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健康と向き合う!! 口内炎や舌癌の痛みから考える健康について

健康には色々な形がある。

  • 体の健康

  • 心の健康

この二つに大きく分かれるのではないか。

しかし、心が健康であるためには、体が健康であることが大前提である。
耳鼻咽喉科でルーチンワークで口腔の診察を行うが、ちょっと口内炎があって気になる・・程度で受診される患者さんもいる。これは、医師にとってみれば、たかが口内炎であるが、患者さんにとってはかなり重大な問題なのだ。

自分も口内炎になったり、口唇を噛んでしまって口の中に傷ができてしまった時に、口の中の違和感や常に何かある感じというのはとっても気になる。仕事などに集中している時はあまり自覚しないが、ブレイクタイムにのんびりしていると気になって気になって仕方ない。

人間の感覚について考えてみる

 人間の感覚は、皮膚や粘膜にある知覚受容体から刺激が入り、知覚神経に乗って脳に神経伝達されることで脳内で情報処理をされる。脳の感覚情報を処理する領域の中で、耳鼻咽喉科領域特に口の中の感覚はとても大きな領域を占める。これはホムンクルスの脳地図で表現されているが、口腔、舌が異常に大きく描かれている。

ホムンクルスの脳地図:頭の領域、手の領域が大きく描かれている

 口の中の感覚は、人間にとって大切な感覚であると判断され、進化の過程で脳内の感覚領域が大きくなったのだろう。

また、このような感覚刺激は、『嫌だなー』といったネガティブな感情が生じることで脳内で増幅されて、さらにこの症状にフォーカスされることで強い感覚刺激として脳内に記憶されるようになる。そして、強い感覚刺激(口内炎の場合は痛み)になってしまう。このように、感覚情報とは感情と複雑にリンクしていて、その人の今現在の心の状態などによって、単純な一過性の痛みが、持続的な慢性疼痛にもなりうるのだ。

 口内炎の痛みに対して、嫌だなー!辛いなー!って思えば思うほどに、脳内では痛み感覚は増幅されて、どんどん痛くなっていくのだ。朝昼晩の3回の食事のたびに痛み刺激を感じなければいけない。その点で、口内炎は食事のたびに痛みを強要されるので、患者さんにとっては、かなり厄介な痛みを伴う病気と言える。

口内炎は1週間程度で自然に消えてしまうが、口腔内の癌の痛みは非常に厄介である。大学で舌癌の患者さんを診察していたが、この痛みのメカニズムが持続的に、そして進行性に悪化するのだ。考えただけでも辛い・・・・。

舌癌は最近、芸能人が罹患することで注目されるようになった悪性腫瘍である。口腔がんの中で舌癌が最も多く、舌癌は口腔がんの代表と言える。

多くは、遺伝的な要因がありつつ、そこに喫煙や慢性的な刺激(入れ歯や歯牙が持続的に当たっていた)がトリガーとなって発症する。

舌癌は口内炎がどんどん周囲に進展して、痛みが拡大すればするほど増強するという嫌な特徴がある。腫瘍が完全に取りきれないと、症状は消失しない。腫瘍の切除も大きい範囲切除してしまうと食事する上で、舌をうまく使えないことで、飲み込み(嚥下)機能が低下することでうまくいかないことがある。

つまり、飲み込みの機能を優先するか、腫瘍を残すか・・・という耳鼻咽喉科医(頭頸部外科医)には大きな選択が立ちはだかる。

舌癌の患者さんは治療を受けないと辛いが、治療を受けた後(腫瘍のサイズと治療の程度にもよるが)も口腔内の引きつれ感や違和感、嚥下の問題などに悩まされる方が多い。

このような状態は、患者さんの精神にも大いに影響する

舌癌の所見

実際に頭頸部がん(耳鼻咽喉科が診察している癌)の患者さんのうつ病罹患率が、15~50%と言われているが、これはかなり高い割合だ。

痛みを持続的に与えられていると、人によっては心を病んでしまう。
このように、患者さんのちょっとした体の変化というものは、心にも影響してしまうのだ。

体の健康は心の健康に大きく作用している』ということが、大学で癌の患者さんを診療するこで、痛みと向きあうことでよく実感したものだ。

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