【第1話】余命5ヶ月、僕は彼女の死にたい理由を探す
○教室
ざわざわした教室の中、体育祭実行委員が前に出る。
実行委員「今日はリレーの順番を決めます」
女子は静かになるが、男子はざわざわ。
女子A「ちょっと、静かにしなよ」
女子B「りぃちゃんが話してるじゃん」
男子A「わりぃわりぃ」
実行委員「どうやって決めますか? 何か案がある人ー?」
教室が静まり返る。
祐希(僕には関係のないことだ)
男子B「あのー、もう下校時刻なんで部活行ってもいいですか?」
男子C「それなー」
女子C「りぃちゃん、明日決めればいいんじゃない?」
実行委員「そう、だね」
男子B「よっしゃ! 帰ろうぜ」
みんなが帰る準備を始める。
取り残された祐希と実行委員だけが教室に残る形に。
実行委員「ごめん、原井くん」
「みんなで原井くんの分まで頑張るから!」
祐希「ありがとう。応援してるよ」
祐希(本当は)
(運動神経悪い奴が1人減ったくらいにしか思ってないくせに)
(どうせみんな嘘だらけだ)
○屋上、夕方。
祐希、ドアを開けて屋上に出る。
そこには、真っ赤な夕焼けがあった。
祐希(ここは僕だけの場所)
祐希「えっ……?」
祐希の視線の先には、夕焼けの中、身を乗り出して自殺しようとするすみれ。
祐希(自殺、だよね……?)
(しかも、同じクラスの子だ。岡崎さんだっけ?)
祐希「ダメだよ! 自殺しちゃ」
祐希(たぶん、僕が言えばやめる)
(クラスで中心的な役割を担ってる人だから、あのことを知らないはずが ない)
すみれは祐希の方を向く。
すみれ「死んじゃダメって言うのなら、私の死にたい理由を当ててみてよ」
祐希「……」
祐希(えっ……どういうこと?)
すみれ「それじゃ、私は帰るから」
と、揃えていた靴を履き直す。
祐希「えっ、ちょっと待ってよ」
すみれ「何?」
と、もう1度祐希の方を振り返る。
祐希「どうやって探すの?」
すみれ「これはクイズなんだから、自分で考えてよ」
「まぁでも、ヒントくらいあげようか」
「毎日、ここに来て。ひとつずつヒントを出してあげるから」
と、また祐希の横を通り過ぎようとする。
ぽかんと口を開ける祐希。
すみれ「今日のヒントは、『私は原井くんのことがうらやましい』だよ」
祐希(僕のことが、うらやましい?)
祐希「いつまで、とかは?」
すみれ「期間? 5ヶ月とかでいいんじゃない」
と、横をすり抜けて帰っていく。
祐希(5ヶ月……)
(やっぱり岡崎さんはあのことを知っている)
(僕の余命が、あと5ヶ月だということを……)