ひいらぎの窓【最終回】/すこしさみしい短歌展全首評
こんにちは、こんばんは。湯島はじめです。
お読みいただきありがとうございます。
日曜夜に、すこしさみしい短歌を読んでいく連載「ひいらぎの窓」本日は最終回です。
本日は、今日までそぞろ書房さんで行われていた「すこしさみしい短歌展」の応募短歌を読んでいきます。
計275首、しっかりと読み大賞・佳作を選ばせていただきました。素敵な歌が本当に多く、選はたいへん難航しました(本音)。
候補作以外にもほんとうに一言ですが寸評をさせていただきましたので、よければご高覧ください。
そして、自分のなかの「すこしさみしい短歌」大賞をさがしてみてくださいね。
◇
<「すこしさみしい短歌展」大賞>
┗とても印象的な歌でした。
さみしさは「言葉に明かりを灯す」のだからいいことのように思えるのだけど、「さみしさの村には住めぬ」という。そこには「明かりのない、つめたいところに居たい」というような主体のつよい孤独を感じます。
さみしくも、明かりのある「さみしさの村」をそれよりもさみしい、つめたいところで見ている主体の暗く深いまなざしを想像できるような余地のある歌だと思いました。
「さみしさ」を客観的にとらえながら、そこから離れようとすることでさらに「さみしい」ところに行こうとしている。
「さみしさ」そのものの歌であり、とても「さみしい」景を少ない文字数で表現できていると感じ、大賞とさせていただきました。
◇
<佳作>
┗「東京」を我に教へし人、というあらわし方に魅力を感じました。下の句の「息するごとに」で、その人をどれだけ慕っていたかがストレートに伝わる、さみしくもうつくしい挽歌です。
┗雪がよく降るところの生まれの人は、雪の日に傘をささないというのを聞いたことがあります。「わたしを見つけられますか」には、おそらく住む土地を変えて、変わってゆく自分をそれでも見つけられますか、という切ないニュアンスを感じられ、きれいな歌だと思いました。
┗好きな歌です。「かなしみは月に刺さった一本の電信柱」このフレーズにやられました。もちろん月には電信柱は刺さってないので、空想上のことなんだけどこの「かなしみ」の感覚はすごくわかります。突飛なことを言っておいて「あくびがでちゃう」というのも、ネタバラシ感というか、冷めた感じがあって好きです。
┗こちらもとても好きな歌でした。花を見て「欲しい」と思うある種のひとの傲慢さと、「呪いやすい性格」。その相関は納得できるような、わからないような、けど説得力があり迫力のある歌だと思います。
┗消しゴムの「MONO」だと思うのですが、かかれていた何かを消して白紙に戻すことの空虚なさみしさを感じます。いわば、消すことしかできない消しゴムへの「どれだけの愛に焦がれてきましたか」という問いはやさしく、すこしのシニカルさも感じます。
◇
<応募作>
本の物理的な重さと、たくさんの人と会ったあとのさみしさや疲れがリンクしていて共感できます。
┗春のにぎやかさと、それに比例するような真逆の、しずかな気持ちを感じました。「それはきっと」という結びも興味を引かれます。
┗隣家はきっと特別な日ではなくありふれた食卓で、だから余計にさみしくなる。「炒飯」の選択がいいなと思いました。
┗音楽の熱っぽさに浮かれるのではなくてさみしさを感じてしまうの、共感できるなと思いました。(あと個人的にクリープハイプが好きなのでアガりました。)
┗「赤になれ」ってことは、そこから先に行きたくないという気持ちなんですかね。望まない引っ越しのような景なのかな、など想像が膨らむ歌です。
┗ふたりの関係性ははっきりとはわかりませんが、後半のやさしい語りかけがやさしい故にさみしさを増しています。
┗「マナー音」は、マナーモードにした電話の振動ですかね?これだけで伝わるのが面白いなと思いました。ふたりで居て、相手のことを描写した歌と読みました。
┗「テレビをつけて誤魔化す」が良いです。本当は思い出して心の支えにしたいことを思い出さないようにしている、その葛藤が伝わりました。
┗夢ってほんとうにすぐに忘れてしまうんですよね。ただの夢だけど同じ夢を二度とみることはない、それをさみしさとした着眼点がいいなと思いました。
┗「さみしいだらけ」いいですね。百人一首の「昔はものを思はざりけり」の歌を思い出しました。
┗方言が素朴さや幼さを感じさせて、好きな歌でした。さびしさの音が聞こえないのはいいことなんでしょうか。
┗柘榴の赤赤とした実の「生」の描写と、祖母の告別式という「死」「静」の対比が美しい歌です。
┗「空はなぜいつも私を受け入れる」の詩情がいいですね。ゆうぐれの赤が浮かんでくる歌です。
┗一読してとても惹かれた歌でした。「サーカスが去る」という伝聞は、本当のことなんだろうけどどこか夢のなかの出来事ような、現実味のうすい感じがあります。その感覚に対するある種の「疑わしさ」の鋭い視点を感じます。
┗空が星の数、というところに意外性がありました。「かなしいほどに」の繰り返しが良いです。
┗「車窓から逃げ」という表現が斬新と感じました。前半は自戒なんでしょうか、心苦しい心情が伝わります。
