読書感想文『藻屑蟹』と『ボダ子』
どちらも決して、立身出世、勇気と努力的なジャンプに出てくるような話ではないし、寧ろ特にボタ子は読後感すら悪いと思います。
藻屑蟹は一年ぐらい前に当直前に本屋によって偶然見つけて購入した本ですが、数時間でぐいぐい読みました。いつもはkindleで書籍を購入するのですが現物の本なので今手元になくて物語の詳細は違っていたらごめんなさい。
まだ何ものでもなく、将来の方向性も見当たらないパチンコ屋の店員(雇われ店長だったかも)の主人公が原発事故を契機に物語が進んでいく。原発事故と言っても主人公は震災で直接被災した訳でもなく、震災した避難民が逃れた地域に住んでいただけで、そこでのリアルな避難民の描かれ方が人間の生身の姿で性格の悪い私好みに描かれていました。
そして彼は原発作業員として給与面にひかれて、友人の伝手で自らすすんで除染作業員になっていく。友人(原発事故の際に志願したいわゆるフクシマ50)の経営する会社で原発作業員の老人と知り合い、その老人の自殺を幇助しそのことで原発会社に恩を売ることができ多額の現金を得て、壊れていく友人と壊れきれない主人公(金をつかもうとして除染作業員となり、目の前にその金があるのにつかみきれず葛藤がある主人公の描かれ方は友人と対比されている)。
これ以上詳細を書くのも野暮だし、私の表現力のなさで本作を誤解されるのはもったいないので、これ以上は読んでみて欲しいです。
対して、同じ福島、震災を書いていても、読後感は良くないのがボタ子だ。
ボタ子とはボーダーライン=境界性ってことで、題材からしてやばい雰囲気が漂います。そして主人公=著者自身も結婚離婚を繰り返す人物で少なくても子供の親として一般的な理想とはとても言えない人物です。そして、お金をつかんでない中年~高齢男性のみじめさとそれでも性にも縋り付く惨めさなど醜い部分を表出してます。
読後感が悪くても、何か心をざわつかせるというか、苛立ちでも良いと思うのですがそういったことすら起こさない読書よりはすぐに消化できなくても心をひっかきまわす読書もたまにはいいと思います。
そういった意味では
ウシジマくんに続く『九条の大罪』特に最新刊は面白かったです。
特に第4巻は自己決定とは何か幸福追求権(=愚行権)とは何かを考えさせられました。不幸せになるであろう自己決定を許容するのが、社会だと個人的には思っておりますが、皆さんはいかがでしょうか?
ってか、まだ20時間ぐらいも当直するの暇すぎて久しぶりにnoteを更新いたしたました。
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