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組織の求心力を10倍高める文化醸成法~和合:一体感を育む智慧~

不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~(全12回) 第9回

企業の持続的な成長において、強い組織文化の存在は極めて重要です。しかし、その構築と維持は容易ではありません。

300年以上続く企業は、どのようにして強い組織文化を築き、継承してきたのでしょうか。

創業290年の老舗醤油メーカーY社では、「和の文化」を基盤とした独自の組織運営を実践しています。

同社の特徴は、個々の従業員の多様性を認めながら、組織としての一体感を高めている点にあります。

「組織文化とは、押し付けるものではなく、共に創り上げていくもの」とY社の社長は語ります。「

重要なのは、全員が主役という意識を持ち、自分たちの価値観を自分たちの言葉で表現していくこと」

同社では、以下の4つのアプローチで組織文化の醸成を図っています:

  1. 価値観の共創

  • 全社員参加の価値観対話セッション

  • 部門を超えた交流機会の創出

  • 成功体験・失敗体験の共有

  1. 実践知の蓄積

  • 暗黙知の形式知化

  • ベストプラクティスの共有

  • 世代間での経験継承

  1. 関係性の深化

  • 少人数での対話の促進

  • プロジェクト型の協働機会

  • メンター制度の活用

  1. 変革力の強化

  • イノベーション活動の奨励

  • 新しい試みへの寛容さ

  • 失敗からの学びの重視

創業340年の老舗和菓子メーカーZ社では、この考え方をさらに進化させ、「共創型組織文化」を確立しています。

例えば、新商品開発では、職人、営業、管理部門が一体となって取り組む「クロスファンクショナルチーム」を編成。部門の壁を超えた協働を通じて、組織の一体感を高めています。

仏教でいう「和合」の考え方、つまり「違いを認め合いながら調和する」という智慧が、これらの取り組みの根底にあります。

老舗の絹織物メーカーAA社では、伝統技術の継承と新技術の導入を両立させる独自の組織文化を築いています。

ベテラン職人と若手エンジニアが日常的に対話する場を設け、世代や専門性の違いを超えた相互理解を促進。その結果、伝統技術とデジタル技術を融合した革新的な製品開発に成功しています。

これらの企業に共通する組織文化の特徴は以下の通りです:

  • 多様性を認め合う寛容さ

  • 対話を重視する姿勢

  • 実践を通じた学びの重視

  • 変化への柔軟な対応

  • 世代を超えた価値の共有

特に注目すべきは、これらの企業が「文化は生き物である」という認識を持っている点です。固定的な規範として捉えるのではなく、時代とともに進化していくものとして文化を位置づけているのです。

例えば、Y社では毎年「文化対話月間」を設定し、以下のような活動を行っています:

  • 価値観の再確認と更新

  • 新しい課題への対応方針の検討

  • 次世代に伝えるべき要素の特定

  • 変革すべき点の明確化

  • 成功事例の共有と称賛

組織文化の醸成の本質は、単なるルールや規範の設定ではありません。個々の従業員が自分の役割と価値を実感しながら、組織の目的に向かって共に成長していける環境をつくること。それが、100年先を見据えた経営の基盤となるのです。

次回はコチラ。

不滅の経営 ~300年企業に学ぶ12の智慧~第10回:
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