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ゆめにっきで学ぶ、哲学をする事の大切さ(中編)
この記事は中編です。
まだ見てない人は、前編から見て下さい。
初めに
「ゆめにっきという作品は、哲学という概念を描いている」
前編の記事ではそのような事を書いた。
では、具体的にそれはどういう事なのか?
ゆめにっきに描かれている「哲学」という概念は一体何なのか?
そういう事を、この記事では深掘りしていこうと思う。
窓付きの人生
窓付きの人生について
「ゆめにっきという作品には何が描かれていたのか?」
それを理解する為には、まずは、ゆめにっきのストーリーを理解しなければならない。
「窓付きは一体どのような人物だったのか?」
「窓付きは一体何故、哲学なんてものをしていたのか?」
まずはそれを、改めてこの記事の中で紐解いてみようと思う。
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それを理解する為には、まずは、窓付きの人生というものを紐解かなければならない。
(ここから先は、「ゆめにっきのストーリー」というものを、「あのタンスの意味」というものを説明する為に必要な部分だけかいつまんで説明します。
ちゃんとした全体のストーリーなどが知りたい人は、それを解説している別の記事などを見て来て下さい。)
窓付きの人生の、おおまかな流れ
まず、窓付きはごく普通の家庭に生まれた。
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こんな感じの、のどかで平和な普通の家に、窓付きは生まれた。
そして窓付きは、家族と共にただ穏やかに生きていた。
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年の近い姉、年の離れた姉、父、母。
…の4人家族だったと思われる
しかし、窓付きが3歳くらいの頃。
一家の全員で道を歩いていたら、飲酒運転のトラックが目の前に突っ込んできた。
……そのせいで、窓付きの目の前で、自分以外の家族が全員グチャグチャに潰れ合って死んでいった。
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おそらく当時、窓付きはまだ3歳くらいだったと思われる。
そしてその結果、窓付きは親戚の家に預けられる事になった。
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そしてその後で、親権というものが別の人に移動する。
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当時の窓付きにとっては、訳も分からないまま連れて来られたので、ただただ全てが恐ろしい。
窓付きは、家族全員が潰れ合って死んでいく所を目の前で見てしまった。
なので窓付きは、その事が激しいトラウマとなって、部屋に引きこもってしまった。
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窓付きはこの後ずっと、これに苛まれ続ける。
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3歳くらいの窓付きがずっと引きこもっていた場所。
窓付きはこの部屋から出られなかったので、おそらく幼稚園には通っていない。
そしてこれから、窓付きは色々あって、小学校にも中学校にも通う事はなかった。
……なので、窓付きの最終学歴は、無卒。
そして、それから長い時間が経った後。
時が心を癒してくれた事で、窓付きはなんとか家の外に出れるようになり始めた。
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(たぶん、)当時まだ5歳くらいだと思われる。
しかし、幼少期の窓付きはまだトラウマが全然癒えていない。
なので、地獄の苦しみの中で、この世の全てにただひたすら怯えてしまっていた。
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後ろにあるものは、車。
……普通はどうやっても、車がこうだとは思えない。
しかし、交通事故のトラウマに苦しみ続ける窓付きには、世界がこんな風に見えてしまっていた、
しかし、そんな窓付きは、ある人物に心を救って貰う事が出来た。
窓付きの心を救ってくれた人は、「死体さん」と呼ばれているキャラクター。
身寄りのない窓付きを引き取った、後見人のお父さんだった人。
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後見人のお父さん。
窓付きに、この世界の美しさを教えてくれた人。
ある日、窓付きは交通事故に合いそうになった。
まだ5歳くらいだった窓付きは、ふらふらと道路に飛び出してしまって、そこに車が来てしまった。
……そんな時に、死体さんが窓付きを庇ってくれた。
死体さんは命を賭して、人の温もりを窓付きに与えてくれた。
そして、この世界がただ恐ろしいだけの場所ではない事を、最後の姿を通じて教えてくれた。
窓付きは、心の底から死体さんに感謝した。
そして、この世界の美しさを感じたいと、そのような事を思えるようになった。
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水面に映る月に、この世界の果てしない美しさを感じる事が出来るようになっている。
…しかし、死体さんには、妻がいた。
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死体さんの妻。
後見人のお母さん。
窓付きは、死体さんが自分の代わりに死んでくれた事を、鳥人間に報告した。
当時の窓付きは、まだ5歳くらいで、空気を読むとかそういう事が出来なかった。
……だからおそらく、とても嬉しそうに、笑顔で報告してしまった。
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「だから私は、これからはもう笑顔で生きる事にするよ」
……たぶん、そういう感じの事を、誤解を生むような凄く口下手な言葉で伝えてしまった。
鳥人間は元々、あまり窓付きの事が好きではなかった。
「何時までも引きこもって迷惑ばかりかける、面倒な子」というのが鳥人間にとっての窓付きだった。
鳥人間にとって、窓付きは他人のようなものだった。
……だから、鳥人間は怒った。
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鳥人間は、あまりの怒りで狂ってしまった。
そんな鳥人間を見て、窓付きは自分が何をしてしまったのかを理解した。
……しかし、それはもう遅かった。
窓付きは、風俗で働く事になった。
鳥人間は、まだ5歳くらいの窓付きに対して、狂気の復讐を始めてしまった。
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鳥人間は、心の底から窓付きが憎かった。
そして、憎き窓付きが悪魔であって欲しかった。
……だから、その時に鳥人間は、窓付きに対してこういう事を言った。
