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曲解説「ベリードボーンズ(3周目)」
#ボカロリメイク投稿祭2024に参加したオリジナル曲「ベリードボーンズ(3周目)」の解説記事。
筆者:ユウヤケヤモリ
https://note.com/sunsetgecko
変拍子大好きバンドでやっていくためにRushを下敷きに作った
この曲は学生時代、バンドとして動いていた頃に書いた。
当時から、この掌は音楽性として「プログレッシブポップ」というようなことを標榜していて、変拍子の曲をよくやっていた。
しかし自分自身は変拍子を聞くのは好きだし、やるのも嫌いではなかったが、うまく作れなかった。
一度、小節ごとに規則性なく拍子が変わるようなデモを作ったりしたが、当然演奏困難だった。
演奏していて楽しい変拍子とは、と問うなか思い当たったのがRushだった。
感覚的な話だが、彼らの変拍子は「手段としての変拍子」だと思う。
スリーピース編成で単調になりがちな曲想を彩るための手段。ただテクニックを誇示するような「目的としての変拍子」とは違う、ノれる変拍子。
そんなことを考えつつYYZを聞いているとふと思い浮かんだのがイントロリフだった。
「BuriedBornes」を触媒に世界観が固まり、構成や歌詞が決まっていった
この頃、ニンジャスレイヤーのほんやくチームの影響で「BuriedBornes」にハマっていた。掌メンバーにも布教していた。
終わりも救いもない「サツバツ」とした世界観は、就職浪人をし世を儚んでいたその時の心境にも合致していた。
なので、その世界観を曲に取り入れることにした。イントロリフとの噛み合いも良さそうだった。
リズムが変拍子なので、ハーモニーはなるべくシンプルにすることにした。IM7、IVM7(♯11)、V7(11)、VIm7。少なくともルートはI、IV、V、VIのどれかに収めている。
そこから弾き語りしつつ構成を固めていった。Bメロで3/4拍子から4/4拍子へのスイッチが予想外にうまくいったという記憶が強く残っている。
2番後の間奏は悩んだが、Grateful Deadを聞いていてV→IVという進行を使ってみたところハマってくれた。
歌詞もわりとスラスラつけることができた。終わりも救いもないというフレーズをゲームから拝借したところ、なぜかバンドメンバー間で流行ったのも思い出される。
バンドで録音もした(1周目)がミックスが納得行かずオーケストラ版を作ってみた(2周目)
完成した曲はバンドメンバー間ではそれなりにウケ(たはずで)、聴衆からの手応えもまあまああり、録音してサークルのコンピレーションアルバムにも収録した。
しかしその音源(1周目)は、自分の録音設定ミスなどもあり、あまり胸を張って喧伝できる出来栄えでもなかった。
曲自体には自信があったし、ちゃんと聞けるものにしたかった。
ここで去年、諸事情によりまた掌での音源制作が活発化した。そこではもはやバンドサウンドの制約なく、DTMで好きに作ってみる流れになっていた。
その勢いをかって、この曲をオーケストラ版として蘇らせることになった。もともとボス曲っぽいのでちょうどよかった。
時間をおくと元の音源がショボすぎると感じたので、もう一度作り直した(3周目)
作っていた当時はハイになっていたが、その後またオーケストラ音源の経験を経てから聞き直すとショボいと感じた。
最初は音源を差し替え、プラグインをかけていけば終わると思っていた。すると、そもそも譜面がメチャメチャであると感じられた。
バンドの感覚で、コードの枠内なら各楽器が好きなことをやって良いと思っていたが、それはフルオーケストラでは通用しなかったのだ。
結果、想像以上に根本から作り直すことになり……今でも納得のいかない点は多々あるが……、いったん「3周目」、バンド版とショボいオーケストラ版に続く第3弾としてかたちにした。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm44345580
既にこのブラックフライデーで新しい音源を仕入れてしまったので、4周目の気運が高まりつつある。
RPGのプレイや就職活動を思い浮かべながら聞いてもらうと楽しい
最後に、この曲の聞き方について書いておく。それは、RPGのプレイや就職活動を思い浮かべながら聞いてみてほしい、ということだ。
曲構成から、そのように作ってある。イントロは戦闘。Aメロはダンジョンの情景描写。Bメロは主人公視点の描写。サビは戦いに身を投じる悲痛な決意表明。そして間奏ではまた戦闘……
就職活動の文脈でいうと、イントロは面接等の企業イベント。Aメロは就活マーケットというダンジョンの情景描写。Bメロは就活生視点の描写。サビは就活に身を投じる悲痛な決意表明。そして間奏ではまた面接……
歌詞もそうだ。たとえば2番Bメロ、「指の先のささいな/戸惑いが今までに/積み上げてきたものを/台無しにしてしまう」という一節がある。
これは、スマホRPGでは一瞬のタップミスでこれまでの苦労が水泡に帰すということの表現でもあるし、就職活動においては学歴やガクチカに関わらずエントリーシートの不出来や連絡のミスによって次の道が閉ざされるということの描写でもある。
銅鑼の轟音が荒れ狂う無慈悲な世界のなか「もう朝は来ない」と嘆く、作られた歌声。
お気に召していただけると嬉しい。