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自己への関心を捨てる


 アドラー心理学は個人心理学といって、個人が豊かな心を持つための思想で、すべての人間が対象となる思考法である。原因に着目するのではなく、目的に着目し、『あなたはどうしたいのか?』ということにフォーカスすることが大切であると説いている。

言っていることは簡単であるが、実際に行動するとなると、思考が習慣化されていないとなかなか難しいものだ。常にその思想を持ち続けようという意識が大切であろう。

 あなたはどうしたいか?という目的論にばかり目を向けていると、はたからみたら単なる利己主義になりかねない。しかし、ここで大切なのが、『他者への関心』である。全ての人間の悩みは、人間関係にあるとアドラーは言うが、そのとおりで、世界に自分しか人間がいなかったら、比較対象の人間がいないわけだから、相手より優れているとか劣っているとか、相手の目を気にして生きるなどといった悩みは全く必要ないのである。他人ありきで人間は生きているし、辛いことも嬉しいことも他人がいなければ生じない(必要ない)感情なのだ。

結局、目的論は持ちつつも、他者への関心を持ち、一緒に生きていくという思考が大切なのだ。

 アドラーは自己への関心が強すぎることが、さまざまな心の不調をきたすと言っている。視点のベクトルが自己に向きすぎていると、自分が可哀想、自分だけがすごい、自分だけが・・といったように、自己利益のための情動が生じやすい。その思考を繰り返し続けていると、すべての行動が自分を守るためだけのものとなってしまう。

 例えば、仕事をしていて適切な行動や対応をしなければならないのに、自分が責められるような状況になってしまうと、一気に適切な(本当は間違っているとわかっているのに)行動が取れなくなってしまうのだ。これは、アドラー心理学で言えば、自己にフォーカスしすぎているからということだろう。このような人は、適正な行動をとっている時とそうでない時の差が激しく、周囲からみると起伏の激しい性格であったり、いわゆる気分屋と思われるだろう。おそらく今後の人生で何をやっても満足がいかないことになるだろう。

 そこでアドラーは他者への関心を重要視している。他者に関心を持ち、相手の立場で物事を考える習慣ができていると、自ずと行動も適切なものに変わってくる。他者への関心を持つことは、この他者へ関心を持つことがアイデンティティとなっていることを、アドラー心理学では『共同体感覚』と言っており、アドラー心理学の鍵概念となっている。

要旨

  • 自己中心的な考え方から脱却し、他者への関心を持つことの重要性についての記事を書いた。

  • 他者への関心を持つことで、コミュニケーション能力が向上し、人間関係も良好になることが想定される。

  • 他者に関心を持って物事を考える習慣を身につけ、持続させることが大切である。

  • 他者への関心は共同体感覚と言われ、これが日常の行動に影響を与え、長期的には自己の成長や幸福感に繋がる。

  • アドラー心理学は悩み多き現代を生きる上で、全ての人が取り入れるべき思考法であると考えれられる。

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