社会問題をビジネスで解決する『ソーシャルビジネス』とは?
『ソーシャルビジネス』という単語を聞いたことはありますか?
知らない人からすると、「SNSを使ったビジネス?」「ネットビジネスか何か?」と思う人もいるのではないでしょうか。
それらとは全く別で、『ソーシャルビジネス』とは、社会問題の解決を目的としたビジネスのことです。
貧困問題や差別問題などの世界中のあらゆる社会問題を、寄付金だけに頼らず、ビジネスで得た利益で持続的に解決していきます。
今回は、そんな『ソーシャルビジネス』について、事例と共にご紹介していきます。
『ソーシャルビジネス』の定義
ソーシャルビジネスとは、ビジネスを手段として社会問題を解決しようとする取り組みのことです。言い換えると、収益事業を行いながら「社会貢献に取り組むこと」とも言えます。
そして、その主体となる事業体(組織)を『社会的企業』、『ソーシャルビジネス』、『ソーシャルエンタープライズ』と呼びます。また、『ソーシャルビジネス』に挑戦する起業家のことを『社会起業家』と呼びます。
2007年に発足された、経済産業省のソーシャルビジネス研究会によると、ソーシャルビジネスの定義は以下の3点を満たすこととされています。
・解決が求められる社会的課題に取り組むこと
・ビジネスとして、継続的に事業活動を進めていくこと
・新しい仕組みを開発、活用し、新しい社会的価値を創出すること
すなわち、社会問題への取り組みを『ビジネス』という手段で行い、それを通して新たな社会的価値を創出すること、それが『ソーシャルビジネス』なのです。
出典:https://www.borderless-japan.com/members/social_business/15614/
寄付金などに頼って問題解決するのではなく、ビジネスで利益をあげながら持続的に問題を解決するのが『ソーシャルビジネス』の特徴です。
下記に『ソーシャルビジネス』に関する名称をまとめておきます。
ソーシャルビジネス:ビジネスを手段として社会問題を解決しようとする取り組み
社会的企業:ソーシャルビジネスを行う企業や組織
社会起業家:ソーシャルビジネスに挑戦する起業家
なぜ、ソーシャルビジネスが必要か
寄付だけで成り立っている事業(NPOやNGOに多い)や、企業のCSR活動などは、ソーシャルビジネスには入りません。
ソーシャルビジネスのように、持続的にビジネスを行うためには、利益を追求しなければなりません。
現在、世界中には様々な問題があります。貧困や格差の問題、紛争やテロなどの暴力的な問題、そしてゴミの問題や地球温暖化などです。
これらの問題を国や政治だけでは解決できないため、ソーシャルビジネスで解決しようとする企業や団体がたくさん出てきています。
世界中で誰かが何らかの大きな問題に苦しんでいる、それを解決する方法としての『ソーシャルビジネス』。
これほど、素晴らしいモデルはないのではないでしょうか。
それでは、実際に様々な社会問題の解決に繋がっている『ソーシャルビジネス』の事例を紹介していきたいと思います。
TOMS
『TOMS』は日本でも扱っているお店が非常に多く、デザインがおしゃれな靴のブランドという認識がある方も多いはず。
『TOMS』のビジネスには、キャッチフレーズにもなっている「one for one」のシステムがあります。
これは、『TOMS』の靴を一足買うと、靴1足が途上国の靴を必要とする子どもたちに贈られるというシステムです。
また途上国だけではなく、US Giving Partnersと協力して、米国の子供たちに100万足以上の新しい靴を提供したりと、社会へ様々な形で貢献しています。
『TOMS』は、靴から始まり現在では『バッグ、カバン、サングラス』など様々なアイテムを扱っています。
MOTHERHOUSE
『MOTHERHOUSE』は、途上国から世界に通用するブランドをつくるというコンセプトの元に会社を運営しています。
代表の山口絵理子さんが、バングラディッシュの素材ジュートを使ったカバンを現地の人と協力して製作し、それを日本で販売したところから始まっています。
今では、バングラディッシュのジュートや皮を使ったバッグ、ネパールのカシミアやシルクを使った質の非常に高いストール、インドネシアやスリランカの職人さんと協力して製作したジュエリーなどを販売したりしています。
世界の文化が失われている問題や、貧困や格差の解決に繋がるビジネスを展開しています。
商品を販売するだけではなく、マザーハウスカレッジというイベントも開催しており、山口さんや副社長の山崎さんと議論を通じてモノづくりについて考えるというイベントなどが開かれています。
HASUNA
『HASUNA』は、日本初のエシカルジュエリーブランド。
ジュエリーには結婚や幸せなどのポジティブなイメージが一般的にはありますが、ジュエリーが作られる裏側では貧困や格差、児童労働などの現実もあります。
劣悪な労働環境でダイヤモンドなどを採掘している人や、死に繋がるような危険な鉱山で働かされている人もたくさんいます。
代表の白木夏子さんは、収益率が悪いため大手商社なども取引しない鉱山で働いている人と、直接的に取引できるルートを開拓し、それらの素材を使用したジュエリーをデザインし販売しています。
ジュエリーを購入する人の多くは、ジュエリーの裏側の真相を知ってかわいそうだから買うのではなく、デザインが良かったりどこかに魅力を感じたから買います。
持続可能なビジネスをするためには、貢献を押し出すのではなく、人が本当に欲しいと思える商品やサービスを生み出すことが、結果的に問題の解決に繋がります。
そんな持続可能なビジネスを体現しているのが、『HASUNA』です。
グラミン銀行
世界貧困国の一つとしてあげられるバングラディッシュの経済学者ムハマド・ユヌスが立ち上げた銀行です。
無担保で貧困に苦しむ女性にマイクロファイナンスという手法でお金を融資するシステムで、お金を融資する際に5人1組でグループを組ませます。
そして、グループの一人一人に順番に融資をしていき、もし一人でも返さないと次の人が融資を受けられなくなる。
しかし、同じ場所に住んでいる人を対象にグループを組ませるので非常に返済率が高い。
このビジネスモデルは世界的に評価され、ムハマド・ユヌスはノーベル平和賞も獲得しています。現在は、バングラデシュ全国に約2200の支店を持っており、大銀行へと成長を遂げている。
まとめ
世界中には、本当にたくさんの問題が山積みになっています。
このような問題は、寄付やボランティアのような活動でしか解決することはできないというイメージを覆すのが、『ソーシャルビジネス』です。
「社会事業は無償ですべき」「社会貢献をするなら給料は低くても仕方がない」という認識をも覆します。
現在は、世界中でたくさんの『社会起業家』が誕生しています。
『社会起業家』や、『社会企業』が出てくれば出てくるほど、この世界にある多くの問題の解決に繋がります。
彼らは、世界の何らかの歪みでできた問題を解決するために、必死に取り組んでいます。
個人的には、「なぜ、働くのか?」「何のために働くのか?」というような働き方への答えにも繋がっているのが、ソーシャルビジネスだと考えています。
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