┗月と星がみえるのは夜で、多くの人は夜のほうがさみしいという印象を持っている気がしますが、この歌ではむしろ月や星を友だちとしながら「さみしいはわからない」という。その静かな明るさがいいと思いました。
┗そぞろ書房さんへの歌ととっていいんでしょうかね。弱ってるまま行ける、素敵でぴったりな発想です。
┗映画のワンシーンのような印象的な場面の歌です。さみしさとそれに抗う気持ちが伝わりました。
┗「てのひらで燃やせば~」の部分は、比喩なのかすこし迷いましたが気になる歌でした。サビ猫、の言葉選びが良いです。
┗真珠、月の光、涙とイメージがきれいにまとまっています。誰かとの別れの場面を思い浮かべました。
┗カルピスの白と透明、混ざりきっていない境目が見えるくらいということでしょうか。自分の読みにちょっと自信はないですが、着眼点が面白く気になる歌でした。
┗すごく面白くて印象に残った歌です。履歴書を書いているときの(何やってるんだろう)みたいなちょっと空虚な気持ち、それと「ロバに乗つたことがない」の唐突さが結びつきます。
┗「銀河鉄道の夜」ですね。宇宙の底に吸われる、静かで雄大なさみしさです。
┗夢が「ほころびる」という表現がぴったりで印象に残りました。共感できる歌です。
┗かっこいい上の句です。難解な映画と二度と逢えない人という並列も、独特の感受性を感じて気になる歌でした。
┗さみしさもありますが、希望もあってきれいな歌です。「夕暮れ」の薄明るさが場面と合っているように思います。
┗描写をとりきれなかったのですが、「死にたみ」が色の順で変わっていくという感覚、とても面白いです。
┗おもしろい歌です。その行動は傍からみると不可解で、さみしいようにも思えるのだけど、行動に情熱があってとても印象に残りました。
┗ストレスの元凶だけど、いなくなることに対してある種のさみしさもあるのかな。「珈琲染み」にも憎からず思っているような印象を持ちました。
┗母校だけど、柵越しに見ることしかできないというむなしさ。「キオコキオコ」の擬音に詩情があります。
┗希望のある歌ですが、前半は自分に言い聞かせているような印象も持ちました。どこかで、元気で、という呼びかけが切実です。
┗猫は死んだものがみえる、という話がありますよね。かわいらしいけど、「猫の返事なし」でしんとしたさみしさを感じます。
┗妹か弟から見た兄のことなんでしょうか。兄目線でのさみしさではなく、母親にしっかり甘えている年下子からの視点というのが面白いです。
┗思い出の場所なのか、それとも別れた場所なのか。「あの場所」にいろいろな想像ができる余韻のある歌です。
┗インターネット上の、薄いようでつながっている不思議な縁のようなものを感じます。
┗平凡な言葉がその日から特別な言葉になってしまう。心情が描かれていないので、その心境に想像の余地があります。
┗「挙式の予定はまだない」という言葉に一抹のさみしさを感じながらも、幸せそうな様子をいとおしむ様子が伝わります。
┗飾らない言葉選びに、強い心の空虚さを感じます。共感できる歌です。
┗夢の世界の特有の奇妙さと、切なさがあらわれています。テセウスの船のように、変わってしまった「君」に会ったらどうなってしまうのか気になります。
┗素直な言葉えらびで心情がストレートに伝わります。破調(57577のリズムを大きく外れている)の歌ですが、この歌の場合それが効果的な気がしました。
┗繊細できれいな歌です。木蓮は白や薄桃など、淡い色の印象ですがそれが「縁の色」というのがうつくしい表現と思います。
┗「わかってる」の繰り替えしが切実で、くるしい歌です。「薄めた虚無」の表現が良いです。
┗好きな歌でした。黒猫、には気まぐれなイメージがありますが「寒い日の」という限定がとても面白いです。
┗来週も逢うけど、今ここにあるさみしさ。「背中が背中のまま遠ざかる」の表現から、振り返らずに去っていったという描写以上の想いを感じます。
┗「捲れぬ夜」がおしゃれな表現です。常夜灯への呼びかけもユニークな歌です。
┗閉店してからもきっとしばらく経っているんでしょうか。わかりやすく情景が描写されており、さみしさ、なつかしさを感じます。
┗「痕跡」というものものしい言い方は他人から見ればちょっと大げさにも思えるけど、それだけ君への想いが伝わります。
┗ほかの人への羨望のような気持ちでしょうか。見下ろしているのが人そのものではなく「他人の玄関」というのが面白いです。
┗指先をはなされて、最後の「ここは寝室」という、状況を捉えなおしているような冷静さがものさみしいです。
┗自分自身のからだを「ひとり分の手のひらはただぶら下がる」と客観的にとらえており、すこし奇妙で印象に残りました。「軽く」というところにさみしいだけでなく、身軽さ・自由さも感じます。
┗熱帯魚にも淋しいと死ぬ、という説あるんでしょうか。「私も死なない」には孤独だけど強い意志を感じます。
┗点滴のぽつぽつと落ちる様子は、言われてみれば砂時計のようです。「点滴の速度で過ぎてゆく時間」秀逸な表現です。
