『私の黒歴史』~中二男子のファッションセンス~子どもたちに贈るやさしいエッセイ 代表 岡本ようすけ
大人ならだれでも持っているもの。
それは中学時代の黒歴史!
思い返すと恥ずかしい、けれど、みんなが笑ってくれたらいい思い出になる?!かもしれませんね。
リテラの先生が、子どもたちに贈るやさしいエッセイ。
ぜひ、ご覧ください。
リテラ「考える」国語の教室 岡本ようすけ
私の黒歴史は、中学二年生の時に起こった。
当時、私は、西部劇のような古いアメリカの雰囲気にハマっていた。
また、少しずつファッションに興味が出てくる年頃でもあった。
もうおわかりのことと思うが、そんな中二男子にファッションを任せるとろくなことにならない。
雑貨屋で私が目をつけたのは、サスペンダーだった。
茶色い革製で、丸い金属の輪がついていた。
今思い返しても、どんな服装に合わせればよいのかわからないが、当時の私は、それ単体でカッコイイと思ってしまったのだ。
そして、それを着て学校に行った。
上にブレザーを着ていたからぱっと見はわからないのだが、そのことにもドキドキしていたように思う。
軽い変態である。
その日は、誰にも気づかれずに授業が終わった。
放課後は、委員会があった。
委員会と言っても特にすることもなく、友達と格闘技の真似事をして遊んでいた。
ブレザーは着たままだった。
すると、そこに、当時ちょっと気になる女の子がやってきた。
中二の私は、それをチャンスだと思った。
思ってしまった。
心からよせばいいのに、「あちい~」なんて言いながら、颯爽とブレザーを脱いだのだ。
そこから先のことはよく覚えていない。
多分友達は、ブレザーの下からあらわれたごつい革のサスペンダーを見て、ネタだと思って爆笑していた。
女の子は、無表情だったように思う。
かっこよくて見とれていたのか、呆れてものも言えなかったのか、もちろん後者だろう。
サスペンダーは、それからつけることはなかった。
今どこにあるのかもわからない。
実家のタンスを探せばあるのかもしれないが、探すつもりもない。
黒歴史といっしょに、ずっとタンスの中にあればいいのにと思う。
この記事を書いた人
【プロフィール】
2012年より、北千住で、幼稚園生から社会人までを対象とした文章技術や国語・作文の教室を運営。
心理学・教育学の知見をベースに、「読む・書く・考える・対話する」という言葉の領域にアプローチする教育メソッドを日々模索・実践している。
幼少期より読むことや書くことが好きで、日本大学芸術学部在学中に第1回江古田文学賞を受賞。
卒業後、都内の有名作文教室に入社し、運営に携わるも、「〇〇式」といった狭いノウハウに押し込める教育に疑問を持ち、独立。
言葉が、世界の捉え方や考え方、人生の物語を形づくるという視点から、既存の教育メソッドを越えた、より普遍的な教育モデルの構築を目指すと同時に、一人ひとりの個性や価値観を育む、対話による指導を行っている。
生徒それぞれが、それぞれの人生の物語を歩める人になってほしいと願っている。