小学生の「将来なりたい職業」ランキング推移とGoogle Trendsで視る日本での科学技術・研究開発への関心の低下
筆者は、食品企業の研究開発部門に従事して、退職後は一般財団法人にて研究助成先の選考と、研究開発やデータサイエンスに関する情報の調査・分析などを行ってきました。
最近、日本の研究開発の話題やニュースに接することが少なくなった気がしていたことと、日本人の研究開発の見える化を検討したかったことから、まず日本人の科学技術や研究開発への関心がどうなっているのかを調べてみました。
意識調査は内閣府の世論調査や、科学技術・学術政策研究所が公開していますが、ここではGoogle Trendsによる日本国内での検索行動データから科学技術や研究開発への関心を調べてみました。
また、小学生の「将来なりたい職業」のランキング推移データがありましので紹介します。
小学生の「将来なりたい職業」の「研究者・科学者」ランキング推移
上記サイトのデータから「研究者・科学者」のランキングの2008年からの推移データを抽出してみると、2009年に最高の3位でしたが、2014年と2016年にトップ10に入れず、2017年から2019年までが10位、2020年以降2023年までトップ10に入れていません。2023年には24位まで下がっています。
子どもたちの科学や研究に対する関心が薄れています。家庭や学校で科学に関する情報に接する機会が減少しているのではないでしょうか。
次のGoogle Trendsによる検索頻度の推移データからも一般の人たちの科学・研究への関心が減少していることが見えます。
Google Trends
ターゲットの検索ワードとして、「科学技術」「研究開発」を、また私達の情報環境に大きな影響を与えた「YouTube」、「スマホ」と、昔からある一般的な娯楽の「映画」についても検索ワードとしました。期間は2004年1月から2024年1月までです。地域設定は日本です。Google Trendsは相対的な検索頻度トレンドデータを提供してくれますが、それらは関心による検索行動を反映しているとされています。
「科学技術」への関心は2016年ごろまで低下傾向でした。約1/4に減少しています。「研究開発」は2010年ころから2014にかけて急激に低下しました。約1/3に減少しています。この頃は、YouTubeの開始時期、スマホの普及時期で、「YouTube」、「スマホ」への関心が急激に立ち上がっています。「映画」への関心は2010年ころから2016年ころにかけて、緩やかに上昇していました。
「科学技術」、「研究開発」への検索頻度の低下には、YouTubeの開始、スマホの普及による情報環境の大きな変化が影響したのではないかと推測しています。さらに、ここ数年は大きなピークも認められず話題性にとぼしいようです。一方で「映画」の検索頻度は緩やかに上昇しており、情報環境の変化にうまく対応できたのではないでしょうか。
科学技術、研究開発についてもデバイスとしてのスマホ、アプリのYouTube、さらに現在ではInstagramなどを通じてのアピールが必要なようです。
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