法律留保の原則から言えば、法律根拠の必要な行政行為については、そのすべてが法律に記載されていることが望ましい。けれども、これでは予想外の事態に対応できないし、そもそもあらかじめすべての事象を想定して法律を作ることは不可能である。
そこで、法律が行政機関に自由な判断の余地を認めている場合がある。これを行政裁量という。裁量範囲は、そこそこ広く、行政裁量に対する司法審査は、「裁量権の逸脱」又は「裁量権の濫用」がある場合に限られている。
◆2種類の裁量
①要件裁量
・・・法が規定する要件に当てはまるかどうかの判断への裁量
(例)国家公務員法
「職員について、勤務実績が良くない場合やその官職に必要な適格性を欠く場合には、人事院規則の規定に基づき、その意に反して、降任又は免職することができる」
※太字の場合って具体的には?の認定にかかる裁量が要件裁量。
②効果裁量
・・・どのような処分を下すかの認定についての裁量
(例)(例)国家公務員法
「職員について、勤務実績が良くない場合やその官職に必要な適格性を欠く場合には、人事院規則の規定に基づき、その意に反して、降任又は免職することができる」
※降任にするの?免職にするの?どちらにもしないの?についての裁量
◆行政裁量が認められるもの認められないもの
判例を見ていくしかない。押さえておくべき判例が多い。
※要件裁量が認められた。
※要件裁量は認められる。
※検定合格の条件としないならば、削除追加の意見を付すことは認められる。
※効果裁量が認められた。懲戒免職としたこと、OK。
※要件裁量が認められなかった。
※効果裁量(補償額をいくらにするか)は、認められない。要件裁量については、(裁判所は)判断しないこととする、とも言っている。
◆裁量権の逸脱・濫用
もし、裁量権の逸脱・濫用が認められれば、裁判所はその行政作用を取消すことができる。(行政事件訴訟法30条)
〇逸脱と濫用の審査基準
・重大な事実誤認があるかどうか
・法律の趣旨目的と反するものではないか
・信義則の原則に反していないか
・比例原則(目的を達できる最小限の義務設定にせよ)に反していないか
・平等原則に反していないか
上記以外にも、裁量審査を行政庁の行政作用に至るまでの判断過程に着目することも多い。ここでも重要な判例を挙げておく。
※(内閣総理大臣の行う)原子炉設置許可処分の行政裁量は認められる。
※裁量権の逸脱とした。
※裁量権の逸脱・濫用に当たらない。
以上。判例からの出題が多いので多肢選択になっても対応できるようにしておくこと。