┗便箋の濁ったセロテープの、指紋のあと。言われてみればあるなと思いますが、この様子を描写する着眼点がすごく良いと思いました。
┗「神様に許されて」もまだ雨が降り続いている。全体的にほの暗さがあり、示唆的な歌です。
┗「ひだまり」がいなくなった金魚との生活の証のように感じました。さみしいけれど、あたたかさのある歌です。
┗行間にみえる海。海をおもわせる話題なのか、主体の心の中にある海なのか、ふいに心が惹かれる様子が印象的です。
┗素直な言葉えらびで、「わたし」のやるせなく、さみしい気持ちが伝わってきます。
┗『コンタクト』という映画を下敷きにした歌でしょうか。映画は未視聴なのですが、「ペンサコラ」ことばの響きがきれいです。
┗やさしさが伝わってきます。声をかけている相手は自分の子なんでしょうか、それでかつての自分の母を思い出しているという歌と読みました。
┗さびしい、とさみしい、の違いへの着目が面白いです。
┗共感できる歌です。ひらがなで書かれた前半部分に、心細さを感じます。
┗「母」は若いころから倍賞千恵子似と言われていたんでしょうね。母への愛情を感じます。
┗「イヤホンつけた」。決して大げさではない、ささやかな日常の動作の描写が良いです。
┗下の句(57577の77の部分)がないのでこれだと川柳になってしまうのですが、「はしなくも」美しい表現です。
┗SOLDOUTを「だれかに届く春色の風」ととらえる感性が素敵だと思いました。
┗前半から後半のギャップにハッとさせられる歌です。余韻がいつまでも残ります。
┗「あの日々も」の繰り返しが重く、歌の中で効果的にはたらいているように思います。
┗とても好きな歌でした。「消しカスの挟まつてゐる詩集」の何気なさ、そこからの「なんでもない日に逢ひに行きたし」の飛躍は突飛なようにも思えますが、なんとなくわかる気もします。
┗「非実在映画」とても印象的です。その映画と添い遂げたいというのも、主体のかなわない願望や心情のあらわれのようでうつくしく、さみしい歌と思いました。
┗とても共感しました。「ただ光るのみ」光っているからこそ、かつて住んでいた町との隔絶をつよく感じます。
┗「かけまくもかしこき」祝詞のことばなんですね。「きみ」への崇拝に似た強い感情が伝わってきます。すこし大仰な書き出しからの着地点がとても好きです。
┗「桜」のはかなさを感じます。散っている様子ではなく、「散りゆく明日」という未来に想いを馳せているのが印象的ですね。
┗アンニュイな邦画のような印象で好きな歌でした。「亀のあくび」はたしかにさびしさからは最も遠いところにあるようにも思います。
┗面白い歌です。「億」と「老後」が、おそらく主体にとっては途方もないものとして並列されているのがユニークです。
┗さびついた、寂しい、淋しい、音の連なりがきれいです。「さびついた遊覧船」の言葉えらびも良いです。
┗断ったのは、自分なのか相手なのか。わたしは相手なのかなと読みました。主体のふつふつとしたさみしさが「終わった花を黙々と摘む」にあらわれています。
┗「東京」「口笛」のさみしいイメージが印象に残った歌でした。口笛が上手くなるというのは、主体にとっては「嘘が上手くなる」みたいなイメージなんでしょうか。
┗「持っていた奇跡を使い果たした」と思うほどのことがあった夜、カップうどんのあげをすすっている。この主体のいじらしさというか、結構たくましいな…みたいな部分がとても好きな歌です。
┗花のことにも人のことにも、そのどちらにも思える歌です。「春を散らす」良いですね。
┗さみしいですが希望のある歌です。「それでも」の強さが良いです。
┗哀しい歌です。主体のキャラクター像を深めるのに「道玄坂」という地名が効いていると思います。
┗ユニークです。でも、百円ショップという比較的若い人や家族層の利用しそうな店が小さくなるというのは町の衰退を感じさせてたしかに寂しいな。
┗「震えるゆびを袖に隠して」良いです。そこから想像できる、主体の「きみ」へのまなざしが印象に残りました。
┗たぶん実際には海は凍らないし、クラゲも凍らないと思うのだけど、そのように思えるつめたい冬の歌です。静かで幻想的です。
┗めちゃくちゃ身に覚えがあり「ああー…」とつぶやいてしまいました。ここに「さみしさ」がないのは意図的でしょうか、気になります。
┗好きな歌でした。「手を振るね」「風が強いね」の少しのたよりなさ、印象的です。
┗「君」へのストレートな想いが伝わります。「君がいないと夜が明けない」良いフレーズです。
┗主体の心の声でしょうか。二人乗りというか、関係性に後ろめたさのようなものを持ちながらそれを楽しんでいるところのある印象を受けました。
┗祭りのあと、だから時刻は夜でしょうか。「すみれの空」とてもきれいな表現です。
┗「夜が明けたら」は曲名でしょうか。泣いているかもと心配するのが「兄さん」というのが、背景を想像させます。
┗部屋の静寂がそのまま主体の孤独さのような、とてもさみしい歌です。
┗「 にたい」。考えてみれば「〇にたい」という動詞って数少ないですね。ドレンチェリーというのはシロップ漬けされたさくらんぼのことなので、それ自体の花があるわけではないのですが「ドレンチェリーの花」というのも気になる表現です。
