科学的には青少年アスリートが高強度のトレーニングを行うと効果がある けれど・・・
スポーツをしているお子さんの成長やパフォーマンス向上のために、どんなトレーニングが効果的か気になる保護者や指導者の方も多いのではないでしょうか?
特に筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)がどのような影響を与えるのか、科学的研究をもとにわかりやすく解説します!
さらに、具体的なトレーニング内容や安全性にも触れていきます。
今回紹介する研究について
今回ご紹介するのは、「Effects and dose–response relationships of resistance training on physical performance in youth athletes: a systematic review and meta-analysis」という研究です。
この研究では、6歳から18歳の青少年アスリート1,558名(介入群891名、対照群667名)を対象に、筋力トレーニング(RT)の効果を詳しく分析しています。
さまざまな年齢層やスポーツ種目に対応したトレーニングの効果が明らかにされています。
筋力トレーニングの効果とは?
筋力(Muscle Strength)
効果量(SMDwm):1.09(中程度の効果)
最も効果的な条件:
トレーニング期間:23週間以上
セット数:5セット/種目
レップ数:6–8回/セット
強度:1RMの80–89%
休憩時間:3–4分
ジャンプ力(Vertical Jump Performance)
効果量(SMDwm):0.80(中程度の効果)
9–12週間のトレーニングが最も効果的で、特にバスケットボールやバレーボールなど、ジャンプ動作が重要なスポーツにおいて大きな効果が期待できます。
効果量(SMDwm):0.80(中程度の効果)
9–12週間のトレーニングが最も効果的で、特に爆発的な動作の改善が期待できます。
短距離スプリント(Linear Sprint Performance)
効果量(SMDwm):0.58(小さい効果)
スプリントトレーニングとの組み合わせでさらに効果が見込めます。
敏捷性(Agility)
効果量(SMDwm):0.68(小さい効果)
方向転換や反応速度の向上に寄与します。
スポーツ特有のパフォーマンス(Sport-Specific Performance)
効果量(SMDwm):0.75(小さい効果)
青年期(14–18歳):SMDwm=1.03
子ども(6–13歳):SMDwm=0.50
年齢別の効果の違いは?
筋力向上:子どもの方が効果が高い(SMDwm=1.35)
スポーツ特有のパフォーマンス:青年期の方が効果が高い(SMDwm=1.03)
年齢や成熟度(タナー段階)による有意な差は見られなかったが、傾向としてこれらの違いが確認されました。
トレーニングの最適条件とは?
効果的なトレーニングプログラムを組むためには、最適な条件を理解することが非常に重要です。
特に成長期の青少年アスリートにとって、安全かつ効率的にパフォーマンスを向上させるためには、適切なトレーニング設計が欠かせません。
研究では、トレーニング期間が23週間以上、エクササイズあたり5セット、セットあたり6~8回の反復、1回の反復最大値(RM)の80~89%のトレーニング強度、セット間の休憩が3~4分であることが筋力の向上に最も効果的であることが明らかになりました(SMDwm 2.09~3.40)。
とりあえず、かなりきついトレーニングと考えて良いです。
今回推奨されているトレーニングは、8〜9回が限界という重量を1セット6〜8回行うことです。
それを5セットもやるのは、時間的にも精神的にもかなり大変です。
中学生以下には高強度トレーニングは必要?
これらの研究結果を踏まえても、私は中学生以下の子どもに高強度のトレーニングは必ずしも必要ないと考えます。
本論文では、かなり高強度のトレーニングが推奨されているので、運動が嫌いになる可能性が高いからです。
また、筋力向上は神経系の発達で十分得られるため、安全性や楽しさを重視したトレーニングが適切だと思います。特に、遊びの要素を取り入れたトレーニングがモチベーション維持にも効果的です。
一方で、高校生以上であれば、適切な指導のもとで高強度トレーニングを取り入れることで、さらなるパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
特に競技力の向上を目指す場合は、計画的なトレーニングが重要になります。
まとめ
レジスタンストレーニングは、筋力やジャンプ力を中心に青少年アスリートのパフォーマンスを効果的に向上させる。
23週間以上、**高強度(80–89% 1RM)**のトレーニングが筋力向上に最適。
中学生以下は無理に高強度のトレーニングをせず、基礎体力作りや動き作りを重視。
高校生は、適切な強度のトレーニングを取り入れることで、競技力向上が見込める。
参考文献
Lesinski M, Prieske O, Granacher U. Effects and dose–response relationships of resistance training on physical performance in youth athletes: a systematic review and meta-analysis. Br J Sports Med. 2016;50(13):781–795.