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決断の壁を超える ~如是(にょぜ)の智慧が示す真実の見極め~

「経営者の壁を突破する ―仏教の智慧が照らす道―」①(全12回)

経営者にとって、決断は日常的な営みであり、同時に最も重い責務の一つです。

しかし、その決断の瞬間に直面すると、多くの経営者は「本当にこれでよいのか」という迷いや不安を感じることでしょう。

仏教では、物事の真実の姿を「如是(にょぜ)」と表現します。これは「まさにこのようである」という意味を持ち、先入観や願望を離れて、現実をありのままに見つめる眼差しを指します。

経営の現場では、データや市場分析、社員からの報告など、様々な情報が飛び交います。

しかし、それらの情報は必ずしも真実の全てを映し出しているわけではありません。時には、都合の良い情報だけが集まってきたり、逆に悲観的な見方が支配的になったりすることもあります。

如是の智慧とは、そうした表層的な情報の奥にある本質を見抜く力です。例えば、売上が好調な事業であっても、その背後に潜む市場の変化の予兆を感じ取ることができれば、先手を打った対策が可能となります。

逆に、一時的な困難に直面していても、その状況が持つ可能性を見出すことで、新たな展開のきっかけを掴むことができるのです。

この智慧を実践するためには、まず「沈黙」の時間を持つことが重要です。喧騒から離れ、静かに考えを整理する時間を作ることで、普段は気づかない視点が開かれていきます。

古来より仏教者が実践してきた「止観」の瞑想は、まさにこの深い洞察を得るための方法として伝えられてきました。

また、如是の智慧は、自身の決断に対する「覚悟」も育みます。真実を見極めた上での決断であれば、たとえ結果が思わしくなくても、その経験から確かな学びを得ることができます。

これは単なる「自己正当化」とは異なり、現実から目を逸らすことなく、より良い決断へと成長していく道筋となります。

経営者として直面する決断の場面で、如是の智慧を実践するためには、以下のような具体的なステップが有効です。

まず、表面的な情報や周囲の意見に振り回されることなく、静かに状況を観察します。

次に、自身の願望や恐れといった感情を認識しつつも、それらに執着せず、客観的な視点を保ちます。

そして、その過程で見えてきた本質的な課題や機会に基づいて、決断を下していくのです。

この智慧は、一朝一夕に身につくものではありません。日々の小さな決断の積み重ねの中で、少しずつ磨かれていくものです。

しかし、この姿勢を意識し続けることで、経営者としての決断力は着実に成長していきます。

次回は「過去からの壁を超える」をテーマに、新たな一歩を踏み出すための智慧について探っていきます。

「経営者の壁を突破する ―仏教の智慧が照らす道―」②(全12回)
過去からの壁を超える ~放捨(ほうしゃ)の智慧が導く新たな一歩~


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