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本屋、開店、2ヶ月前。

※このnoteは2024年8月に出そうと思ったまま、タイミングを逃して眠らせてしまった文章です。開店2ヶ月前の熱量が籠もった文章なので、そのまま出します。

はじめに

2024年8月。

天文図舘が開業して丸4年が経ちました。始めた頃は25歳だった僕も、今では29歳になり、まもなく30代が見えてきます。

20代前半は日本をヒッチハイクで巡ったり、その過程で出来た繋がりを辿って南の島に移住してみたりと、せっせと自分探しに勤しんでいました。そんな終わりなき非日常を生きると息巻いていた僕も、20代後半になるとすっかり阿佐ヶ谷に根を下ろしています。

この4年間は酸いも甘いもありましたが、旅や移住をしていた頃よりもさらに濃い時間を過ごすことができました。そんな経験ができたのは、店作りを手伝ってくれた友人や知人、そしてお客様のおかげです。

天文図舘に来るお客様は優しい方が多く、僕自身、そんな人たちに囲まれた和気あいあいとした日々を楽しんでいます。しかし、気付けばもうすぐ30代。このままゆるやかな人生も悪くはないですが、このタイミングで少し背伸びをしてみたいと思います。

結論から言うと、2店舗目を開くことに決めました。青と白を基調とした明るい雰囲気の本屋を始めます。来てくれたお客様に、朗らかでポジティブな気持ちになれる時間を提供できればと思っています。

概要

皆さんに最も分かりやすい言葉で新店舗を説明すると、シェア型書店×教室業になります。普段から本屋に足を運ぶ人に説明は不要だと思いますが、初めての方もいると思うので少しだけ説明します。

シェア型書店とは、複数の人で棚を間借りして運営される本屋のことです。月額で棚を借りることで、自分の好きな本を販売できる素敵な仕組みになっています。みんなで本を持ち寄って売る、常設のフリーマーケットのようなイメージですね。

教室業に関しては、天文図舘で行っていた囲碁教室やアート教室、金継ぎ教室以外にも、様々なコンテンツを考えています。天文図舘はレイアウトがかなり特殊且つ店のコンセプトが明確だったため、教室やイベントに制約が多かったのですが、新店舗はレイアウトやコンセプトの自由度が高めなので、天文図舘ではできなかったことを開催していくつもりです。

内装の色は白と青を基調にし、僕の中にある沖縄然とした心象風景を具体化する予定です。父方が沖縄出身の僕は、幼い頃から夏になると毎年里帰りしており、天文図舘が「誰かがいた」という「余韻」の空間であるのに対し、新しい店は「これから何かが起きるかもしれない」という「予感」を演出したいと思います。

天井高を生かし、日が差し込む朗らかな空気感を目指していますが、詳細についてはまた別の機会にお話しします。

大っぴらには言えない話

さて、概要はここまで。ここからは本音を語りたいと思います。

①店を作るきっかけ
この新店舗をやりたいと思ったきっかけは、今の社会の馴れ合いの風潮に違和感を持ったからです。元々、自分の中にある白と青の朗らかな空間を作りたいと思っていましたが、それだけでは一歩踏み出せませんでした。

店を作りたい気持ちが大きくなったきっかけは、以前お客様から言われた「山城さんに正論で殴られた」という一言です。僕としては、十分な信頼関係のもと、傷つけないように注意しながら考えを伝えたつもりでしたが、そのお客様はその言葉を望んでいませんでした。この点に関しては、僕の経験不足から来る失敗です。最近では、よっぽどのことがない限り、反対意見は言わないようにしています。

でも、本来、人は様々な意見を建設的にぶつけ合うことで成長していく生き物なのではないでしょうか。自分も相手も物事の一面しか見えていないと確かめ合うことで、意見を相対化し、社会に調和していきます。

ただし、意見を交わす場所は選ばなければなりません。天文図舘は、皆が癒されに来る場所であり、社会から隔離されたシェルターのような場所を目指しています。つまり、お互いが寄り添い合う場所です。しかし、自分自身を育むには、時に自論と反対の意見に触れる刺激も必要でしょう。

ということで、「天文図舘とは別にチャレンジの出来る新しい店を作ろう」というのが今回の成り行きです。

②なぜ本屋なのか
では、どうして喫茶店ではなく本屋なのか。これには大きく2つの理由があります。

1つは、僕が飲食業をすでに経験しているため、違う事業形態をやってみたかったこと。もう1つは、「本」が最も多様な人と繋がられる媒体だからです。

人が次のステップに進む上で最も影響を与えるのは人だと思います。「人は人で磨かれる」という言葉があるくらいなので普遍的な事実なのでしょう。そうであるならば、僕らは様々な人が集まる場を目指さなければいけません。そこで場作りに必要なピースを考えると重要なのは「共通言語」です。逆に考えると共通言語になるのであれば映画やゲーム、音楽、SNSでも良いですが、本ほど多様性と安心感があるコンテンツは無いというのが僕の考えです。

本という商品は確かに斜陽産業で、多く稼ぐことは難しいかもしれませんが、それでも様々な人が本を通して繋がれる場を提供できれば幸いです。

③既存の本屋の内装に思うこと
もう1つ、人が集まる場作りで重要なのが内装です。人は視覚情報が8割を占めると言われるほどなので、ここは大事にしたい部分です。皆さんの中にも綺麗な観光地や店に行くのが好きな人は多いはず。美しいものに心打たれる様子を記した文献は古くからあるので人間の普遍的な欲求と考えて間違いないと思います。

僕は空間を観察するのが好きなので、内装作りに関しては少しだけ引き出しが多めです。それを踏まえて既存の本屋について思うことは、どこも内装が似たり寄ったりだということ。大体、古い図書館のような無機質な雰囲気か、ナチュラル調の空間になっています。恐らくこれは本という商品の性質上あまり内装で自己主張をするのは得策じゃないという事でしょう。

しかし大型書店のような品揃えではなく、店主の個性を全面に押し出す独立系書店であればもう少し店ごとに内装の特色があっても良いのではないでしょうか。

ちなみに、これから始める本屋の棚は全部青くする予定です。できれば天井も青くし、余裕があれば飛行機や鯨、地球儀、ファンで内装を彩ります。喫茶店の店主が商品以上に内装にこだわるように、本屋でも内装にこだわってみたいと思います。

もし内装作りを手伝ってくれる方がいたら、こっそり教えてください。とても助かります。

最後に

今回は、かなり踏み込んだことをお話ししました。特に、本屋を経験したことのない僕が、既存の本屋の内装に物申すことは勇気がいりました。でもここで皆さんから意見を受け止める姿勢こそが、この店の店主の正しい在り方かもしれません。もし「それは違う」と思う事があれば本屋に居ますので、いつでも生のご意見をお待ちしております。

阿佐ヶ谷に新しい形の店を作りますので、何卒よろしくお願い致します。

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