東京ステイケーション / フォーシーズンズ東京大手町
午前の柔らかな光が、
静かに部屋に広がる。
フォーシーズンズホテル東京大手町で迎える朝。
ゆっくりと朝食をとった後は部屋に戻り、
コーヒーを淹れて一息つく。
窓から見える景色は、
少し霞んだ空の下で、
ゆっくりと動き出しているようだった。
眼下には、
緑の湖のように広がる皇居の木々が、
秋の気配をほんのりと纏っている。
その緑を見つめていると、
重なる枝葉が揺れ、風が、
その隙間をすり抜ける様子まで見える気がした。
慌ただしい日々の中では、
気づくことが出来なかった、
そんな些細な動きに目が向く、
その事に嬉しくなる。
道路を行き交う車や、
遠くに小さく見える人々の姿は、
窓の外に広がる舞台のように感じられた。
ゆったりとした空間と、静寂の中で、
少しずつコーヒーを口に運びながら、
そんな風景を眺めていると、
心の奥に溜まった疲れが、
ふっと消えていくような気がした。
こうした時間を過ごすのは、
ただ豪華な空間に浸るためではなく、
日常から少し距離を置いて、
自分自身を見つめ直すためなのだろうと思う。
窓の向こうに広がる木々の緑と、
ビルの谷間に、
隠れるようにして見える皇居の堀が、
静かに佇んでいる。
その光景に目を向けると、
喧騒の中に立っていた自分が、
どこか遠くにいるように感じられるから不思議だ。
この場所で過ごすひとときが、
いつもの生活と地続きでありながら、
非日常へと連れて行ってくれる。
流れゆく景色の変化や、空の色合いを、
ただ眺めているだけで、
満ち足りた気持ちになれる。
予定を詰め込まない、
この自由な時間が、
私にとっての贅沢だ。
ふと、視線を時計にうつすと、
チェックアウトの時刻が近づいていることに気づく。
名残惜しさを感じながらも、
心の奥にある充実感が、
それを少し和らげてくれる。
短い滞在であっても、
非日常を味わったことで、
また日常に戻っていく自分を、
どこか落ち着いた気持ちで迎えられる。
そんな瞬間を、
ここでは感じる事ができる。
私は一つ息を整え、
コーヒーをテーブルに戻すと、
パッキングを始めるために窓に背を向けた。