聴いて楽しんだお話〜『いやいやえん』から『ガンダム』まで
先日、『いやいやえん』の作者、中川李枝子さんが亡くなった。『ぐりとぐら』も大好きだったけれど、私の中で忘れられないのは『いやいやえん』だ。保育園で読んでもらったのが懐かしい。
聴いたからこそ強烈に記憶に残っている物語がある。今日はその話をしたい。
『いやいやえん』はそこの家のことでしょ?
『いやいやえん』を読んでもらったのは年長の時だ。このお話は、ある保育園が舞台で主人公は園児のシゲルである。
先生はこれをお昼寝前に読んでくれた。
私たち園児はこれがとっても楽しみだった。
どんな挿絵なのかは知らなかった。
私の頭の中でシゲルは私たちと同じ青い園服を着ていた。同じ部屋でおしゃべりをし、その辺に散歩に出かけるのだった。
題名にもなっている「いやいやえん」も、私の頭の中ではどこにあるか分かっていた。うちの保育園のすぐ近くにある大きめの民家だ。あそこの中におばあさんがいて、あれがいや、これがいや、と言っている子どもたちが集まって好きなことをやっているんだろうな、となんとなく思っていた。
「いやいやえん」、ちょっとだけなら行ってみてもいいかな、とも思っていた。ちょっとだけならね。
メロスが無事か心配だった日々
小学校の頃、担任はいろいろ話を聞かせてくれた。何かの有名なエピソードを話したり、誰かと世間話をしていて得た発見を話したりしていた。
途中で話をやめては、「その時、◯◯さんはどう思ったのでしょうか」などとやるものだから、私はちょっとうんざりしていた。ちゃちゃちゃっと聞きたい。道徳の授業みたいなやりとりは嫌い。
そんな時に先生は、悪い王様を諌めようとする若者の話を始めた。これまたちょっとずつしか話さず、「◯◯さんは……」という質問が入る。早く続きが知りたかった。これが『走れメロス』だったことを知ったのは後のことである。
メロスは間に合うんだろうか。でも、間に合うってことは殺されちゃうんだよね。でも、間に合わなかったらセリヌンティウスがかわいそうじゃん。どうするんだろう。
焦れったく焦れったく聴いたせいで、粘っこくいろいろ考えることになったと思う。
『ジャパネスク』は音に注目!
『なんて素敵にジャパネスク』が好きだったという話は前にも書いた。今、取り寄せて読み返している。
『ジャパネスク』は人気小説で、漫画、ドラマにもなったが、どちらも見ていない。自分の親戚が出世したみたいに喜んでいただけだ。私がよく覚えているのはラジオドラマになった『ジャパネスク』だ。
今、もう一度読んでいて思うのは、『ジャパネスク』はラジオドラマ向きなんじゃないか、ということだ。もちろん漫画やドラマにしても素晴らしいと思うのだけど、御簾の向こう側から聞こえてくる声とか、屋敷の遠くの叫び声とか、(瑠璃姫が女房として潜入して)盗み聞きとか、音が重要なシーンがけっこうある。美しい平安の衣装は想像するしかないけれど、音を組み立てて作られたラジオドラマは面白かった。
お父さんありがとう!のガンダム
ガンダムを聴いて楽しむって、ガンダムはアニメだろうに。どうすんの?
なんだが、聴いて楽しんだといえばガンダムなんである。
中学生だったかな? ガンダム映画がテレビで放映されることになった。一度も見ていない私としては、どーしてもどーしてもどーしても見たかった。しかし、この日は家族の行事があり、外出することが決まっていた。「ガンダムが見たいから行かない」とは到底言えなかった。
がっかりし、「またいつか再放送があるかもしれないし」と思い、「それっていつなんだよ」と思い、まあぐちぐち思いながら帰宅すると、父からスペシャルなプレゼントが渡された。
テレビの前には何やらいろんな線がのびており、テープレコーダーとタイマーにつながれていた。
どういう方法かわからないけれど、父は娘のために、自分が全然見たいと思わないアニメ番組を録音できるようにしておいてくれたんである。
これはすごい!! わーありがとう!!
というわけで、毎日毎日聴いた。テレビの放送をそのまま録音しただけだから、アムロやララア、シャアやセイラさんの声と一緒に、「わかめ! めんこく! わかめー!!」というめんこくラーメンのCMも頭に刷り込まれてしまったけれど。
映画を「見た」わけではないから、画像としての記憶はないけれど、すばらしい映画を「聴いた」満足感はたっぷり味わった。
聴いただけでも楽しいもんだ。
今日書ききれなかった「落語」の話などは別の機会に。
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