運動を切り刻むボーカロイド〜実験的600字エッセイ〜
大学受験の直前期、僕は毎朝走っていた。朝6時に目を覚ます。歯を磨き、顔を洗う。そして靴紐をむすぶ。
12月、早朝の東京。玄関を出ると、いまにも顔の皮膚に切り傷ができそうな鋭い寒さ。
大気が乾燥しているために日光は散乱せず、視界を覆い尽くすほどに眩しい。
僕はイヤホンをつけ、ボーカロイドの曲を流し、カツ丼屋を通り過ぎるのを合図に走り始める。
ボーカロイドの曲はbpm、つまり曲のテンポが速い。
一説によれば、ボカロのテンポが速いのは、生の歌声の持つ声の震えや音程の揺らぎといった