┗自転車は雪と共存できない、このフレーズがとても好きでした。錆びたチェーンと春の一見そぐわなさもギャップがあって良いです。
┗「浮かんで消えて」「笑って生きて」心を掴まれました。貴女への深い愛情の歌です。
┗「誘わなかった」にストーリー性がありますね。サボテンにストロングゼロ、主体のキャラクター性があって良いです。
┗「苗字を捨てて」「助手席」から婚姻で苗字のかわった主体と読みました。下の句からは、新しい生活への少しの不安と決意を感じます。
┗「おとなはそれでもなんとかなるから」良いですね。内容と、ひらがなの幼い印象とのギャップが印象的です。
┗「しんしん慣れてしまうこと」擬音の使い方が巧みと思いました。「安いから買う低脂肪乳」の合理性と、さみしさに慣れてゆくことの静かな悲哀が伝わります。
┗「連休の」という限定が印象に残りました。連休だけど、家族で過ごすのではなくデイサービスを利用する方に想いを馳せているのでしょうか。
┗さみしいけれど、とても格好いい歌です。「影ひとつだけ」に潔さを感じます。
┗「椅子のぬくもり」というささやかな日常の描写が良いですね。
┗かわいらしさと強さを感じる歌です。「命短し~」はやっぱりインパクトが強いですね。
┗気になる歌でした。今までは、食べていたものが寂しさだと気づかずにいたのかな。夢を食べる獏のような印象です。
┗「ただいまが染み込んでいく六畳」この表現とても良いです。だれも返す人がいない静寂だから、染み込んでいくんでしょうか。
┗すごく好きな歌です。「LINEせば」の言い回しもユニークでいいし、景もかわいらしくて大好きです。
┗「夕風に身が溶けた気がした」という透明感のあるたとえで孤独感をあらわしており、きれいな歌です。
┗とても気になる歌でした。「ポリタンク」という物の選択もあまり見かけないなと感じたし、「ひときわ赤い」には個人的には少し不穏さを感じました。
┗飾らない言葉選びでストレートに「さみしさ」が伝わります。子供のころに出会った「犬」ってすごく印象に残りますよね。
┗「私」のやるせなさというか、「君」への怒りや悲しみだけではない複雑な感情・愛情が伝わってきます。
┗「何度もきみが消える改札」良いですね。一日のことではなくて、日々のことなのか。それともきみが消えてゆくのを何度も思い出しているのか。
┗夜中のコンビニの明るさがさみしさを引き立てています。「おにぎり一つと帰る」心細いんだけど、かわいらしい主体です。
┗「この風」感情のゆらぎ、みたいなことでしょうか。俯瞰的なようすが、あまり思い出したくないことを思い出してしまうという印象に思えました。
┗蚊に追悼はしない。Tポイントを寄付に使う。小さな違和感や「ズレ」のようなところを切り取る視点が良いと思いました。
┗犠牲を払っても「あなた」の胸にいられるのはたったの五秒、切実な歌です。
┗「靴を揃える」良いですね。「思い出さない」としているところに「思い出さないようにしている」という意思の強さも感じます。
┗「さみしくないと思ってた」なので、主体はもう「おとな」ではあるのだろうけど、幼さのあるひらがなの表現が心細さを感じさせます。
┗「夜が寂しさごと眠っていく」詩情があって良いです。逝去した有名人の年を追い越したときって、独特のさみしさがあります。
┗自分の子への歌ですかね。想像するとすごくかわいいし成長がうれしいのだろうけど、すごくさみしいだろうな…。
┗「未婚でいてよ」なので、伝えている相手は今も未婚ではあるのかな。伝えたいけど伝えられない、という心情の歌と読みました。
┗にぎやかさの象徴のようだった酒瓶が朝に、一人になるとあまりにさみしい。静けさが伝わってきます。
┗きれいな情景の歌です。「ふくらむ孤独」の静かさが良いですね。
┗かわいいけどパンかわいそう……。意外性があって、面白い歌で好きでした。
┗かわいい歌です。「楽しくしています」の報告調が、「君」との距離を感じさせます。
┗あの仕事をずっと勤めるのはフィジカル・メンタルともに誇っていいことです、ショッカー、定年までできるのか……。印象に残る歌です。
┗「淋しいの型紙」すごい表現です。その先の「何回切っても淋しいになる」もよかったです。その型紙がいつか変わることはあるのかな。
┗「お辞儀した」というのがどの場面で、誰にというのがちょっとはっきりとは読めませんでしたが、描きたいことや「母」へのまなざしの優しさが伝わります。
┗心象的なことなのか、実際の感覚なのか迷いますが不思議な印象の歌です。変わっていくことへの恐怖、みたいな印象も持ちました。
┗性愛の歌と読みました。ふたりはひとりにはなりえない、ひとの根本的なさみしさ、という感じがします。
┗水を飲む身体感覚と、流れる結露のようすがリンクしている感覚があり静かで美しい歌です。
┗一読して、好きだなと思った歌です。老いてゆく母に対するさみしさ、それを認めたくない気持ちと、深い愛情を感じます。
┗「かはたれ時」の場面設定が良いですね。明け方の静かな異郷に対してふと思うなじめなさやさみしさが伝わります。
