村上春樹さんの好きな話
日本一著名な小説家と言っては過言ではない村上春樹。独特な文体は評価される一方で、苦手だという人も一定数存在しますが、彼が話した”卵と壁”というエピソードを知っていますか?
■単純な僕でも難解な文を好きになれた
小説が好きだった。いわゆる文学少年ってほどでは無いけれど、小学校の低学年の頃から、小さな体にハードカバーのでっかいファンタジーを読むのが好きだった。
それには専業主婦で、いつも本を読んでいる母親の影響が大きかった。それ以外にも、保守的な我が家は昔からドリルを消化していれば、教科書を暗記していれば褒められる文化だった。
だから読者という形で村上春樹さんと出会うのは、当然のことだった。初めて読んだのは確か『海辺のカフカ』。それから『ノルウェイの森』、『1Q84』ときて、『ねじまき鳥クロニクル』を読んだ。
短編集や、それ以外の随筆なんかにも目を通した。大学時代には、同じく村上春樹さんを好きな友達と「村上語風」会話を楽しんだ。(なにはともあれ。ブルー・ジーン。とかいって遊んでただけだけど)
■卵と壁の話
何はともあれ、それだけの時間を僕は村上春樹さんの作品に投資してきた。だから影響を受けていないはずがない。作品には作者の考えや、その人そのものが多かれ少なかれ入っているはず。
だから僕の思考のほんの一部は村上春樹さんから成り立っていると言っても過言ではない。
というわけで、自分に影響を与えた「卵と壁」のお話をお伝えします。
これがくそかっこいい。
このお話は2009年に村上さんがエルサレム賞という世界最高峰の文学賞を受賞した時のスピーチです。重要なのはイスラエル軍のガザ地区侵攻のタイミングだったということ。
至るところから非難や、根拠もない意見が来たことは想像に難くない。
それでも村上さんは現地に行って話した。それが卵と壁だ。是非ググって全文を読んでみて欲しい。題名部分のみ引用します。
「高く、堅い壁と、それに当たって砕ける卵があれば、私は常に卵の側に立つ」しかも、たとえ壁がどんなに正しくて、卵がどんなに間違っていようとも、私は卵の側に立つのです。他の人は、何が正しくて何が間違っているか決めなければいけないでしょう。ひょっとすれば、時間や歴史が、決めることもあるでしょう。理由が何であれ、仮に、壁の側に立って作品を書く小説家がいるとすれば、そのような作品に如何なる価値があるでしょうか。
村上さんは複雑なメタファーを用いて物語を作ります。ここでいう卵も壁もシンプルな比喩として捉えるべきではないと思います。
ですが、生きることそれ自体が物語を紡ぐということであれば、自分は壁に向かって卵を投げつける、もしくは投げられた卵の人生を送りたい。
選択に迫られた時に、僕がふと思い出すのはこのスピーチです。あなたにも、人生の指針となるようなエピソードはありますか?
■今回の放送
■今回の参考書籍
※どの書籍に書いているか忘れてしまったので冒頭に紹介した『ねじまき鳥クロニクル』を紹介します。