためのお宮参りでしたので、地元の人々にとっても意味のあるものでした。しかし、現代ではその辺の意味は伝承されず、お宮参りに限らず、儀式の多くは形骸化が進んでいます。地域社会とのかかわり方も変化しているので、仕方ないのかもしれませんね。そのような時代ですが、せめて「本来は何のために行うのか」という意味だけでも地道に伝え続けていこうと思っております。よろしければ、これからもお付き合いください。
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