「”心のバリアフリー”をスタイリッシュに実現する!」宇賀なつみ「テンカイズ」2020年12月23日 #テンカイズ
「バリアフリー」。この言葉は、高齢化時代に備えるため、または障がいを持つ人々の社会進出を促すため、日本で1980年代から積極的に叫ばれてきました。
2000年代にはバリアフリーに関する様々な法律も制定され、階段の撤去や車椅子の設置などが行われていきました。
しかし、本当に障がい者を持つ人々が、生き生きと暮らせる社会は実現できているのでしょうか?
ということで、今夜のゲストをご紹介します。NPO法人ピープルデザイン研究所・ディレクターの田中真宏さんです。
田中 真宏さん(NPO法人ピープルデザイン研究所 ディレクター/有限会社ネクスタイドエボリューション 執行役員)
文化服装学院卒業後、スノーボードインストラクター、アパレルの販売員・企画・デザインを経て、2009年にネクスタイド・エヴォリューション社に入社。2012年、NPO法人ピープルデザイン研究所設立と共に運営メンバーに。現在はディレクターとして、超福祉展などのイベントや、障害者の就労体験プロジェクトなどの企画から運営までを担っている。
5つのマイノリティーと4つの領域
宇賀: NPO 法人ピープルデザイン研究所とは何ですか?
田中:2012年に渋谷で設立した NPO 法人です。一言で言うと「ダイバーシティのまち作り」。
ダイバーシティを広める活動は、2002年から行ってきましたが、メッセージの広め方に限界を感じ、方向転換しました。
それが街をメディアに、ダイバーシティを新しいカルチャーとして発信していくもので、渋谷を起点に発信活動を始めました。
宇賀:心のバリアフリーというのを掲げて活動されているとそうですね。
田中:「心のバリアフリーをクリエイティブに実現していく」のが私達が提唱しているピープルデザインという言葉の概念です。
ピープルデザインとは、スポーツとかエンターテイメントとか、ワクワクするようなコンテンツの力を借りて、心のバリアフリーを壊していく動きなんです。
野村:例えば具体的にどういう取り組みがあるんですか?
田中:取り組みでいうと5つのマイノリティを設定しています。
「障がい者」「認知症含む高齢者の方」「LGBTQ」「子育て中のお父さんお母さん」「外国人」に対しての課題解決策を提案をさらに4つの領域でやっています。この4つの領域は「もの作り」、イベントを行う「こと作り」、研修とか授業を行う「人作り」最後は「仕事作り」です。
この5つのマイノリティーと4つの領域を掛け合わせてテーマプロジェクトにしたりとかイベント活動を行っています。
宇賀:なるほど。そもそもこのピープルデザイン研究所は、どういった経緯で設立されたのですか?
田中:弊社代表の次男が脳性麻痺で生まれたことがきっかけです。
日本の福祉って結構暗くて、健常者とは学校でも完全に分けられていると感じていたんです。
本当に必要なことは、資産財産を残すよりも社会の世の中の考え方とか空気感自体を変えていくことなんじゃないかと。サラリーマンから独立して2002年からプロジェクトを始めました。
一番大きいイベントっていうのは「超福祉展」というもので。毎年渋谷でやっています。
正式タイトルは、「2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展」ですね。
2014年から始め、2020年というタイトル通り、今年で最後でした。
5つのマイノリティの方々×こと作りということで、渋谷のヒカリエで開催しました。
例えば、電動車いすを「かっこいい乗り物」だとアピールし、渋谷の街中をツアーしたり福祉のジャンルに囚われない、色々なエンターテイメントの方々とかを呼んでシンポジウムを行ったり、体験イベントスポーツと掛け合わせるイベントを行ったりしています。
野村:見た目から入るって感じですか。
田中:そうですね。入り口は、「かっこいい、やばい」みたいなところから入り「実は福祉機器だったんだ」と。今の福祉の世界、福祉機器とかを知ってもらうそんなイベントを行っています。
野村:福祉というと、自分からは遠いと思ってる方が多い印象があります。なので「なんか面白そうなことやってるぞ」とかが大切ですよね。多くの人の興味を引きつけるのが重要だと。
田中:そうですね。「なんかいいね」の数を増やすのが大事かなと思ってます。あとは、渋谷でやることもかっこよさでは意味があると思っています。
コミュニケーションチャームで助けたいという意思表示
野村:先程の4つのマイノリティーの人たちは、相談できる相手が、今はあまりなくて、やっぱり困っているということが分かりますね。
田中:そうですね。かなり多いと思います。10代の自殺者とかが LGBT
Qの中には多いと言われています。
頼る場や自分のそういう困りごとを共有する場は、大変重要ですよね。
宇賀:困りごとで言うと、今日、コミュニケーションチャームというものを持ってきて頂いたと。
田中:はい。私達が NPO 設立当時の2011年ぐらいから作り始めているものです。
そうするとコミュニティーチャームのマタニティマークすらなかった時代でマークに注目しました。ちなみにあれは、「妊婦さん」だと分かると、それを見た方が、手助けしやすいっていうもの。それとは逆で、つけた人は「私、困った人いたら
手助けしますよ」という意思を持った人がコミュニケーションチャンスを目的に作っています。
街中で困った人を見たら、その人に声をかけて「何かお手伝いすることありませんか」ということで、コミュニケーションを取ってもらう一歩目になるようなアイテムになればいいなと。
野村:そうするとコミュニケーションチャームの認知度を高めていかなきゃ
ないですよね。
田中:おっしゃる通りで、最初はこれをどう認知させるかに力をいれていたんです。しかし、だんだん広まっていくうちに、
これをつけた人が認知されて押されてまいが、いい効果があると。
「街中で困った人を見つけるようになった」とか、あと「やっぱり席譲ろうかな寝たふりしようかな」とした時に「チャームつけているし、ちょっと勇気を出して譲らなきゃ」と。背中を押してくれるようなアイテムになったとのお声が多かったんです。
なので、認知を広めるのもそうですが、こういうお話をしてつけてもらうっていうことに一番意義があるかなと思っています。
緩衝材にNPOを使って欲しい
野村:福祉関連のご相談の相手に、ピープルデザイン研究所がこれからなっていくことになりそうですね。
田中:そうですね。本当にまさにお話今結構多く頂いているところで、企業さんも官公庁も、「何をしたらいいのか分からない」「何かあったらどうしよう」との声が多いんです。
そこで私達が間に入ることによって緩衝材になったりの役割を NPO として果たしているのかなと思っています。
宇賀:最後に田中さんの今後の展開を教えてください。
田中:教育の方が一つ大事なことかなと思っています。考え方とか想いをこれから未来を作っていく人たちに広めたり、私たちがその活動をサポートすることが大事だなと思っているんです。
また、やっぱり NPO の価値を日本の中で上げていかなきゃいけないなととも思っています。ある意味専門性を持ったプロフェッショナルであるべきだと思うし、何かビジネス感覚をもっと持った NPO が生まれるべきだと思う。
次世代の人たちに引き継いでいきたいなと考えているところです。
宇賀:ということで、今夜のゲストは、 NPO 法人ピープルデザイン研究所ディレクターの田中真宏さんでした!ありがとうございました。
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