ソース焼きそばの謎 塩崎省吾


毎日本を読む1/5
ソース焼きそばの謎
塩崎省吾

ソース焼きそばとニューヨークの夢、それから


2000年頃、私は「ソース焼きそばでニューヨークに行こう」と真剣に考えていた。きっかけは、好きだったバンドMR.BIGのメンバーがお好み焼きや焼きそばを好んでいるという話。それに、ニューヨークの日本人街にはたこ焼き屋があるという噂も後押しした。ただそれだけの理由だ。それでも、機材を揃え、試作を重ね、本気で計画を進めていた。

しかし、その夢は2001年9月11日に起きた同時多発テロで立ち消えた。結局ニューヨークには行かなかったが、焼きそば作りへの情熱は変わらなかった。私は、もともとソース焼きそばに深い愛着を持つ人間だ。ペヤングのまるか食品で働きたいと夢見たこともあるほどで、お好み焼き屋に行くと、締めの焼きそばは欠かせない。北関東出身の私にとって、ウスターソースは日常に根付いた味。だからこそ、焼きそばへの情熱も人一倍強かったのだと思う。

そんな私がある日、「蟹ブックス」という書店で見つけたのが塩崎省吾さんの『ソース焼きそばの謎』だ。背表紙のタイトルに惹かれ、その場で購入した。当初は少しずつ読み進めていたが、今回は改めて一気に読んでみることにした。

読んでみてまず驚いたのは、著者の調査力だ。戦前の浅草の老舗「染太郎」や「デンキヤホール」「大釜本店」について詳細に掘り下げられており、私は速やかに訪問しなければならないと思った。また、後半の名店紹介では、地元の話題が数多く取り上げられていて、どうりでソース焼きそばに親しみがあるわけだと感じた。自分が慣れ親しんだ味が、地域や歴史と深く結びついていることを知り、感動を覚えた。

本書を読んで改めて気づかされたのは、大衆料理の奥深さだ。ソース焼きそばという一見シンプルな料理にも、文化や歴史、人々の営みが複雑に絡み合っている。著者がこれほどの情報をどうやって収集したのか、その熱意と探究心には敬意を禁じ得ない。

この感動を胸に、次は著者の続編『あんかけ焼きそばの謎』を読んでみたいと思う。そして、焼きそばにまつわる歴史の旅をさらに深めていきたい。私にとってソース焼きそばは単なる料理ではなく、過去の夢や現在の自分を繋ぎ、さらには未来への扉を開く存在なのかもしれない。

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