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捜しもの
大切にしている児童書がある。
20年も前に買ったもので、ハラハラする展開が子どもに受けたので、
それ以来、何かの時のためにとっておけば、読み聞かせの出し物になるかな、と思ってのことだ。
主人公は小学生。
留守番をしている時に暇を持て余し、いたずら電話をかけて遊んでしまう。
ふと自分の生年月日を回したら(時代的に黒電話)どこかにつながるのかと、試してみる。すると、ナント怪しげな名前の会社につながってしまう。
電話口の威圧的な男は、戸惑う少年に、何の用事だと尋ねてはくるが、はっきりしない少年をよそに、自分の会社について説明を始める。
会員登録さえすれば、1日にひとつ、欲しいものをリクエストをして無料で貰えるというのだ。
ただし、2つの禁止事項があり、1つ目はお金をリクエストすること、2つ目は最後に『ん』のつくものをリクエストすること。
もし禁止事項を破ったら、それまで、注文したすべてのものを返却するか、それができなければ遠くティクサール星で一生働かなければならない。
結局、少年は、無料でおもちゃゲット、の秘密の楽しみにのめり込むことになる。
話の展開は、19日目に起こる。
男の誘導にはまって、ついに、『ん』で終わる言葉の品物をリクエストしてしまう。
少年は両親から引き離され、一生ティクサール星送りの恐怖に迫られながら、それまで注文した18個の品物を返却するために、与えられた24時間の執行猶予期間に、家中から、この会社から貰った物を集める。
しかし、17個しかない。どんなに考えても、17個しか思いつかない。
もはや、捜すのとも違う。何を捜しているのかがわからない。。。。。
探しものは何ですか?
見つけにくいものですか?
カバンの中も つくえの中も
探したけれど見つからないのに
まだまだ探す気ですか?
それより僕と踊りませんか?
夢の中へ 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?
井上陽水『夢の中へ』
少年は、制限時間を後30分にして、息が止まりそうになりながら、必死に捜す。
勉強している兄の部屋を恐る恐るノックして言う。
「ねえ、お兄ちゃん。。。」
「なんだ、なにか用か?」
「うーん、えーと、えーとね。お兄ちゃんの部屋で捜したい物があるんだ。
この間なくしちゃった物なんだけど、この部屋の中捜してもいい?」
「お前いったい、何をなくしたんだ?」
「あのね、あの。。。。それが。。。何だかわからないんだ。」
今の私は、これだ。
寝ても覚めても、運転していても、何かを捜している。
学生時代、大恋愛して結婚した主人の、歳をとっても変わらずゲームに熱中している横顔をボーッと見つめて、何かヒントはないかと思う。
何も不自由はないし、不満もないし。。。だからわからない。
ボーッとご飯を食べるので、消化不良気味。ちゃんと噛まなきゃ。
探すのをやめた時
見つかる事もよくある話で
踊りましょう 夢の中へ
行ってみたいと思いませんか?
そうだな、捜すのをやめてみようか。
いや、諦められない。
思い切り泣いて、熱くなりたい。
上手くいかず歯を食いしばるみたいな悔し泣きでもいい。
誰かを妬んで、反省して、やっぱり頑張れ自分、みたいな涙でもいい。
諦めるのはまだ早いぞ、60歳。捜し続けてみよう。
※お話の結末は、こちらです。