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心理学研究法2

前回に引き続き、今回も心理学研究法について紹介していきたいと思います。今回は、【概念的独立変数】【純化】【多重操作】の3つを紹介します。

概念的独立変数

前回、紹介した独立変数ですが、この独立変数を心理学の領域で設定する場合、特定の物理的な刺激(光の明るさ、本の重さ、接触の回数など)の直接的独立変数と、あるカテゴリーに属する物理的な刺激(知的に見られる服装、集団圧力など)や物理的な刺激によって喚起された心理状態(自尊心、自己肯定感、悲しみ、不安など)の概念的独立変数が存在します。
研究者は主にこれら3つを操作することで、解明したい心理的な謎を研究します。


直観的独立変数

これは特定の具体的な刺激、1つの定義された物理量のことで、例えば騒音が及ぼす心理的な影響や光源の変化に伴う心理的変化などが挙げられます。
(補助仮設なし)

概念的独立変数(諸変数の代表)

これは抽象的な変数であり、特定のカテゴリーと結びつける必要があります。例えば、知的に見られる服装や理想的な結婚相手などが挙げられます
。これらは個人や文化によって多少の差があるため、直観的独立変数とは違い抽象的な独立変数であることが分かります。(補助仮設あり)

概念的独立変数(心理変数)

これも抽象的な独立変数で、特にある手続きによって引き起こされた心理状態のことです。例えば、怒りとプライドの関係性や優しさと誠実性の関係性などが挙げられます。
諸変数の代表との違いは、あくまでも外部の物理的な刺激と被験者の心理的な反応に注目しているのではなく、ある手続きで引き起こされた心理状態に対する被験者の反応に関心をもっています。(補助仮設あり)



純化と多重操作


純化

純化は、実験で用いる手続きを研究者が検討したい概念のみを表すようにする作業です。純化が必要となるパターンは主に2つ挙げられ、1つ目は手続きが洗練されていない場合。
例えば、サクラを雇った場合などはサクラの行動パターンが一致していなければいけません。
2つ目は、手続きが多重意味を持つ場合です。例えば、知的な服装はメガネをかけており比較的整った服装(セットアップなど)を想定している一方で、着用しているひとの顔面偏差値や身長などによっても知的かどうかという印象が左右されるかもしれません。
そのためこれらの実験では独立変数の純化が必要となるわけです。

多重操作

多重操作は、研究者が検討したい概念と関連している複数の手続きを組み合わせることです。
例えば、プライドが高いと怒りやすいという仮説を検討したいとします。
プライドに関連する要素として「主張を曲げない」と「マウンティングをする」があるとします。
「主張を曲げない」はプライド以外に「自己中心」とも関連しそうです。また「マウンティングをする」は「自信過剰」とも関連しそうです。

ある研究では「自己中心」的な人は怒りやすさに関連性があるという結果が得られました。
別の研究では「自己中心」に加えて「自信過剰」も怒りやすさに関連することが解明されました。

この場合、後者の方が当初の仮設を支持することになります。なぜならば、後者の研究では「自己中心」と「自信過剰」の両者に共通する要素としてプライドがあり、「マウンティングをする」などよりもプライドの高さと怒りやすさが関連している可能性が高いと考えられます。


まとめ

今回は【概念的独立変数】【純化】【多重操作】の3つについて紹介していきました。心理学的な研究をするうえで、目に見えない心や意識といった存在を取り扱う場面は多く存在します。そのような存在を客観的かつ論理的に解明するために、今回紹介したプロセスはどれも重要な要素となっていることを留意していきたいですね。

・参考文献

高野陽太郎・岡隆編『心理学研究法―心を見つめる科学のまなざし』補訂版(有斐閣アルマ)2017

吉田寿夫『本当にわかりやすいすごく大切なことが書いてあるごく初歩の統計の本』(北大路書房)1998




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