「物語を書く人のための推敲入門」ラリー・ブルックス著 大久保ゆう 訳
概要:
“売れるための物語”創作アドバイザー、「ラリー・ブルックス」による推敲アプローチにより、最新の作文方法「プロセス・アプローチ」を理解する
私がこの本を手にしたのは、この本の「推敲入門」というタイトルに惹かれたのがきっかけです。
ラリー・ブルックスは、売れるための本を書き上げる物語創作アドバイザーとして既に日本でも有名で、
・「工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素」
・「物理学的ストーリー創作入門 売れる物語に働く6つの力」
という、さすが思わず興味を引かれてしまう様なタイトルの本を刊行済みです。
歴史的なものも含めて作文の指導法(日本語教師に限定せず)には①制限作文アプローチ②ガイデットコンポジション③パラグラフライティング④新旧レトリックアプローチ⑤プロセス・アプローチという様な種類がありますが、最後の、⑤プロセス・アプローチという最も新しい方法が、ネットなどで調べてもどんなものか、分かりにくい感じでした。
⑤プロセス・アプローチは、1981年と1996年にフラワーとヘイズ (L.Flower & J.R.Hayes)によって提唱された人間の認識機能プロセスを含んだモデルですが、新しい理論だけあって非常に分かりにくいのが特徴です。さらに支流の研究もいくつか出ており、ネットの膨大な論文を読むと、私などは混乱をきたします。
・プロセス・アプローチの概要については、文末参考資料参照。
そして、たまたま見つけた「物語を書く人のための推敲入門」ラリー・ブルックス著 大久保ゆう 訳
このラリーの本は、まさに⑤プロセス・アプローチの、書き手が「構想」「文章化」「推敲」の3段階を行きつ戻りつしながら、それぞれをモニターするというプロセスをもっと『現実寄り』に『使いやすく』、『ハウトゥ的に』書いた、『大変面白い本』だったのです。
翻訳の妙ではありますが、ラリー・ブルックスの表現は、シンプルな言葉の選び方、共感の呼びすまし方で、読者を魅了します。
「つまりこの本は、作品を「推敲」する際に元々の出来をうまく捉え直して、それまでの労力を再利用しながらそいつをうまく黄金に換えようという話だ。」
推敲とその効能について、ここではこのように分かりやすく魅力的に述べています。
「次のドラフトを用意するときには、失敗した下書き(もしくは未推敲・・)のどこがどんなふうに足りなかったのかその要点を横に置きながら、技巧についての自分の理解を一つずつ照らし合わせていけば、原稿も救い出せる。この流れでは、推敲は単なる書き直しでなく、おおむね自分のストーリーの「再考」と言ってもいいだろう。」
推敲とは、単に完成した原稿に『単純に赤を入れる』ことではなく、自分自身をモニターするという認知プロセスに基づき、何度も作品全体を再考し、再構築することであり、この工程こそ、新しい『作文指導』であるプロセス・アプローチの重要部分になり、ラリーが述べている「ストーリーの再考」が、まさにこれに当たるのだと思います。
(次回は、実践的なプロセス・アプローチの仕方についてもう少し詳しく述べます)
まとめ
・「物語を書く人のための推敲入門」は、創作をする人に最上のすぐに役立つアドバイスをするための本である。
・「物語を書く人のための推敲入門」は、ユニークかつ面白く売れる本のメタ・メッセージになっており、本の構想がそもそも売れそうな本!になっている。
・プロセス・アプローチは、推敲を繰り返す段階で、作品全体を再考することも繰り返す。
・プロセス・アプローチは、人間の認知機能のモニター機能に焦点をあてている新しいライティング方法である。
おわり 2022/04/16
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