動けなくなっちゃってさ
都内ラジオブース。中年の男性タレント、中年の男性作家が向かい合わせで座っている。作家は相槌も担っているから、2人ともマイクが入っている。男性タレントが口を開く。
タ「ほら僕、前別れたでしょ?あー、知らない方に一応言うと、先月にね、離婚をしまして。これが見事なね、不和離婚。」
作「wwww」
タ「おい、笑いすぎだって笑笑」
タ「まあそれで、妻はもう家を出てるので1人でこう、広い部屋に住んでまして。子供とかもいなかったので、だいぶすんなりといったんだよね。」
作「すんなり?」
タ「ん?すんなり、あー、ほらお互いもういい歳した大人なので、手続きとかね、うん、すんなり。まあ、大人になるって、感情をおもてに出せなくなるってことじゃないですか。」
作「えぇ?笑笑」
タ「違う?笑 いいの、俺はね、そう思うのよー。暗すぎるかな、まあたしかに悲しすぎる話ではあるんだけどさ、なんか不思議とそんなに、俺自身は悲しくないっていうかねー。いや、なんか実感が湧かないって感じでもないのね。実感は湧いているが、それでもなお、悲しくない感じがするんだよね。不思議だなーって、俺そんなに薄情だったかなーって思ってたんだけど、それって、シラフの時だけだなって気づいたって話をします、これから。うん、ここまでアイドリング。」
作「長www」
タ「いいだろ別に笑 俺のラジオなんだよ」
作「はい笑」
タ「昨日家で、まあ酒を飲んでまして、あのなんか生成っていうんだっけ、アイボリーのさ、四角いコースター?があってね、それに飲んでた焼酎のグラスを置いた瞬間にこうー、まあ動けなくなっちゃってさ。だってさ、40超えたおっさんが、1人で家で飲んでるのによ?コースターを使ってるわけ。」
作家、聞いている。
タ「しかも生成、丁寧な色だろ、あれ。これなんでかっていうと、妻がね、あー元妻ね、元妻がやれってずっと言ってきてて、なんか2人で住む時に、かっこつけて高い木の机を買ったんですよ、それが水がこうかかると、あんまよくないみたいで、でも俺気にしないし、ずっとやってなくて、毎回怒られてみたいな。うん。それがこうさ、置いた瞬間、瞬間にブワーーってなっちゃって、酔ってるから、酔ってるからね。動けなくなっちゃって。あーーこんなこと本当にあるんだなって、そうやって思ったんだよね。えー、そうやって、思ったんだよねぇっていう話。オチなくてすみません、じゃあ曲行きます、グッナイ小形で「千年」。」