┗「箱庭」が幻想的な雰囲気を呼び起こします。火を見つめている夢はなにかへの希求みたいなイメージでしょうか。
┗「四日市」は工業都市のイメージがあります。「パンクロッカー」との対比が良いです。
┗発想が面白く気になった歌です。たしかに天狗は何を食べているんでしょう、霞……? 「あたたかい鼻さわりたくなる」の幼さというか、心細さからのとっさの行動という感じが良いです。
┗静かできれいな歌です。募集した時期が4月なのもあるのか、「桜」の歌が多いですね。さみしさというか、別れのイメージがあるんですかね。
┗「言の葉だけは死を選ぶ」は、死やそれをほのめかすことを口にするということでしょうか。「ひと」に対してのシニカルな視点を感じます。
┗嗚咽するほどだから、きっとものすごくさみしいんでしょうね。「三女」は末の子どもなのかな。こんな風に泣いてくれる親はあたたかくていいなあと思いました。
┗「福田典子」さんというアナウンサーの方がいるそうで、その方のことなのか、ごく個人的な思い出なのかはわかりませんがこういう風に個人名が出てくるととても目を引きます。
┗なみだを流さないまま、というのはぬいぐるみ自体はなみだを流さないということでしょうか。おそらく経年でくたびれてゆくぬいぐるみに対しての表現として「影を濃くしてゆく」というのがセンシティブで好きな歌でした。
┗どこで区切りがあるのか少し迷う歌でしたが、救いのないようすの前半から「春風のよう」に着地するのは意外性があります。
┗きれいな情景の歌です。「涙落ちても 春は来たれり」響きが良く、かっこいい下の句です。
┗少し不安定なリズムが、どことなくシュールな内容と合っていて気になった歌です。「影を踏むいまのわたし」実感のような、俯瞰のような、不思議な視点です。
┗共感できる歌です。「街」がにぎやかであればあるほど淋しくなる気持ちが伝わります。
┗「符牒」は暗号とか、隠語の意味だから、「均等にケーキを切らない」のが二人のなにかしらの決まりみたいなものだったのかな。
┗「螺旋階段の写真」を送りあう、「きみ」はさりげなくて、けど特別な人だったことが伝わります。「水色」で悲しすぎない爽やかな別れを想いました。
┗小説の書き出しみたいです。いつもさみしいのと、さみしいと感じたことがない人、どちらがさみしいんでしょう。
┗キャッチの人という他人も他人で、いいひとかもわからない人に縋りたくなる。この歌もとても共感できます。
┗うつくしい歌です。さみしさの中に芯の強さがあり好感を持ちました。
┗「最初は他人」だけど、他人ではなくなってしまった人とのあいだでの感情のゆらぎでしょうか。「涙腺の蛇口」が良いです。
┗「米を運んだ」っていう限定的なシチュエーションがとても気になりました。「好きでいられる人」へということでしょうか。華金にこんなことをしている、という明るい自虐みたいなおもしろさも感じます。
┗前半は夢のなかの光景でしょうか。「おはよう世界」の結句が、現実への希望も感じさせて良いです。
┗分かりあえないことへのさみしさとあきらめ、「分子が重なる」というのはふつうではありえないことのたとえでしょうか。
┗「桜祭り」の言葉選びが良いです。にぎやかで、華やかな周囲とひとりの自分の隔絶感があります。
┗「いのちの故郷」ほんとうの自分の故郷のことなのか、比喩のことなのかどちらかははっきりととれなかったのですが、どことなく「死」も思わせる気になる内容でした。
┗好きな歌です。「花の雨」の詩情、幻想性からの「猫に見えたビニール袋」の現実感のギャップがとても良いと思います。
┗着眼点が優しく、面白くてとても好きです。「角食」ということばが詩につかわれているの、はじめて見た気がします。
┗「地面を見てる」で私の心情の重々しさ、行き場がないような気持ちが伝わります。
┗「君」はさみしくなくなったのか、それともさみしい場所にもこれないくらいに落ちてしまっているのか。想像が膨らむ良い歌です。「さみしい」の繰り返しが効果的に感じました。
┗別れの歌だと思うのですが、「春の風」でささやかな希望を感じ爽やかな歌だと思いました。
┗ケーキを毎日食べることと、老衰で死ぬことのギャップにハッとさせられます。淡々としたつぶやきなのが、主体の希死の重い気持ちを濃く感じさせます。
┗「星」と「フリスク」の重なりが良いですね。さみしい夢を見過ぎたか、という表現も好きです。
┗「わたしのいない投稿」はたとえばSNSのタイムラインに書き込まずにじっと見ているということでしょうか。自分がここにいないような空虚な気持ちが伝わります。
┗「オフィーリア」の名前でかなわない恋愛を想起します。「ひとりでに 口遊む」の心の底から漏れてしまったという感じが、強い想いを感じさせます。
┗「私はひとり」の圧倒的な孤独、「子宮をすてて」という率直な表現からは自責のような気持ちも感じました。
┗祖母との思い出がある場所だったんでしょうか。「文房具屋の角のガシャポン」だれもがイメージできる具体性がとてもいいです。
┗印象に残った歌です。ぬいぐるみを側に置く、きっとやさしい気持ちがあるんだけどうまく表現できないというもどかしさを感じました。
