利益持続力を7倍に高める奥義~布施:与えることで得る智慧~
不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~(全12回)第8回
企業が長期にわたって存続するためには、持続的な利益創出が不可欠です。
しかし、短期的な利益追求は、かえって企業の持続性を損なう可能性があります。300年以上続く企業は、どのようにしてこの課題を克服してきたのでしょうか。
創業310年の老舗商社V社では、「利益は結果であって目的ではない」という独自の経営哲学を掲げています。
同社では、顧客や社会に対する価値提供を最優先し、その結果として持続的な利益を実現するという考え方を実践しています。
「私たちが重視しているのは、お客様や社会に対してどれだけ価値を提供できたかという点です」とV社の社長は語ります。
「利益は、その価値提供の度合いを示すバロメーターのようなもの。数字だけを追いかけても、持続的な成長は実現できません」
同社では、以下の3つの要素を重視した経営を行っています:
価値創造の循環
顧客への価値提供の最大化
社会課題の解決への貢献
イノベーションへの継続的投資
適正利益の追求
長期的な投資余力の確保
ステークホルダーへの適切な還元
リスクへの備えの充実
社会との共生
地域経済への貢献
環境負荷の低減
文化的価値の創造
創業380年の老舗染物メーカーW社では、この考え方をさらに具体的な施策として展開しています。
例えば、利益の一定割合を必ず研究開発に投資する「未来創造準備金」制度を設立。短期的な収益性よりも、長期的な価値創造を重視する姿勢を明確にしています。
仏教でいう「布施」の考え方、つまり「与えることが豊かさをもたらす」という智慧が、これらの取り組みの根底にあります。
老舗の製紙メーカーX社では、環境保全と収益性の両立を実現する革新的なビジネスモデルを構築しています。
地域の森林保全活動に積極的に投資し、その過程で得られた知見を新製品開発に活かすことで、社会貢献と事業成長の好循環を生み出しています。
これらの企業に共通する利益創出の特徴は以下の通りです:
長期的な価値創造の重視
適切な利益水準の設定
社会課題解決との連動
継続的な投資の実施
ステークホルダーとの価値共有
特に注目すべきは、これらの企業が「利益の質」を重視している点です。単に数字として表れる利益だけでなく、その利益がどのように生まれ、どのように使われるかまでを含めて、総合的に評価しているのです。
例えば、W社では以下のような「利益の質」評価指標を設定しています:
顧客満足度との相関
従業員の成長度
環境負荷低減への貢献
地域経済への波及効果
イノベーション創出度
持続的な利益創出の本質は、単なる数字の追求ではありません。企業活動を通じて社会に価値を提供し、その対価として適正な利益を得る。
そして、その利益を次の価値創造に投資していく。この循環を確立することが、100年先を見据えた経営の基盤となるのです。
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