「お前は死体さんが死んだ事に悲しめなかった」
「お前は人の心がない悪魔だ」
「だからお前は、一生苦しみ続けないといけない」
その時、窓付きはまだ幼かった。
そして、本当は寂しがり屋で人懐っこい窓付きは、鳥人間という人間に対して深い親愛の情を持っていた。
鳥人間は窓付きの事をもう悪魔としか思っていない。
しかし窓付きは、そんな鳥人間の事を、かけがえのない母親だとすら思ってしまっている。
……だから窓付きは、鳥人間のその言葉を信じて受け入れてしまった。
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本当は、窓付きは死体さんの事を愛している。
窓付きほど、死体さんに心を救われた人はいない。
窓付きほど、死体さんの温もりに触れた人はいない。
窓付きという人間にとって、死体さんに対する想いというものは、自分の全てとすら言える程に大きくて大切なものになっていた。
それなのに、鳥人間の言葉は、よりにもよってそれをバラバラに引き裂いてしまった。
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窓付きは鳥人間に、そう言われ続けた。
なので窓付きは、ノイローゼになって、この世界そのものから常にそう言われているような感覚に陥るようになってしまった。
そんな窓付きを助けてくれる人は、誰もいない。
……それは、ただ物理的に誰も助けてくれないだけではない。
常識とか、世界とか、自分自身とか、そういうものすら誰も窓付きを助けてはくれない。
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死体さんの死によって、この世界とはただ恐ろしいだけのものではないのだと知る事が出来た。
……しかし、その想いは誰にも肯定される事はない。
認知をされる事すらない。
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窓付きは、未だにずっと、家族全員がミンチになってしまったトラウマに苦しんでいる。
なので窓付きは、普通の人間よりも更にずっと、死というものを恐れている。
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この世界の誰もが、それを疑う事すらなく、そう思う。
そして窓付き自身すら、心から、そう思う。
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自分が何故、死体さんの死に泣く事が出来なかったのか。
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それを、誰も答える事が出来ない。
常識というものはそれを、「窓付きが悪魔だから」だとしか、言いようがない。
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窓付きは罪悪感というもので、誰よりも自分自身に苦しめられている。
誰よりも窓付き自身が、自分自身から、「お前は悪魔だ」と言われ続けている。
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その言葉に少しでも逆らえば、窓付きの心は、こうなる。
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だから、そんな窓付きだって、鳥人間から逃げ出して家出をしてみたりする。
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普通の生き方というものを、窓付きはもう、どうやっても理解する事が出来ない。
……しかし、窓付きには義務がある。
それは、「命を救われた者としての幸福義務」というもの。
死体さんは、命を使って窓付きを助けてくれた。
だから窓付きは、死体さんの分まで幸せにならないといけない。
何もかもが狂ってしまったこの世界で、誰の助けもなく、それでも窓付きは「幸せ」というよく分からないものを掴まないといけない。
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それを自分に突き立てて、苦しみを終わらせてしまう事は容易い。
それを他人に突き立てて、鳥人間を殺してしまう事だって、やろうと思えばたぶん出来る。
……しかし、それでは死体さんに顔向けが出来ない。
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窓付きは、鳥人間を害さない範囲で、正しく美しく幸せにならないといけない。
……だから、窓付きは考え始める。
「人間とは一体何なのか?」
「この世界は本当はどんな形をしているのか?」
「自分は一体何者なのか?」
それだけが窓付きに出来る事だから、窓付きはそれを考え続ける。
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何もかもが意味も分からない程にねじ曲がった、途方もない迷宮になっている。
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「自分の幸せとは本当は一体何なのか?」
その答えを求めて、心の全てを使いながら、途方もない迷宮に立ち向かい続ける。
窓付きという人物は、そのような事をしたがっている。
そのような事を考えて、そのように生きている。
……だから、窓付きはたんすの中にいる。
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自分とは何かを考え続けている。
この世界とは何なのかを考え続けている。
そして、自分でもよく分からない何かを、ただひたすらに探し続けている。
「哲学」だなんていう言葉は、よく意味が分からない。
勇気だとか、優しさだとか、そういう言葉は、おそらくそれを表してはいない。
常識というものは、何かがおかしい。
言葉なんていうものは、本当は何も教えてはくれない。
……おそらくだから、ききやま様はゆめにっきという作品を作った。
「哲学」という言葉は何も表してなどいないから、その代わりにききやま様は、「たんすの中の窓付き」というものを描いた。
……それを再び言葉に落とし込んでしまう事は、凄くナンセンスな事なのかもしれない。
しかし、筆者は言語で物事を考えているタイプの人間なので、世界を言葉という形に落とし込まないとそれを理解出来ない。
だから、それでもあえて言うと
このシーンには「哲学」という概念が描かれている。
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ゆめにっきという作品には、哲学というものが、描かれている。
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ききやま様が描いた、「哲学というものがある場所」という概念。
哲学とは何か?
人間の習性。
人間の意地。
そして、人間の青春。
……たぶんそんな感じのものが、哲学という概念なのだと思う。
少なくとも筆者は、ゆめにっきという作品に触れて、そういう事を感じたと思います。
後編に続く。