┗「埋没」したのは何だったんでしょう。会話の内容は些細で、リアリティがあって、そんなことを話せずに別れてしまった後悔でしょうか。
┗好きな歌です。「ひとつを愛でて」の繰り返し、花束を解くときってたしかに一本一本の花を丁寧に選り分けますよね。それを「祈り」に重ねる感性がとても良いと思います。
┗悲しい歌にも思えるのですが、主体のぶれない強さも感じます。それと同時に、ほんとうは嫌われたくないという強がりのような印象も受けました。
┗「百円を拾う」という些細な動作が良いですね。こういったなにげない行動、情景のなかでふと「どこにも行かんといてな」という強い気持ちになる一瞬、とてもわかります。
┗「鳴く」の漢字をあてているところが気になりました、泣く、ではなくて鳴く。より心からの咆哮という感じがします。
┗「与えるほうになりたかったの」というしずかな独白がかなしく、印象的です。枯れたさぼてんの無情さが、さみしい景を引き立てています。
┗あっけらかんとしたさみしさがあって好きです。じゃじゃん、の少し無理をしている感じも良くて、歌自体に月明かりのような優しさがあります。
┗発想がとても良いと思いました。「老朽化」って考えてみればすごい言葉だな。
┗好きな歌でした。しずかに語りかける口調にやるせなさや、相手に対するあきらめなどの色々な心情を感じます。
┗しずかな親愛の薄れ、のような印象で読みました。「淋しさをうつす権利」、権利というと大仰な感じがするけど感情を自由に共有できる関係性、みたいなイメージでしょうか。
┗すごく気になる歌です。原画展で泣く人はたまにいそうだけど、「さみしい時の泣き方」で泣いているという。もしかすると、もういない画家の原画展なんだろうかとか、色々背景を想像できます。
┗虚無の気持ちのなかにいるだけでなく、さらに空き瓶で世界から隔絶されている。孤独な夜のさみしさ、もどかしさを感じます。
┗かなり派手な破調の歌で、ただ内容を読むにこの短歌のリズムを外れた調子は狙い通りという気がします。内容とペンネームもマッチしています。
┗「桃太郎」のモチーフの歌ですが、その空虚な雰囲気がとても印象に残りました。「桃からは何も生まれず」なので、桃が流れてくるには来たんでしょうね。けどその桃からは何も生まれなかったし、元々の昔話では老夫婦の二人でやっていた洗濯と芝刈りを(おそらく)ひとりでやっている様子もすこしのアイロニーを感じて好きでした。。
┗「さみしさの輪郭を聴く」という表現が秀逸です。「君」のキャラクター性や、主体の君への親愛も伝わってきます。
┗チーズと青。比喩なのか、探すものとしてなにか下敷きになっているものがあるのかはっきりとわからなかったのですが、「みんなって何を探してるんだろ」に、満たされているはずなのに感じる疎外感のようなさみしさを感じました。
┗「扉越しに聞く」のは昔好んでいたものへの執着の薄れなのか、別れることへの少しのつらさがあるからなのか。哀愁のある歌だと思いました。
┗「わたくしを知る街」が良いです。街からの視点が入っていることで、本当にそこに馴染んで生活をしていた主体のやるせなさを強く感じます。
┗「同期」って職場のつきあいではあるけど、特別感があり、彼らに覚えていてもらいたかったという主体の悲しみが伝わってきます。
┗「秋風の亜種」という表現、おもしろいです。募集した季節柄なのか、春の歌が多いように思ったのですがこちらの歌は「秋」の季節を描いていて、「さみしさ」への強いイメージがあるのだろうなと感じました。
┗小さき背、はお子さんの背中でしょうか。「小さき」からはさみしさや、子供へのいとおしさが伝わってきます。
┗「青」なんの青だろう。憎いと言っているのでその相手の身に着けている、たとえば制服とかのイメージでしょうか。そのものが描かれているよりも、想像の余地があるなと思いました。
┗「眠るの夜」なんだか気になる表現でした。海に沈む夢はおそろしいように思いますが、主体はそれをおだやかに受け入れている様子もあります。
┗「あなた」に触れたいけれど、関係性を壊したくなくて躊躇しているイメージでしょうか。感情の機微が伝わってきます。
┗「かまいません」の字足らずが、きっぱりとした印象を生んでいます。心音とシンクを打つ音のリンクも良いですね。
┗「生きるとは知る」かつては自分も子どもだったはずだけど、大人になりあらためて生きるということを教えられる。あたたかくて、良い歌と思いました。
┗老いてゆく「ばあちゃん」への愛情が伝ってきます。「舞い上がる準備」という表現が、いつかくる別れを受け入れようとしている様子に思えました。
┗心細い夢をみて嗚咽するほど泣いてしまうのは、そのときを想像してしまうほど夢がリアルだったからなんでしょうか。
┗肩組み酒を飲む様子と「伽藍の部屋」のギャップに意外性があります。
┗好きな歌です。「夕のふち」という時間の表し方が良いですし、だれかに感想を共有することを「心分けあう」というのも秀逸な表現と思いました。
