籠嬢
月明りに揺れる水面が
孤独の色を映し出す
窓辺に届いた哀情を
硝子の瞳は
無機質な光に変換する
金糸を揺らして
朱色に染まった
白い陶器の籠嬢は
一人きりのこの城で
夢を見ていた
殺した感情が騒ぎ出す胸の内
硝子の心は鼓動を止めて
涙は枯れていた
忘れた記憶を探しては
温度を持たない左手で
彼女の頬をなぞる
閉じ込められた少女は
しどろもどろにはにかんで
青い瞳は現在を
歪めて映していた
波紋の広がりに
色濃くなった憂鬱を
硝子の瞳は
微かな濁りに感情を押し込めた
見上げた星は
変わらない今日を
優しく彩って
変わらない私は
飾らないまんま
片足立ちで待つ
↓ ↑ ↓ ↑ ↓ ↑
重ねた愛撫を水に浸して
滲む金色を掬いあげる
醜い私の身代わりに
見出された籠嬢は
口を閉ざしてこの城で
月に祈っていた
殺した感情が揺らぎだす胸の内
硝子の破片が心を射抜き
赤い血流れていた
忘れた記憶に縋っては
力を持たない両腕で
彼女を抱きしめた
冷たくなった少女は
幸せそうに微笑んで
青い瞳は未来を
優しく見つめていた