
夜を旅する
『ナイトオンザプラネット』というクリープハイプの曲が好きで、よく聴いている。
タクシー内でボリューム調整のつまみを回すと、この曲のイントロが流れ始める。
続いて、タクシー内から見える、静けさが感じられる夜の道の映像が流れる。
この曲と夜の静けさに包まれて、伊藤沙莉がタクシーを運転している。
こんな感じで、ミュージックビデオ(MV)が始まる。
https://youtu.be/Y_VyszSZdMc?si=pVkuqv55jk_7e0lm
(ちなみにこのMVは、伊藤沙莉と池松壮亮が主演している『ちょっと思い出しただけ』という映画と連動した作品になっている。)
映像から伝わってくる夜の静かな感じと、イントロの、ムードのある包み込んでくれるようなギター音が好きだ。
その後、バンドの演奏なども挟んだのち、
尾崎世界観がタクシーの後部座席に乗っている場面が映し出される。
静かなタクシーの車内で、それぞれが、柔らかくて少し哀しい孤独に包まれながら、空間を共有している感じがする。
それぞれにもの想いでもしているのだろうか。
この雰囲気も好きだ。
結果的に夜明けを共に体験することになった感じや、最後にやりとりされる会話がコミカルなのもいい。
このMVを見ていて、
自分が夜中の道を、独りで歩き続けているときのことを思い出した。
飲み会の帰りに、終電を逃してしまったり、電車内で寝てしまったりしたときに、最寄り駅まで帰れなくなってしまうことが、何度もあった。
最初の頃は、若干絶望的な気持ちになったりしながら、家までの道を歩き始める感じだった。
ある時から、なぜか、
恩田陸の『夜ピクニック』を連想するようになり、絶望感が軽減され、少しのワクワク感が入り混じるようになってきた。
余裕が出てきたことによって、夜の静けさに包まれながら歩くことの心地よさを感じるようにもなった。
何時間も歩き続けていると、自分の内側で様々なことが生じてくる。
弱音や後悔、明日のこと、意味のない考えの連なり、身体の痛み、タクシーの存在、過去の出来事、今の感覚から連想されるあれこれ。
当然、辛くなることもあるが、夜の静けさに包まれているような感覚があると、
それを、諦めや優しい気持ちを持って、程よく受け止められる感じがあるから不思議だ。
静けさの中で夜(自分の内側)を旅している感覚。
こんな感じも、たまには悪くないだろう。
次の日は身体のどこかしこが痛くなるので、あまりお勧めはできないですが。