┗無知でしらなかったのですが、こども用のICカードだとピヨピヨ音がするんですね。「どの鳥も止まらないなで肩」すこしくたびれた様子の描写に惹かれます。
┗「蒲鉾のように」おもしろい比喩です。「夜行バス」という限定も気になるものがあります。
┗「桜の破片」あまり聞かない表現ですが、言葉にするどさがあって良いと思いました。
┗一度読んだあと、もう一度最初から読み直してしまうような、余韻のある歌です。おそらく主体の想像した「祖父」のシーンはのどかで、祖父の人間性や主体との関係が伝わります。
┗「灯された熱の記憶」もう灯ることのない電球とか、そういったもののイメージでしょうか。「独りころころ」が空虚でさみしいです。
┗雨は降ってきた時点でもともとひとつぶですが、それが「ひとつぶになる」と改めて認識している感覚がおもしろいと思いました。
┗「冷蔵庫」の選択が良いと思いました。わずかな唸りや、ぼうとした光と胸の「空白」が呼応しています。
┗主体の切迫した気持ちが伝わります。「あなた」は個人的なつきあいのある人ではなく、たとえば歌手だとか配信の声だとかそういうイメージが浮かびました。
┗病院の景だと読みました。「彼方を区切る」に隣の人への心理的な距離、閉塞感を感じます。
┗抜けた炭酸は決して元どおりにはならない。それを飲み干す行為に、しずかな覚悟やあきらめを感じました。
┗シンプルな言葉選びで伝えたい内容がまっすぐに伝わります。
┗少し不思議な歌です。「二周目」は本当に二回目の人生なのか、人生のなかでのリスタートみたいな意味なんでしょうか。
┗さみしいけれど、やさしい視点の歌です。「捨て猫」に自分じしんを重ねているような印象を受けました。
┗スケールが大きく、うつくしい歌です。さびしさの「風紋」へのたとえがぴったりと合っていて秀逸です。
┗匂い立つ「ペトリコール」で「無」を感じる、おもしろい感覚の歌と思いました。
┗「怒鳴らない母」、変わってしまった、あるいはもしかするともういない母に対してのさびしい気持ち。「埋まらない月」が感傷そのもののようで良いです。
┗好きな歌でした。廃校になってもただそこに立ち続けている消火器に「正しさ」を見出す主体の感性に好感を持ちます。
┗やさしさとスープは近いイメージですが、やさしさが「さみしさをとかしたスープ」というのが面白いなと思いました。「淡い明日のわたし」の不確かさが印象に残ります。
┗かつては大きいペットボトルに口をつけたら叱ってくれる人が居たんでしょうね。その人がいなくなってもそれを守っている主体のキャラクター性が好きです。
┗「そうじゃなかった」の淡々とした独白に強いむなしさ、やるせなさを感じます。
┗ひとりで生きてゆくことの強さ、のような印象を受けました。芯のある歌です。
┗「傷付いたふりのふり」だから、本当は傷付いている。「花を煮詰めたように」はしずかなたとえだけど、強く情念のこもったさみしさを感じます。
┗青々とした葉の時期は、もう葉桜とはいわれない。「葉桜」の一瞬のうつくしさ、一瞬で終わってしまうことへの感傷を感じます。
┗鈴と砂漠。気になる取り合わせの歌でした。「鈴になるときは誰にも言わない」おごそかで孤独な決意のように思えます。
┗「今日だけ下を向く」どんな気持ちでしょうか。口調や内容からは同調に抗う主体の少し孤独な気持ちを感じます。
┗飾らない言葉で「あなた」への様々な気持ちがストレートに伝わります。
┗「一滴の墨」の視覚的なイメージがあざやかに浮かびます。幸せを求められない相手への愛、背景を想像させます。
┗「うすいあかるい」にあたらしくはじまる日への希望を感じます。
┗「SNSで生きてる」まるでその中でだけ生きているように感じられる、現実のやるせなさが素直に伝わってきます。
┗「君」と「アパート」の青春性、「ひとりで見上げても変だった」という着地のおかしみとさみしさ。とても好きな歌です。
┗わかっていても、それを信じずにはいられない(けど実際はないとわかっている)、主体の葛藤を強く感じます。
┗「問いの色」という表現に情緒があって良いです。
┗「青くなりすぎた木々」桜のことだけではなく、ひとの人生の過ぎた時期へのかなしさ、のような印象を受けました。
┗友達とは言えないかもしれないけれどたしかにつながっている、考えみればSNSは不思議なつながりです。
┗砂浜の「布団一式」、意外な景ですが圧倒的なさびしさ・人恋しさを感じました。
┗「七つ数えて息つぎをする」あきらめのようなどうしようもない感情を感じます。「深海魚」と「くらげ」は比喩なのかなと読みました。
┗「ニキビ面」から若者を想像します。「恋知らぬ母」はそのころの母ではなく現在の母のことなのでしょうが、その母の前で恋の歌を諳んじるという、すこし屈折した母への感情を感じます。
┗閉店前のスーパー等の食品売り場の景でしょうか。「ほたるのひかり」に終末的な雰囲気を感じます。
┗「春に残せる留守電がない」気にかかる表現でした。前半の語りかけと併せて、うまく「あなた」にかける言葉がみつからない、という葛藤の歌でもあるのかな。
┗独り鳴く「ウグイス」はさみしいようですが、美しい情景の歌です。
