ほったらかしサイン
ここで1つ、うら若き私の学生時代、ホテルの披露宴スタッフとしてアルバイトしていた時のことをちょっとお話しさせて下さい。
みなさんはホテルのバックヤードに足を踏み入れたことありますか?
1度もないという人は幸せ者。実はそのバックヤードには、あの華やかな披露宴会場からは想像できないほどの無機質な空間が広がっているんです。無機質で同じ色の壁がずーっと続いているような、不気味だとも思えるあの空間。もちろん、サインなんてほとんどありません。
人生初めてのアルバイト勤務で、まだどこか初々しさの残る私は「次の披露宴会場へ続く扉はどこだ」とバックヤードを練り歩く。しかし、人生とはそう上手くは行かないものらしい。結構歩いているのに、なかなか見つからない。300mくらいある(体感)長い長い廊下をひたすらに探すが見つからない。
先ほど申し上げた通り、そこにはサインがないので、ペーペーの私には『どの扉がどの披露宴会場に繋がっているのか分からない』。間違った扉なんて開けようものなら…(悲鳴)新米の私には到底叶わなかったこの難題。挫折しながらも、なんとか私は顔見知りを見つけ、時間ギリギリに会場へ到着。もう二度とこんな思いはしない。そう誓った私は、こっそり鉛筆で、私にしかわからないような目印をその扉の横につけておくことにしました。
どうして私はここで迷わなければいけなかったのか、このかわいいメンツを保つために説明しておくと、原因はつまり『特徴がない状況が続いた』から。良い目印がないので、ずっと同じ状況・景色になる。だからユーザーは迷ってしまう。あの幼いヘンゼルとグレーテルだって自分で目印をつけて歩いたというのに、なんであの大人たちはサインを置かないのか(情けない)。
ユーザーからすると『特徴のない状況が続く』は、ゴール(目的地)に辿り着くまでに何のサインも見当たらない『ほったらかし状態』です。それは暗く大きな不安を誘い、ユーザーはそのうちストレスで禿げます(大嘘)。
以前から「渋谷にはどうしてあんなに落書きが多いのか」と不思議に思っていましたが、今日その理由がわかりました。うら若き私がする『勝手に扉に目印を付ける』っていうのと同じ。きっとヤンキーが渋谷というダンジョンで迷わないように付けたんだ。どうやら気が合いそう。(今やったら私は軽犯罪法であっけなくお縄)私が再犯を犯す前に、もうパンくずでも消しくずでも何くずでもいいので置いといた方が身のためですよ(もちろん私の)。
追録 おやつは世界を救う。
It's a Sweet World. 甘いものがなきゃやってられない。今回のお供は『小枝』。もしサインを置くならこんな木くずだって良いんですよ。