女子テニス界はやっぱり日替わり女王時代になってしまうのかを考察してみる。
2021年全米女子オープンテニス、全く注目されていなかった優勝者のエマ・ラドゥカヌと準優勝者のレイラ・フェルナンデス2人の10代によって女子テニス界はまたもや混沌としてしまった。
今回2人のパフォーマンスがあまりにも素晴らしすぎた為今後に期待する声が大きすぎるのはわかるが、あまりにも時期尚早であることを自分は釘ををさしておきたい気分である。そして準優勝者のレイラ・フェルナンデスについてはまた優勝するチャンスがくるからとはいうがそんなにすぐ簡単にくることもないことを言っておきたい。すぐにはこないし何よりこれが最初で最後のチャンスだったということだってあり得るのだ。悲観的な見方かもしれないがこれは女子テニスの歴史をみてきて思うことなのだから仕方がない。
考えてみてほしい。全米の前までは誰からも注目されなかったといっていい2人がグランドスラムの決勝を戦っているのである。2人とも全米前の8月の結果はというと、全米での快進撃を予感させるパフォーマンスをみせていたかといえばそうではない。だからこの2人が恒常的なパフォーマンスがだせるのかどうかに自分は懐疑的になるのは仕方がないのだ。
いつもは結論を先に言うのでここまでなってしまったが、結局日替わり女王時代はどうしたって避けられそうにないのは、今回の全米オープンを見て感じたことでもある。ちょっとしたフィジカルパフォーマンスの出来で結果が変わるのが現在の女子テニス界であることをまたもや証明してしまったとも言える。
ここからはもし日替わり女王時代を終わらせるとしたらどのようなことが起きたから終わるのかということを考察していくが、結論からいえばその可能性があるプレイヤーは大坂なおみである。
この全米でフェルナンデスにセレナばりの見苦しさ全開で負けたのになぜと思っている人もいるのかもしれないが、大坂なおみは全豪、全米を2回づつ優勝しているのである。特に2021年の全豪での優勝は覚醒したムグルサを倒しての優勝だけにハードコートでは完全に頭ひとつ抜きんでた存在となった。つまり現在上限値が一番高いプレイヤーが大坂なおみなのである。
その一方で負ける原因も簡単なものであり、ほぼメンタルが絡んでいるのである。2021年最高のスタートをきったものの全仏では前代未聞の記者会見拒否問題を引き起こし、流れを自らぶっち切ったのである。大坂なおみのメンタルについては現在プリスコバのコーチをしているサーシャ・バジンによって改善し始め、それがパフォーマンスの安定化につながったのである。ただサーシャコーチでは技術の上澄みが見込めないこともあり契約解除をすることになるわけだが、その時に大坂なおみはメンタル問題を軽視したことが現在苦しんでいることと無関係ではないように思う。
今後も大坂なおみはメンタル問題が一番の鍵になっていくのは間違いないが、メンタルに問題がでなければ優勝請負人と言われた最高レベルのコーチであるフィセッテとシャラポワに全仏優勝をもたらせて中村豊フィジカルトレーナという最高の環境が彼女にはあるのである。つまり全豪、全米で優勝を積み重ねていけるということである。しかし不安定なため絶対的な女王になることはないだろう。全仏優勝の鍵は中村豊さんがいるとしてウィンブルドンは全く未知数である。ただひとつの可能性を除いて。
さてここでただひとつの可能性について申しあげるが、それはセレナ・ウィリアムズが引退して大坂なおみのコーチになった場合についてである。
これこそが大坂なおみが絶対女王になる条件であり、逆にいえばセレナがコーチにでもならない限りメンタル問題は引退まで付き合うことになるのは想像に難くない。とはいえあまりにもあり得ない話であるだけにこんな可能性なんて1%以下の話なんだから考えるだけ無駄じゃないかということもわかるが、2021年記者会見拒否問題の時セレナの見解が大坂なおみに好意的だったことが、わずかながらに可能性が2~3%に高まったのではないかと見ている。そもそも全豪でのセレナ戦の後での大坂なおみのセレナへの気遣いもひょっとしたらポイントが高かったのかと思っている。