┗「背泳ぎの手」の表現が良いです。さみしい顔に対して、真正直にはなぐさめられない主体の人間性が魅力的です。
┗伝えたい感情がストレートに伝わるいい歌と思いました。(私も行かなかった卒業式があり、個人的にめちゃくちゃ共感しました。)
┗かわいらしい歌です。「雨」に主体の気持ちの落ち込みを感じます。
┗「IH」に「シチュー」、祖母のリアルなキャラクター性が伝わってきます。描写が細かいので、それが「いまはなき」というのがより寂しく感じさせます。
┗いい曲ですよね。『ラブホテル』は夏の歌なんですけど、曲と自分とがリンクして感じる少しの高揚感と、そのあとの虚しさやさみしさを想いました。
┗「腹が鳴っても鳥は寄らない」印象的なフレーズです。孤高な印象の歌です。
┗格好いい歌です。結句「骨も拾うな」には潔さとさみしさを強く感じます。
┗正しく意味がとれている自身はないのですが、「祉」大きな力に対しての自分の姿を再認識しているような、内省の歌と読みました。
┗重く、苦しい歌です。ひらがなでの表記が、まだ混乱のさなかにあるひとの心情をあらわしているように思いました。
┗「光」が具体的になにかまでは取りきれなかったのですが、駅の電光掲示板などを思い浮かべました。主体のどこにもいけない気持ちのやるせなさが伝わります。
┗「蕾に戻るだけ」という発想が素敵です。じっさいは花はおそらく萎れてしまっているのだけど、そう信じたいという切なさが伝わります。
┗「胸ポケットから」としているところから煙草のHOPEのことでしょうか。英単語hopeの本来の意味を含ませた巧みな歌です。「野球ボールを拾うとき」に主体の背景にあるストーリーを感じます。
┗「シロツメクサ」の言葉えらびが良いと思いました。童心や寂しさのイメージと親和性がある花です。
┗「たべるために すてるということ」ストレートな下の句が印象的です。その行動を批判的ではなく、淡々と描写しているところに好感を持ちました。
┗「ゆき」への愛情を感じます。ルビが振られていることが、愛猫への感情をより印象的にしていると思いました。
┗「シロナガスクジラの声」が特定のものの比喩なのか、そこまでは取りきれなかったのですが、インターネットのなかでもとりわけwikiという情報の大海のようなサイトとクジラの声というのが不思議と響きあっています。
┗月の光とコンビニの人工的な明るさの対比がとても良いです。
┗あえて、自由律(短歌の本来のリズムを大きく崩した調子)としているのか迷いますが、気になる内容です。
┗淡々とした行動の羅列から、書かれた情報以上の感情を感じます。「疲れない映画」に主体のキャラクター性が出ていて良いです。
┗「パンダヒーロー」でしかも嘘つき、善悪どちらか市井のひとには曖昧なんでしょうね、「ヒーロー」の悲哀を感じます。かっこいい余韻のある歌です。
┗ユーモアがあってかわいらしいのだけど、「日没の後」というところにすこしの不穏さも感じます。いい意味での「怪人」というか…。すごく好きな歌です。
┗「街の浮くまで」斬新な表現ですが、長く、つよい雨の様子が伝わります。「活字の群れ」と雨も親和性がありきれいな一首です。
┗「あなた」の様子から、言葉や態度以上の強い感情が想像できる歌です。その強い感情を「燃え上がる空」とたとえた表現が素晴らしいと思いました。
┗薄れてゆく卒塔婆の文字と、祖母の声を忘れてゆくことのイメージの重なり。静かで、きれいな歌です。
┗「文字にきもちののらない日々」良いですね。そのような日々の対義語のような「海」、説得力のある対比だと感じました。
┗「火を見るために」という動機からは、いろいろな心境が想像できます。シャープで、印象に残った歌でした。
┗動物の心臓である「ハツ」を焼くのが示唆的です。それが、自分を少し卑下するひとへのじれったさのようにも、すこしの憎しみに近い気持ちのようにも感じられました。
┗「プールサイド」言葉えらびが良いなと思いました。プールの塩素の独特なにおいでしょうか、さみしさやなつかしさと親和性があります。
┗さみしさと、執念のような強い気持ちを感じます。強い想いだけど「通り雨」というのが控えめで、キャラクター性を感じます。
┗「丁寧に閉じた」あとだから、きっともう内側をみることはないけどいつまでも想像してしまう。繊細な感受性に惹かれました。
┗たしかに、都会に植えられた樹木はだれもが目にしているけどまじまじと気に留めてみる人は少なそうです。白い木蓮の花の印象もさみしさを引き立てます。
┗「躙るも消えぬ」に懸命に忘れようとしても忘れられない強い想いを感じます。そのような想いのたとえとしての「椿」があざやかです。
◆さいごに
お読みいただきありがとうございました。
一言のコメントはほんとうに一言になってしまいましたが、すべて真摯な気持ちで書かせていただきました。
「ひいらぎの窓」は今回で最終回となります。思っていたよりもたくさんの方に読んでいただけて、紹介などもしていただいてとてもうれしく思います。知らない短歌や歌集に出会える一助になっていたらいいなあ……。
また機会がありましたら、お目に書かれたら幸いです。どなたさまも、よい短歌ライフを。