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【超絶】殺人者のパラドックス【怪作】

 Netflixで配信が始まった『殺人者のパラドックス』鑑賞終了しました。これまでNetflixでマスクガール、ペントハウス、グローリーなど日本人はここまで表現しないな…というキツイ韓流作品を相当数視聴してきたのですが、本作はその中でも際立って記憶に残る作品になりましたので、記録に残そうと思いました。

個人的な評価

ストーリー S+
構成    A
俳優    S+
脚本    B 
音楽    B

S→人生に深く刻まれる満足
A→大変によかった
B→よかった
C→個人的にイマイチ

冒頭のあらすじ(ネタバレなし)

 内容的には、いじめられっ子な人生を送ってきた平凡な大学生イ・タンが、コンビニのバイト中に二人組の客のうちの一人に絡まれ、そのときはもう一人が宥めて事なきを得たものの、絡んできた客がバイトあがり後に道路に倒れているのを見かけたので、宥めた方に声を掛けて連れの状態を伝えたところ、急に殴られてボコボコにされ、反射的にハンマーで殴り殺してしまうところから始まる話です。
 
 タンは温厚な青年で、これまでひどいいじめに遭ってきましたが、けしてやり返すタイプではありませんでした。
 しかし今回だけはなぜか躊躇なく反撃し、その結果人を殺してしまい、彼自身自分がなぜそのような行動に出たのか分からず困憊します。

 イ・タンのもとに刑事チャン・ナンガムが取り調べに来ますが、タンは逮捕されません。なぜなら、二人組が口論の後喧嘩になり、お互いに殴り合って相討ちになったと結論が下されたからです。
 実際殺したのはタンなのですが、その前に二人組は殴り合いをしていた事実があり、タンがハンマーで殴り殺した場所にはちょうど監視カメラもなく、証拠は何も残っていませんでした。

 そして、事件後の死体のDNA鑑定の結果、タンがハンマーで殴り殺した人は、実は逃亡中の連続殺人犯が別人に成りすましていたことが判明します。

 こういった感じで、イ・タンは反射的あるいは衝動的に殺人を犯していきますが、すべて殺されても仕方ないと言い得る悪人で、しかも運よく雨が降って証拠が消えたり、犬が証拠を舐めて消してしまったり、殺された人に恨みを持つ人が自分が犯人だと名乗り出たりと、偶然と呼ぶしかない不確定要素により逮捕されないという状況が続きます。

 チャン刑事は、それでもタンが怪しいと睨んでずっと追い続けます。
 その一方で、タンの状況を看破し、天が与えた特別な才能であり、為すべき使命と感じて、悪人を始末する手伝いをしたいと接触する人間も現れます。
 イ・タンは一体どのような結末を迎えるのでしょうか。

本作の見所(論点)

偶然の事象(運命)に対して論理で対抗しても太刀打ちできない
→偶然があまりに続きすぎると、それを神の意思と捉えるのは正しいか間違っているか。

殺されても仕方ない悪行を犯した人間は私刑で殺しても良いのか
正義とは何か。悪人には悪人になるだけの原因や理由があり、反省改心させるよう努める必要はないのか。

恐怖の絶頂の中で反省文を書かせ、泣いて詫びを入れれば許してやると言って、結局殺すことについての賛否
→確かに悪人を粛正することは見方によっては正義かもしれないが、自分が相手以上の悪人になっているのはどうなのか?という点

感想

 作中でも触れられますが、内容的に明らかにドストエフスキーの罪と罰の影響を受け、その着想から制作された作品なのだなと感じました。
 自分では正しいことをやってると思ってるし、正義を公言している。
 しかし、そのはずが悪夢を見る、といった矛盾。誰よりも理想と信念に燃える善人だったはずが、気が付くと自分の感情や利益を最優先する悪党に成り下がっているという危うさ。 
 家族を幸せにするために一生懸命仕事に励んだら、家庭が疎かになって妻子に愛想を尽かされて離婚という本末転倒。

 本作は極論に真理はなく、万人が納得する正義もなく、知識・学問・ 欲望・技術・道徳・法律などの作為にこだわらない無為自然が正しいことではないか?と考えさせられる作品でした。
 昔からよく言われることですが、『醜く生きるか、美しく死ぬか』という命と魂のどちらを重視するかのお話に通ずるものを感じました。

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