●「忘れられた元祖」を求めて
ここまでの調査結果を簡単に整理しておきましょう。「数霊法」(名前の字画数を合計して、その数で運勢を占う方法)は現代の姓名判断で用いられる代表的な技法ですが、その起源について以下のことがわかりました。
①~③は『「姓名判断は中国四千年の歴史」は本当か?』と『「姓名判断は我が国百年の歴史」が本当だ(1~6)』で見てきたとおりです。ここでは④~⑤について、さらに詳しく調べてみたいと思います。
なお、明治・大正期に出版された姓名判断書には、私が確認した以外にも存在する(した)可能性があります。ですが、このあとの展開を見てもらうと分かるように、「忘れられた元祖探し」パズルは、⑤に列記した人々だけでも完結するようです。
●「元祖」の最有力候補、菊池准一郎氏の主張
『古今諸名家 姓名善悪論 初編』(菊池准一郎著、明治26年〔1893年〕)の緒言には、「これは私が各種の占術をもとにして発明した新説である。開明の世とはいえ、中国人はもちろん、西洋の研究家も、未だかつて、このような原理を説いたものはないだろう」と書かれています。[*1]
この『初編』を出版した時点で、すでに『続編』の構想があったようですが、実際に『続編』が書かれたのは、20年も後のことでした。『続編』の緒言および本文中には、およそ次のように記されています。
「元祖」を主張する人や仄めかす人は何人もいますが、菊池氏のように、具体的に技法を明示して自身の創案を主張する人は、他に見当たりません。[注3]
これに対し、同業者たちが無視を決め込んだのは、すでに書いたとおりです。黙殺とは不気味ですが、論争しても勝ち目がない場合、有効な手段ではあります。