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5/48.世界は神様のスノードームなのだと知った ヴェトナム_メコン川クルーズで見た丸くて、小さくて、遠い空

30歳の頃、友人と行ったヴェトナム旅行でホタルを見る目的でメコン川クルーズに参加した

その時のホタルの様子はもうあまり覚えていないのだけど、そこへ向かう途中に目にした景色は今も心に焼き付いている

夕暮れ時、あたりは紫のもやにつつまれて
風はなく、波もなく、音もなく、
生暖かい空気に頬を撫でられながら静寂を漂う船

水平線が見えるほどに、遮るものなどなくただただ開けた視界

それでいながら夕闇の薄暗さと、ところどころに途切れながらも天面を覆う雲の厚み
それらが作り出す心地よい閉塞感に、まるで世界はスノードームの中に作られているかのような気持ちになったことを覚えています

そして、ずっと遠いような、案外近いような、
距離感の定まらない向こう側に音もなく光る縦に落ちた稲妻

こちらの空には雨はないけど
あちらの空では雨が落ちているのかな
そんなことを思いつつ、音のない空間をゆらゆらとたゆたっていた

心がしっとりと動いたヴェトナムの思い出


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