ここでセレナ・ウィリアムズと大坂なおみだけがもつ共通点を紹介したい。それはWTAポイントとWTAランキングを一切気にしないことにできるということである。これこそがグランドスラムで優勝する可能性を上げることができる理由でもある。現在の女子テニス界は日替わり女王時代であるからこそ、WTAシードのもつ意味というのがそこまで大きくない。全米優勝したラドゥカヌが全米予選からの優勝となると、正直出場権くらいなのではとも思えてくる。プリスコバやスビトリナが未だグランドスラムを優勝できていない理由でもあり、ツアーで好調な時こそグランドスラムで振るわないバーティー。優勝したウィンブルドンは芝シーズン休んでフレッシュな状態で挑めたことが要因になるだろう。デメリットは試合勘の欠如が懸念されるが、ツアーをグランドスラムへの調整場として100%出さないことがグランドスラムでのベストパフォーマンスにつながることである。
とはいえ例外もある、それは全仏でのクレイチコバと今回の全米でのラドゥカヌである。クレイチコバは全仏前の大会を優勝し休みなく全仏を優勝した。つまり3週間好調を維持し続けたのである。これが例外であり、クレイチコバでのキャリア唯一のものになるし、もし次があるとしても数年後になるのは想像に難くないとんでもなく凄いことなのである。
そしてラドゥカヌはもっともっととんでもなく凄いことをやってのけている。全米では予選からすべてストレート勝利であるわけだが、予選前からさかのぼって休みなく2大会でているのである。全米で10試合。その前のシカゴで5試合、シカゴの前の下部ツアーで5試合と4週間で20試合こなしたのである。正直テニス人生一回こっきりの奇跡レベルの偉業である。身体が強いとかいうレベルの話ではないと思う。だからこそラドゥカヌの今後は慎重に見るべきである。
さて最後にセレナが大坂なおみのコーチになったときの対抗馬の話でもしたいのだが悲観的になってしまうことをお許しいただきたい。
それはヒンギスがベンチッチのコーチになることなのだが、これがまたセレナと大坂なおみ以上にあり得ないことを考察して終わりにしたい。以前にもベンチッチの父親が大きな障害になっていることはお話したが、東京五輪の金メダルを獲得したことによって、このままの勢いでグランドスラムを優勝できるだろうという考えになるのは至極当然のことのように思える。
確かに東京五輪女子テニスの金メダルは偉業であることには変わりない。ただ東京五輪のテニスについてはテニスの技術やメンタルを競ったというよりも東京の酷暑という環境にいかに適応できたかの勝負だったのである。そこでベンチッチは恋人でもあるフィジカルトレーナーによく鍛えられてあの環境に一番耐えられたすごいプレイヤーであることを証明した。だからこそグランドスラムに優勝するための能力とはほぼ関係ないという見方もできるしそこに気がつかなければならない。そこでベンチッチの父親が気がづけるのかといえば、気がつかないだろうと予想できるのは現在までのベンチッチの父親を見ていれば当然の考えになると確信している。
一言で言えば東京五輪の金メダル獲得こそ、ベンチッチとヒンギスのコンビは幻に終わったと言い切ってもいいくらいである。とはいえ0%という確率はあり得ないから敢えて確率でいうと0.01%以下といったところか。
ベンチッチは大坂なおみがライジング対策できないからこそ優位でいられるがセレナはもとより現在データ分析のスペシャリストでもあるフィセッテなら、ベンチッチのライジング対策を講じ枯れて丸裸のされているわけである。大坂なおみはもとよりライジング対策された相手に対してどのように対策していくかが今後グランドスラムを優勝する一番の鍵になると思う。そして自分はヒンギス以外それができるコーチがほかに誰がいるのかわからない。少なくとも現在の体制では難しいだろう。
女子テニス界の今後、ラドゥカヌ同様ジュニア世代から一気に覚醒しどんどん日替わり女王時代の拍車がかかり続けるか、大坂なおみの絶対女王時代がくるのか。当然前者である確率が圧倒的に高いし、そっちのほうが面白いわけだが、大坂なおみの絶対女王時代が来たとしても自分は準備しておかないといけないのかと思い急遽書くことと致しました。
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