【週刊消費者情報】 『消費者情報』Web版11月号配信!〈連載編〉
「欄干のない橋」のたとえ
『消費者情報』Web版11月号が配信されました。
特集「障がい者の消費者トラブル~予防と救済~」は先週の投稿でご紹介しましたが、少しだけ企画に至ったお話をさせてください。
障害があってもなくても消費者トラブルは発生します。しかし、障害があることによって消費者被害に遭う、というのはあってはいけません。たとえば、視覚障害のある人がホームから転落するという事故はたびたび起こっています。ホームドアのないホームは「欄干のない橋」にたとえられ、この10年間でも死亡事故が20件以上、転落事案も数多くあります。これは消費者の「安全である権利」が侵害されてきたことになりませんか。
こうした権利侵害が思いの基礎にあって特集を組みました。ただ特集ではホームドア設置などの内容はありません。通底しているのは、障害特性の十分な理解と社会的障壁をなくすための合理的配慮、そして地域における見守り――それらの必要性が重要な視点になっていることです。もしこの3点が徹底されていれば、上述の転落事故はもっと回避できていたのではないでしょうか。上の写真に見るような光景は、私たち一人ひとりの問題として捉えなくてはいけません。企画書ができた本年6月、ちょうど名古屋城天守(写真下)の「木造復元」問題が取りざたされていました。
さて、連載の紹介にまいりましょう。
・【現場からの情報・相談】
先の投稿でもちょっと触れました「障がい者がオンラインゲームで高額課金してしまった」という相談事例です。スマホを使って数カ月間オンラインゲームを繰り返した結果、キャリア決済の請求額が22万円になってしまい、消費生活センターに相談。その後、全額キャンセル処理ができたという話です。
・【商品テストの機能と役割】
「特定できないテスト結果とその後の対応」というタイトルが示すとおり、消費生活センターに持ち込まれる不具合のある商品等は一様ではありません。テスト担当者は、仮にテスト結果が原因不明であっても多角的な視点から相談員とともに検討・対応することに心掛けているといいます。
・【がんばれ!消費者委員会】
「消費者団体の現状及び今後に向けた論点整理」と題し、政策提言機能を担う消費者団体を中心とした調査報告について書かれています。消費者団体の変遷は戦後78年を経て、大きく変わってきています。消費者団体の現状と課題が調査報告から垣間見えるような気がします。
・【団体訴権への展開】
「適格消費者団体と『差止』 USJのチケット利用規約をめぐる差止訴訟」 と題し、大阪の適格消費者団体KC‘s(ケーシーズ)が原稿を寄せてくれました。内容は、チケット転売をめぐるユニバーサルスタジオジャパン(USJ)を運営する合同会社ユー・エス・ジェーに対する差止請求事件です。
・【消費者庁 新未来創造戦略本部の取組】
今回の報告は、1つは「食品ロス削減の啓発に関する取組」、もう1つは「消費者庁新未来創造戦略本部が行う国際貢献(途上国支援)について」・・・前者は国民運動になりつつある食品ロス削減について、中国・四国地方をフィールドにしたモデル事業や「SNS媒体を活用した食品ロス削減啓発プロジェクト」の取り組みを報告。後者は、同戦略本部の取組として新たな国際業務の拠点として国際消費者政策研究や国際シンポジウムの開催等について報告されています。
・【つくる責任・つかう責任を考える】
「気候変動問題をめぐる消費者と生産者」で語られていることは、豪雨や台風、猛暑に山火事など、世界を覆う破壊的な異常気象の原因は人間生活に起因しているという事実。そこで消費者は、そして生産者はどのように「つくる責任・つかう責任」を果たすべきなのか・・・。
とりわけ、化石燃料由来(石炭火力発電)の電力購入は、脱炭素時代に逆行する投票行動だと指摘されています。
・【ネット漂流】
コロナ禍の影響は子どもたちの生活に変化をもたらした。特に小学生の低学年の間で顕著だと・・・。保護者のみなさん、大切なわが子を粗暴な性格に育てたくはありませんよね。ゲームやSNS,インスタグラムなどなど、その使用にはくれぐれもご注意を。
『消費者情報』Web版 編集室 原田修身
『消費者情報』Web版No.506(2023年11月配信号)
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