元祖探しパズルもいよいよ大詰めを迎えました。このパズルは「現代の姓名判断」の創成期に活躍した占い師の系統図を作れば完成です。
●「元祖探し」の現状整理
まず、パーツをチェックしておきましょう。現在確認できる限りでは、明治40年以前に著書出版や門人指導などのプロ活動を行った占い師は、菊池准一郎、海老名復一郎、佐々木盛夫、高階鏡郭、小関金山、鎌田晴山の6氏です。[*1-6]
これまでの調査から、彼らの技法はいずれも非常によく似ており、先駆者の技法が踏襲されていったことが分かっています。
ということで、彼らの前後関係を調べさえすればよいのですが、今のところ判明しているのは菊池、海老名、佐々木、鎌田の4氏だけで、高階氏と小関氏にはまだ不明な点が残っています。[注1]
そこで、不足している情報を『二百問答』(高階鏡郭著)から引用・要約してみましょう。ここには、高階氏自身と親交があった佐々木氏だけでなく、海老名氏や小関氏の名前も出てきます。
●「現代の姓名判断」創成期の面々
現在知られている最初期の姓名鑑定家が3人も登場しました。名前が出てこないのは、菊池氏と鎌田氏だけです。この当時、彼ら6名以外にはプロの鑑定家がいなかったのかもしれません。
●高階鏡郭氏の判断法
それはさておき、「海老名氏を知らないし、著書も読んでいない」と明言している部分に着目したいと思います。というのは、彼の『二百問答』には次のような特徴があり、これを裏付けていると考えられるからです。
なお、彼は「運数」のことを「運格」と表現しており、これは佐々木氏と同じです。
上記の①②は佐々木氏と同様ですが、③④は際立って独創的です。このうち、特に重要なのが④です。なぜなら、この「運格」の判断法は、海老名氏や友人の佐々木氏だけでなく、元祖の菊池氏とも大きく異なるからです。
●他の占い師と一線を画す高階氏の独創性
菊池氏の新発見は、科学的根拠はともかく、「数には吉凶がある」ということでした。そこで彼は、姓名の各文字の画数合計が、そのまま吉凶を表すと考えたのです。
海老名氏も佐々木氏も、菊池氏のこのアイデアを踏襲したからこそ、「運数または運格」(数霊法)による判断法はよく似ていたのです。さらに、この後に出てくる小関氏も彼らと同じです。
ところが高階氏の場合、文字の画数合計を五行(木、火、土、金、水)に置き換えて、姓と名の相性(五行の相生相剋)で吉凶を判断します。つまり、この方法では「数に吉凶は無い」のです。 [注4]
高階氏は自身の種本について何も明かしていません。ですが、①~④の特徴から、情報源は海老名氏や佐々木氏ではなく、菊池氏の『初編』だったと推定されます。『初編』の記述の曖昧さが、自由にアレンジする余地を残したのではないでしょうか。[注5]
以上のとおり、高階氏も独自の姓名判断を確立していました。であれば、彼も元祖グループの一人に加えるべきでしょう。
ただ、彼の方法は後の占い師に継承されませんでした。一時は全国に多くの門人がいたようですが、彼以降の姓名判断書はほとんどが海老名氏の流れを汲むコピーだったのです。高階氏の方法は、海老名氏に比べて、少し複雑だったせいかもしれません。[注6]